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第234話◇

 何だかやたらきらびやかなホテルに入って、ロビーのソファに座らされた。 「ちょっと待ってて」 「うん」  玲央がフロントで手続きしてくれてる間、なんだか慣れない場所に、辺りを見回してしまう。  めちゃくちゃ豪華……なんじゃないかなあ。このホテル。 「お待たせ。いこ、優月」  玲央は、こういうとこ、似合うなー……。 「どした?」 「……なんか豪華すぎて、落ち着かない。緊張する」 「緊張?」    素直に言ってしまうと、玲央は、クスクス笑った。 「部屋行けば、2人きりだから」  優しい瞳が緩んで、見つめられる。  かろうじて頷いたけど。  …………玲央と、2人きりって。  それが一番、落ち着かない、というか、ドキドキするんだけど。  玲央と、2人。  ――――……あ、なんか。意識しちゃったら、心臓がバクバクし始めた。  やばい。  ……なんか。すごい、ドキドキ。  これまた豪華な感じのエレベーターに乗って、2人きり。  どんどん高く上がっていくにつれ、心臓が痛い位で。  あれ、オレ、今朝まで普通に玲央と過ごしてたよね。  どうやって、普通にしてたんだっけ……。  ……何か。  ――――……迷わず、玲央が好きって、思ったからなんだろうか。  今日の玲央が、カッコ良すぎた、からなんだろうか。  うー。どうしよう。    心臓、痛いし。  頭ん中までどくどくいってる感じ。  隣に立ってる玲央に、心臓のすごい音、聞こえちゃうんじゃないかと、恥ずかしくなる。  やっとのことでエレベーターが止まった、玲央に手を引かれて一緒に降りると、カードキーで扉を開けて、中に入った。  玲央が鞄を棚の上に置いて、オレのも、隣に置いた。 「――――……優月」  名を呼ばれて、振り返った瞬間、ぎゅ、と抱き締められた。  ……うわ。なんか。 ……っ。  ――――……もう、心臓、爆発しそう。 「優月。ごめん、しばらく――――……こうさせて」 「――――……」  頷いて、玲央の背に、手を回して、しがみつく。  ドッドッと、頭の中にまで鼓動の音が響いてて。  ふ、と。  ――――……玲央の心臓の音も。伝わってきた。 「……玲央、今、ドキドキ、してる?」 「ん。……なんか、してるかも」  なんか。  玲央が、オレとこうしてて、ドキドキしてくれるって。  ……なんか、めちゃくちゃ嬉しくて、ますます――――……。 「つか。優月は……なんか、心臓――――……やばい?」 「……っうん。ヤバい」  ぎゅ、としがみついてしまう。  玲央が、オレの耳元でくす、と笑った。 「――――……優月……」  余計ぎゅー、と抱き寄せられる。 「なんか――――……今日ずっと、こうしたかった」  そんな玲央の言葉に、思わず、笑みが浮かぶ。 「うん……オレも」  1日長くて、色々あったけど。     こーしてると……暖かくて、ほっとする。  ドキドキは、すごすぎるけど。

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