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第241話◇
「――――……玲央たちは、プロになるか、まだ分かんないって言ってたよね?」
「ん。あいつらも他にやりたい事色々あるだろうし。家の事とかも関わってくるし。……まあ、音楽は続けていきたい気はするけど――――……」
「そっか……」
頷いて、そのまま黙ってる優月に、ふと聞いてみたくなる。
「優月は? ……プロになって欲しい?」
「オレ? ……オレ、は……玲央が歌ってるの、めちゃくちゃカッコいいと思うから、歌ってては欲しいけど――――…… プロかどうかとかは、別に関係ないかなぁ……」
そんな言葉を聞いてたら、ふ、と笑ってしまった。
「ん?」
「いや……めちゃくちゃカッコいいとか、普通に言うから」
そんな風に言って見つめると、また赤くなる。
可愛いなー、優月。
優月って、気づかず、そういう事、平気で言っといて、オレがそれを指摘するとすぐ赤くなるし。
優月は、手で頬に触れて、冷やしながら、ふう、と息を吐いた。
「……玲央絡むと、すぐ顔熱くなるし、今日なんかさ、何回も泣いちゃったし。なんか……変なんだよね、オレ」
「オレが絡まないと、なんねーの?」
「……なんないはず。……玲央と会うまで、こんなこと無かったし」
ふ、と優月が息を付いてる。
「オレ絡みだけでそーなるなら、オレは嬉しいけど」
「…………嬉しいの?」
「ん」
優月は、不思議そうな顔をしてる。
「……逆に他の奴に赤くなったり、泣いてたりしたら、オレ絶対ぇ妬くから、無理」
「――――……やく?」
普通に、そう思うから言ったんだけれど。
優月は首を傾げてる。
「妬く、の?」
「妬くだろ」
「……玲央が、ヤキモチ、妬くの?」
「――――……」
何度も聞かれるので、何となく無言で頷くと。
優月が、ふふ、と、めちゃくちゃ嬉しそうに笑って。
そうなんだ、と呟く。
「なに?」
「玲央にヤキモチ妬いてもらえるとか。……貴重過ぎる気がして」
クスクス笑ってる優月。
――――……なんか。ほんと、優月、可愛い。
……早く触りたいけど――――……。
「優月、もう食べ終わる?」
「あ、うん。あと少し」
「ん」
とりあえずもう少し待つことにする。
先に食べ終わったオレは、水を飲んでから。
ふと、気になって、優月を見つめて聞いてみた。
「……優月はさ。妬かねえの?」
「――――……」
妬かれるの嫌がってたくせに、何聞いてんだか。
……妬いてほしいとかの感情が、まだ自分でも意味が分かんねえし。
……聞いてはみたいけれど。 でも、優月は、妬かないか。
そういう感情、強くなさそうだし。
じゃなかったら、奏人のキスだって、怒るだろうし。
…………なんか本気で、大丈夫って、言ってそうで。
……それはそれで、何だか複雑。
怒ってた蒼さんの気持ちの方がよっぽど分かるし。
優月が、全体的に、こんな感じのポワポワした奴だから――――……
オレは、優月が可愛くて、好きだと思ったっていう部分も、あるのかもしれないけど。
謝りはしたけど、全然いいよと本気っぽく言われると、
……やっぱり、ちょっと、複雑。
…………嫉妬されるのめんどいっていったり。
優月には妬かれたいって思ったり。
……まあ。そこらへんが今までと違う理由は、自分では、分かってるけど。
他の奴の嫉妬は、面倒だけど、
…………優月には、妬いてほしいんだよな、オレ。
少し位。 他の奴とのこと、嫌だって思って欲しいというか。
………今までのオレが、それを嫌がってたのを知ってる優月に、そんな、訳の分かんねえことは、言えないけど。
はー。
マジで。
…………優月の、「全然いいよ」というこの感じが可愛くて好きでもありつつ。
…………かなり複雑という。
「オレ、妬くって……今まで、あんまりよく分かんないで来たんだけど」
「――――……?」
「……最近、ちょっと、考えるとモヤモヤする事はある、かなあ……妬くっていうのかよく分かんないけど」
モヤモヤ?
目の前で、んー、と考えてる優月の、のほほんとした顔を見てると。
――――……まあ、今までぶつけられた嫉妬とはかけ離れてそうで。
……可愛くて、ちょっと笑ってしまいながら、続く言葉を待ってみる。
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