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第235話◇

「おいで、優月」  そう言われて、玲央とソファに座った。  並んで座ったんじゃなくて、背中を玲央の胸に預けて、後ろからすっぽり抱きしめられる感じで。  ドキドキが激しすぎて。  ワイシャツ薄いから、玲央の手が胸に触れてると、もう、心臓の音、全部伝わってる気がして、恥ずかしい。  ぎゅう、と抱き締められて、少しして、玲央がクスっと笑った。 「心臓、ヤバいな、優月」 「――――……うん。ヤバいね……」 「落ち着けよ……心臓、壊れそ」  クスクス笑われて、ん、と頷くけど。  「ほんとかわいーな」とか言われて、さらに抱き締められて、余計、ドキドキしちゃうし。収まる気配が無い。   「フロントで、適当にルームサービス頼んできた。30分位って言ってたから、それまでこうして話そ」 「……うん」 「優月、いっこ、謝る。こっち向いて」  後ろから抱き締めてくれてる玲央を見上げると。 「……キス、ごめん。目の前で、されるとかほんと無いよな。ごめんな。嫌だったよな」  まっすぐ見つめてきて、そう言った玲央をじっと見つめ返す。 「――――……玲央、あのね」 「ん?」 「……蒼くんはそれ言ってちょっと怒ってたから、あんな事してたけど……あれは、不意打ちだったし。仕方ないかなって思うし……ていうか、そんな、嫌でもなかったんだよね、オレ……」 「――――……」  玲央がちょっと黙ってしまったので、あ、と焦る。 「違うよ、 あの……最初からそういう事してるって分かってたからとか、オレがよく言ってた、そういう事じゃなくて……」 「――――……」 「……奏人くんが、キスしたかった気持ちの方が分かっちゃって……なんか、オレが怒るとか、違う気が……」  ……うん。それはなんか、違う気がする……。 「……ほんとに、オレ怒ってなんか無いし、だから、謝ってくれなくてもいいんだけど――――…… でも、玲央が、気にしてくれてるのは、ちょっと嬉しいから…… もう、それでいいよ」 「――――……」  玲央がちょっと複雑そうな顔でじっとオレを見つめて、そっと顔に触れた。 「……なんか奏人と話してたよな。何か言われた?」  ぷに、と頬を摘ままれる。優しい触れ方に、すごく、ぽかぽかする。 「……玲央のことが好きっていうのは、すごく分かった……かな」 「そんな話した?」 「んー……うん。話してて、そう思った、すごく」 「その前オレと話してた時は、また今度話そうって感じだったんだよ。また話していくしかないなと思ってたんだけど……」 「――――……」 「優月と話した後、オレんとこ来た時は――――……優月と別れたら、連絡してって、最後それだけ言った」 「――――……そっか」  ――――……うーん。 なんか、強いなあ……。  それだけ好きなんだろうけど。  恨み言とかも、なくて。  ……伝える言葉、それだけって。すごいなあ。  ……カッコイイ。 「……何言ったら、奏人、変わったんだ?」 「――――……なんだろ。……玲央の事好きな気持ちと、諦められないって気持ちは分かる……とは言ったけど…… ほんとに玲央の事が好きなのかは、聞かれたけど……」 「――――……」 「好きって、答えたよ。けど……どんな気持ちかは、分かんない」 「……そうだよな」  2人で何となく、言葉が出なくて、黙る。  何となく、ぽふ、と背中を玲央に預けて、腕の中に、埋まってみた。  す、と玲央の手がオレの手に触れて。  何か、ものすごく優しく、手を絡め取られる。 「……くすぐったい」  暖かくて、ふ、と、笑んでしまう。   「……なんか。普通なら要らない想い、させてごめんな」 「……いいよ、全然」  玲央と居れるなら。  ……全然良いって想ってしまう。  

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