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第259話◇

「おいしー、ナポリタン」 「そうだな」  ほくほく顔の優月に頷く。  なんか、さっきの会話。  優月と同じもの頼むってやつ。  こうして食べながら改めて、そう言われればそんな事してたなと思って、何でだろうと考えてたら、分かった気がした。  ――――……いつも美味しそうに食べるから、同じの食べれば、共有できるっつーか。……そんな風に思うからかも。  とは思ったけど、これ以上可愛いとか言われたくないので、黙ったまま。  可愛い顔して食べてる優月に、こっちも笑みながら。 「蒼さんの個展ってさ」 「うん?」 「すげえ値段高いの?」 「ううん。そんな事ないよ。ポストカードとかも売ってるし、複製物みたいなのは数千円とかからあるし、普通に壁にかかってるのは、10万位からで、絵とかは結構するのもあるけど……」 「そうなんだな……あんま絵とか写真とかの相場、よく分かんねえけど」  オレがそう言うと、優月も、オレも値段が高いとかの基準はよく分かんないけどね、と笑う。 「蒼くん、他にも色んな仕事してるし、そもそもご実家がお金持ちっていうのもあるし、そこまでお金儲けしようとしてないって気がする。絵とか写真、欲しいと思ってくれる人の手元に行って欲しいみたいだよ」 「……ふーん」  つーか。あの人って。  ……カッコよくないとこ、どこ。  と思いはしたけど、なんかムカつくから、優月には聞きたくない。 「――――……オレ、顔出したら嫌かな? ここについてきてるとか言わない方がいいか?」 「え、どうして? ていうか、オレ、今、玲央とご飯食べて来まーすって、蒼くんに言ってきたから玲央が居るの知ってるよ?」 「あ、言ったのか」 「え。まずかった?」  ……なんか優月に常にひっついてるみたいに思われてもなーと思ったんだけど。もうバレてるならいいか。 「別にまずくないよ。……食べてきますって言って、何も言われなかった?」 「…………」 「――――……?」  優月がぐ、と言葉に詰まって赤くなる。 「何か言われた?」 「……っ……ご飯だけにしてこいよって。変な事して遅刻したら、給料減らすぞって」  優月がちょっと膨れて、ぼそぼそ言ってる。  ……まあ、さっき連れ込みたいとか考えてた身としては、あながち、しねーよ、とも言い切れないけれど。  ……ていうか。 「言われてまた赤くなった?」 「……っだって、普通に戻り時間とか話してたのに、急にこそこそそれ言うんだもん。ひどいんだよ、もう」  ――――……なったんだな。  ……優月が赤くなるの、ほとんどオレ絡みってのは分かってて、それがとても可愛いとは思っているんだけれど。  ……オレが居ない所で、他の奴に、真っ赤になってる優月を見せるのは、なんかムカつくんだよな。   「玲央、蒼くんの個展、見に行く?」 「……このまま一緒に行こうかな。良いと思うか?」 「うん。来ちゃダメなんて、絶対蒼くん言わないから。写真すっごく綺麗だし、絵も素敵だから。玲央に見てほしい」  優月が何だか嬉しそうに笑いながら、そう言う。  ――――……昨日蒼さんと話して、一緒に居る優月も見て。  優月が蒼くん蒼くん言う理由も分かる、と、思ってしまったのだけれど。  蒼さんの話してる時に、そんな風に笑われるのは。  なんか、胸がざわざわするような。気のせいか?

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