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第238話◇

【side*玲央】  唇を重ねさせて、ゆっくりと、離す。  顎に触れて、下唇に、指をかける。 「口、開けて、優月」 「――――……ん」  素直に開く。  可愛い。  …………としか、思えない。    先週まで、知らなかった相手。  オレの事を変わりすぎておかしいと、皆が口をそろえて言うのも、まあ……分かる。  自分でだって、こんなに、穏やかで、なのに、激しい感情。  ……知らなかったし。  ずっと自分の側に居てほしいなんて、思う事があるなんて、謎すぎるし。 「優月――――……」  開いた唇に、深くキスする。ゆっくり舌を絡めて、そのまま挿し入れる。 「……んっ」  ぴく、と震えて、声が漏れる。  1週間で、キス、うまくなったな。優月。  最初した時は、息できなくて、酸素不足で大変そうだったけど。  少しは。  途中で頑張って、吸えるようになった気がする。 「……ん、ふっ」  と思ったけど。やっぱり、ちょっと、苦しそう。  すぐ頬が赤くなって。涙目になって。息が上がる。  ――――……可愛すぎ……。 「ン、んっ……っぅ」  ――――……もう、可愛いとしか思えないんだから。  何でこうなってるとか考えても意味が無い。どうして優月なのかとか、考えるまでもない。    少しだけ離して「優月?」と呼ぶ。ふ、と瞳が開いて、見つめられる。  息をさせてから、また重ねると、またぎゅ、とつむった。  睫毛、濡れてる。  ――――……今日、何かいっぱい泣いてたな……。  ふと色々思い出して、ぎゅ、と抱き寄せる。 「ん、ふ……っぁ」  シャツの上からゆっくり体に触れる。  ぴく、と小さい震えが走る。 「……っ……玲央」 「ん?」 「……キスだけ、って」 「――――……無理みてぇ」  胸を擦った手で、シャツの上から突起に触れて、掠める。  びくん!と大きく震える優月。 「はは。……可愛すぎ」 「や、だ、玲央」 「何が嫌?」 「……っだって、人が」 「来るけど、ドアんとこでオレが受け取るから、大丈夫」 「……っでも……」 「無理、触らせて」 「……っ……」    恥ずかしいのか、涙目が、更に潤む。  あー可愛い……。  左目の下にある、小さなほくろ。  ――――……ほんとこれ、なんか、エロい。  涙ごと、ほくろに舌を這わすと、優月が震える。 「な、に?」 「ここにあるほくろ……」 「あ、うん……?」 「なんか、エロい……」 「……っ………何言って……っ」  ますます赤くなって、オレから退こうとする。 「逃げんなよ」  言って、背中に置いた手で、引き寄せる。 「……っれお、恥ずかしいってば」  ――――……慣れねーなぁ。いつまでも。  クスクス笑みが零れてしまう。  まあ。慣れないか。  まだ、1週間だった。  …………優月のファーストキス、勝手に奪ってから。  なんか。  毎日感情の動きが激しすぎて。  こんなに考えたのが初めてという程、自分の気持ちと向き合う日々で。  ――――……なんか濃すぎな1週間だった。  優月はこういう事するのが全部初めてだっただろうけど。  オレの方だって、こんなに、この類の気持ちを深く考えるとか。  初めてで。  正直、初体験すませた時だって、何も考えた記憶のないオレとしては。  こっちの初めての方が、よっぽど、重い。  ……けどまあ、今はそんな事考えるより。  可愛い優月をエロくしたい。  優月の顎を捕らえて、キスする。 「ん、んっ」  抵抗、しようか迷ってるのか。  少し、眉を寄せて、優月がオレを見つめてくるけど。  舌を絡めた瞬間。 「……っン」    ゆっくりと瞳が伏せて。  オレの腕に触れてた手が、服を握る。  ――――……可愛い。優月。  優月のシャツのボタンを上から1つずつ外して。思う存分、触れようと、した瞬間。  来客を告げる音が鳴り響いて。 「あ…………っれお、来たよっ、来たっ」  せっかく開いたシャツを、咄嗟に閉じながら、優月が、ぱっと後ろに退いていく。  思わず、はー、と深くため息。 「……食べたら、覚悟、しろよ」   思わず言った言葉に、優月は真っ赤になった。何も返せない、らしい。  再度、ため息をつきつき、オレはドアに向かった。

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