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第236話◇

「……あのさ、玲央」 「ん?」 「――――……オレと会う前にね、玲央が色んな人と会ってたの……」 「ん」 「……玲央の自由だと思うし。騙して、何股もしてるとかだとちょっと嫌だけど。そうじゃないし」 「――――……」 「……そもそも、オレ自身、少しでも一緒に居たいって……セフレにしてって言ったし。その気持ちは、分かっちゃってるから」  なんか、一生懸命、言ったっけ、と思うと。  少し、笑ってしまう。 「……言ってたよな、セフレにしてって」  玲央も、くす、と笑って。それから。 「……それ言われて、は?て思った」 「――――……」 「……恋人とか抵抗あるくせに、お前がセフレがいいって言うと、ムカついて……」 「――――……」 「……何でムカつくんだかも、最初はよく分かんなかったけど」 「……最後までしてもないのに、セフレとか言うなって、玲央が思ってるんだと思ったよ、最初は」  ふふ、と笑うと。少し笑った玲央が、また絡めた指を撫でてくる。   「……あのね、玲央」 「ん?」 「……オレ、タイプじゃないって、玲央が言ったの……ちょっと、気になってるけど……」  そう言ったら、玲央が後ろからオレの顔を覗いて。  苦笑いを浮かべた。 「――――……それさ。後からオレも考えてたけど。セフレに選んでたタイプじゃなかったって話だから。……優月の顔は、好きだよ」 「――――……」 「すげえ可愛いって思ってるし。エロい顔、させたくなるし」 「…………っ」  すり、と頬を撫でられて、頬にちゅ、とキスされる。 「ごめん、タイプじゃないって言ったの、忘れて。オレ、そもそもそんなにタイプとかは、無いんだと思うから」 「――――……」 「……タイプとかじゃなくて、今は優月が好きだから」  むぎゅ、と抱き締められる。  あ、そういうこと……なんだ。  セフレタイプ じゃない、っていう……。  あの時の玲央は、「寝てみない?」とか言ってたし。オレもそれに乗っちゃったし。言ってることは、分かる気がする。 「タイプ、無いの? 玲央」 「んー……今浮かべようとしても、優月が浮かぶから」 「オレが浮かぶの?」 「素直なとことか。笑顔可愛いとか。そういうのが浮かぶから」 「…………」  ……玲央って。  恥ずかしくないのかなあ、そういうの、真顔で言うの。  こっちが、恥ずかしいんだけど。  その瞬間。  ふと思い浮かんだことに、ふふ、と笑ってしまった。 「何、笑ってんの?」 「……オレのタイプね」 「ん?」 「――――……優しくて可愛い子、だったの。細くてちっちゃめの子が好きで」 「……ああ、優月のタイプっぽいな」 「……玲央、全然違うね」  言ってしまってから、くすくす笑ってしまう。  玲央もクッと笑い出して。 「全然違うな」  笑ってるのが伝わってくる。  触れ合ってる、体から。  なんか、すごく幸せで。 「違うけど――――…… 玲央が、好き、なんだよね、オレ」  ふふ、と笑う。 「だから、タイプって関係ないってことにしよ?」  オレがそう言うと、少し黙ってた玲央が。 「ていうか、それさ」 「ん?」 「オレの方が、お前のタイプとものすごく、かけ離れてねえ?」  玲央の言葉に、可笑しくなってしまって。 「うん。……相当、かけ離れてるね」  クスクス笑ってしまうけど。 「――――……」  でも、玲央のことが、ほんとに、大好き。  少し背中を起こして、くる、と玲央を振り返る。 「ん?」  ふ、と玲央の綺麗な瞳が、優しく緩む。 「――――……」  玲央のこと、全部好きだけど。  ――――……いつも、オレに、触れてくれる、優しい手と。  見つめてくれる、瞳が。  すごい、好きすぎて。困る位。  胸の奥が、きゅ、と縮む気がする。  少し、背を伸ばして。  玲央の唇に、ちゅ、とキスした。  

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