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第273話◇
心配そうに見上げてくるの。
……超可愛いんだけど。
「――――……」
肩に手を置いて、そのまま引き寄せて、抱き締める。
「玲央? 平気?」
「頭痛くない。大丈夫だよ」
そう言うと、ほっとしたように笑う気配。
なんだか今考えてた事を敢えて優月に言って、めんどくさい事言われてるんだと、気づかれてしまうのも嫌だしな。――――……て事で、わざわざ言いたくない。
これは自省して、これ以上優月に負担かけないようにしねえと。
ごめんな、オレ、少し気を付けるからな。
心の中でそう思いながら、優月を抱き締めてると。
「そっか。よかったけど……疲れちゃった?」
「……ん?」
「待っててもらってさ。わざわざこんなとこまで来てもらって」
「疲れてねえよ。全然平気」
「ん……」
優月が、ぽんぽん、とオレの背中に触れながら。
「……玲央、あのね。さっきオレ……ちょっと言った事、違ったかも」
「?」
「……1人で平気って言ったけど。 もちろん平気なんだけど……玲央と居るのはほんとに……好きだから、ずっと、居たいんだよ。だから、迎えに来てくれるとか、待っててくれるとか……すごく嬉しいんだけど」
「――――……」
「……そんなにずっとずっと居たら、飽きちゃわないかなーとか…面倒くさくなっちゃわないかなーとか」
「――――……」
「思っちゃうんだよね。 さっきオレ、玲央が居なくても全然平気みたいな言い方しちゃったけど……そうじゃなくて……」
何なの、お前。
可愛い。んだけど。
ふ、と上向かせて、キスしてしまう。
「ん」
ちょっと焦るのはいつも。
それからすぐ、瞳を伏せるのも。
――――……可愛い。
何度も柔らかく、唇を重ねて。
角度を変えて、浅いキスを繰り返す。
呼吸できなくなるようなキスはしてないのに。
優月の息が、は、と漏れる。吐息が熱くなる。
ああもう、
マジで、可愛い。……可愛いしか出てこない。
そういえば、可愛い以外で、何か言葉探すとか、話したっけ。
――――……今、どうでもいいや。
可愛い優月に何度も口づけて、ぽわん、という顔をしだすのが可愛くて。
腕を引いて立たせて、そのまま腰を抱き寄せて、オレの上に、向かい合わせで座らせる。
少し優月の方が上で、見下ろされる感が。
多分いつも、オレを見下ろすのが恥ずかしいらしくて、
なんだか、その表情がいつも、たまらなく愛しい。
「……玲央……」
吸い寄せられるみたいに、優月とキスして。
抱き締める。
「――――……オレがお前と、ずっと居たいって色々言ってるのさ」
「……うん?」
「……うざくねえ?」
「え」
ぱ、と唇を離して、マジマジとオレを見つめる。
「??――――……何で?」
「――――……」
「玲央のこと、うざいなんて、思った事ないよ。ていうか……思わないよ」
思う訳ないじゃん。
と、どんどん言葉を、つなげていく。
とそこでふと、疑問。
……ていうか、優月って。そもそも。
「……優月って、誰かをウザイとか、思う事あるか?」
「え。――――……そりゃ、怒ったりする事は、あるよ?」
「ウザイ。とかは?」
「……ウザイって、あんまり使わないから――――……でも、玲央は絶対、うざいとかないよ??」
何が聞きたいんだろうと、優月が首を傾げてる。
ああ。なんかほんと。
むぎゅ、と抱き締めてしまう。
なんでこんな癒されるかな。
……どう育ってきたんだか、優月の人生、全部追いかけてみたい……。
なんて思ってしまう。
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