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第237話◇
軽くキスして、離れようとしたら。
ぎゅ、と抱き寄せられた。
「つーか……我慢してんだけど、オレ」
「……?」
「……ルームサービス来るし。……色々話した方がいいと思うし。キスすんの、我慢してるんだけど」
玲央がそんな事言って、むーと口を少しとがらせる。
あ、なんか。また可愛い。
胸の奥が、きゅん、とする。
「ごめん、玲央。なんか、したくなっちゃって……」
「謝れなんて言ってないけど。人がすげえ我慢してんのになー?」
くす、と笑った玲央に、顎を掴まれて、上向かされる。
「…あ。これも、話さねえと」
「……うん??」
「……蒼さんが、キスしたのかと思った時さ」
玲央の言葉に、はっと思い出す。
そうだそれそれ。
ほんとに、蒼くんてば。もう。
「あ、うん。 あれ、ほんとにごめんね。びっくり、したよね。蒼くんの手で口塞がれてたから、全然触ってないからね?――――……あれってほんと、オレも不意打ちのキス、防げないってことだし……ほんと、なんか色々ごめんね?」
一生懸命喋っていると、玲央は黙って聞いてくれていたけど、オレが話し終えると同時に、クスクス笑い出した。
「だから、優月が謝る事じゃないし。 オレがキスなんかされたから、蒼さん、あれやったんだろ。 謝んなくていいよ」
「……でも」
言いかけたオレの唇に、玲央が触れる。
「そうじゃなくて。一瞬、キスされたと思った時さ」
「……うん」
そこまで言って、なんて言うんだろうと、ドキドキしながら待っていると。
玲央は、んーーーーー、としばらく考えた後。
「――――……ただもう。すげえ、嫌だった」
まっすぐに、そんな風に言われた。
「優月がオレ以外にキスされるの――――……嫌すぎて」
「うん、ごめ」
言いかけた唇に、玲央が、キスしてきた。
重なった唇が離れずに、少し深く重なって。
後頭部に回ってきた玲央の手で、上向かされて、舌が入ってくる。
「っ……ん……ふっ」
ああ、なんか。
玲央のキス……。
「――――……ん……」
――――……気持ち、いいな……。
瞳が閉じられてて、その様をうっすら見つめる。
……カッコイイ、な。玲央。
……閉じてる睫毛とか。瞼とかだけでも。永遠に見てられそう。
思った瞬間。
更に深くキスされて、すぐに、ぎゅ、と瞳を閉じてしまう。
っだめだった。見てられなかった。
「……っんん……んっ……」
玲央の上に座ってたのに、いつのまにやらソファに倒れてて、玲央が上に居る。覆いかぶさるみたいにキスされて。しばらくして、ふ、と少し離れた。
「……セフレとか……想像すると、嫌だよな?」
至近距離で見つめられて、そんな風に言われると。
それは頷くしかないけど。
「――――……そりゃ……想像するのは、やだけど……」
「……ごめんな」
「でも、それ、会う前だし……」
「それでも、やっぱりごめん」
「――――……うん。分かった、よ」
ふ、と笑んでしまう。
「……これから、さ。 一緒に居られる限りは…… 2人で、キス、してようね?」
まっすぐ玲央を見つめて言うと。
玲央は、ちょっと考えて、ふ、と笑んだ。
「居られる限りって、微妙な気がするけど――――……」
「そう? ……居られる限り、ずっと、だよ?」
「……じゃあもう、ずっとだけど?」
「――――……うん。そうなら、嬉しいな」
言うと、玲央は、オレを見下ろしたまま、すごく嬉しそうに笑って。
ちゅ、とキスしてくる。
「……今、話したいこと、他にあるか?」
少し離された唇の間で、そう言われて。
すぐに、小さく首を振ったら。
「ルームサービス来るまで、キスしてようぜ」
「……あと何分位?」
「さあ。わかんねーけど」
「……うん。しよ」
答えると。
優しく緩んだ瞳が、すぐに伏せて。
唇が、優しく、触れてきた。
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