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第242話◇
少し間を置いて、優月が言ったのは。
「――――……オレにするみたいに、頭撫でたり、優しく笑ったり、するのかなーと思うと……すごくモヤモヤする、かも」
これだった。
「――――…………」
…………そっち?
キスとかエロい事に対して、じゃなくて?
頭撫でたり? 笑ったり?
そっちの方に、妬くのか。
「――――……」
「……何か笑った? 玲央」
優月が、不思議そうな顔をして、オレを見つめてくる。
「つか、撫でるとかはさ……」
「ん?」
「……優月にだけしかしてないって、オレ言わなかったっけ」
「――――……」
まっすぐ見つめ返してそう言うと、返答が出てこないらしく、
「普通、嫌なのって、キスとかそっちの事じゃねえの?」
「……もちろん、それも……オレにしてくれるみたいに、すっごい優しくしてる玲央を想像したら、嫌だけど……」
「――――……」
すっごい優しくしてる玲央。
…………多分これも、「すっごい優しく」の方がメインなんだろうなー……。
「……優月さ」
「うん?」
「オレが他の奴に、優しくするのが、やなの?」
「――――……優しく、触ったり、するのが、嫌かも……」
「優月にするみたいに?」
「うん……って、でもごめん、他の人に冷たくしてって言ってる訳じゃないよ? そうじゃないんだけど……」
何だかよく分からないことを言い出して、焦り始めた優月。
……何かすげー可愛いし。
「ていうか、今更他の人に優しくとか冷たくとか、どっちも、無いけど」
「あ、うん、そっか――――……あの、玲央……」
何か言いたげなのが可愛い。
立ち上がって、優月の側に立って。
なんか焦ってる優月の頬に触れる。
「――――……?」
すり、と頬をなぜる。
ぴく、と震える。
「……こんな風に触るの、お前にしかやらない」
「――――……」
その唇にキスすると、パチパチ瞬きをして。
少し考えてた優月が、ふわ、と笑った。
「……それは――――……すごい嬉しいみたい、オレ」
まっすぐオレを見上げて、嬉しそうに笑う優月に、ちゅ、とキスして、くしゃくしゃと頭を撫でてしまう。
「優月、もう、食事終わった?」
「あ、うん。ごちそうさまでした。すっごい美味しかった」
にっこり笑う優月に、ん、と笑顔で返す。
「優月、すぐ持っていって貰うから。食器をこのワゴンに乗せてってくれる?」
「うん」
優月は立ち上がると、食べ終わった食器をさっき運ばれてきたワゴンにのせていく。それを横目に、オレは、部屋の電話からフロントに電話をかけて、すぐに取りに来てもらうように頼んで、優月の所に戻って手伝う。
「――――……これを持って行って貰ったら、もう、2人きりだから」
食器を片付けてた優月の手が一瞬ぴた、と止まって。
あ、うん。と、小さく頷いた。
急に緊張したのか、ちょっと固まってるのが可愛いのだけれど。
それと同時に。
……今更、こっちまで緊張してきそうな。
――――……ものすごく、珍しい気分に襲われた。
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