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第275話◇

 詳しい事は分からないけど、高級そう、としか言えない外観と内装。  エントランスから、エレベーターホールも、なんか全部高級ホテルみたい。  豪華だなぁ。……でも、すごく派手って訳じゃなくて。  なんか、丁寧に作られてますって感じの、高級感が半端ない。  エレベーターのボタンとかまで、何だかすごくオシャレでじっと見つめてしまう。  何だかキョロキョロしながら、玲央についていく。  鍵を開けて、中に招き入れられて、広い玄関にちょっと圧倒される。   「なんか」 「ん?」 「キレイなマンション」 「気に入った?」 「んー……キレイすぎて、ちょっと緊張する」  そう言ったら、すぐ慣れるよと言って玲央が笑う。 「お邪魔します」  言いながら靴を脱いで、こっちだよ、と言う玲央についていく。  いくつかのドアを通り過ぎて、奥の部屋までの廊下を歩く。    こんなとこに一人暮らしって。ほんとにすごいなあ。  なんて思いながらリビングに通される。  広い。窓がやたら大きい。  全体の色としては、黒と白がメイン。  床と天井、壁は白。テレビの背面の壁だけ、黒い。  木製の濃い茶色のテーブルに、黒い椅子。  黒のレザーソファに置いてあるクッションが白や青。黒のラグが敷いてあって、間接照明があちこちで淡く光ってる。  落ち着いてて、玲央のイメージそのまんまの部屋。 「……感想は?」  先に入ってた玲央がオレを振り返って、見つめてくる。 「……なんか、玲央、って感じ。カッコいい」  思ってるそのまんま言うと、玲央はふ、と笑った。  ドアの所で部屋を見回してたオレの前に玲央が戻ってくる。 「オレは、お前がここに居るのが、すげえ嬉しい」 「え」  なんかいま、すごく嬉しい事、普通にさらっと言われた。  また、耳まで熱くなってしまう。 「また赤くなる……」  くす、と笑った玲央の手が、オレの背中に回って、抱き寄せられた。  ちゅ、と頬にキスされる。 「あっついなー、顔……」  クスクス玲央が笑って、頬を両手で挟んでくる。  少し冷たい玲央の手。ちょっとだけ、熱い頬が冷えるけど。 「だって……ここに居るのが嬉しいとか……さらっと言うから」  そう言うと、玲央は、ん? とオレを見つめて。 「そういうの恥ずかしい?」 「……照れるよ」 「……そっか。でも、さ。オレ、人をここに入れたくないとか思うような奴だったのにさ」 「――――……」 「初めて連れて来たいって思った相手が、ちゃんとついてきてくれてさ」 「――――……」  それから少し間が空いて、玲央がくす、と笑いながらオレをまっすぐに見つめる。 「実際ここに優月が入っても全然嫌じゃないし、ここに居てくれて嬉しいとか、思えるのが ――――……なんか、今までの自分からすると、不思議でしょうがないんだけど……」  玲央は、言葉を選びながら、ゆっくり、話してくれてる。 「不思議だけど、でも、そういう風に思えるお前が、ここに居てくれるのが、嬉しいンだけど。……意味わかる?」 「……ぅん」  ……分かる。  多分。ちゃんと、分かってると思う。  なんか。  ――――……よく分かんないけど。  胸の奥が。  ちょっと、痛い。 「……優月、すげー好き」  笑みを含んだ優しい声でそう言われて、ぎゅ、と抱き締められる。 「……っ……うー……」  ――――……堪えようと、思ったのに。 「………………っ」  なんでか分かんないけど、堪えきれなくて、涙が溢れ落ちてきた。 「?」  なんか変な気配を察知したらしい玲央が、不思議そうにオレを覗き込んで。  は? と固まって。それからオレの顔を上げさせて、慌ててる。 「え。は??? 優月?」 「………………っ」 「何で泣いて――――……」  ものすごく困った顔して玲央がオレを見てるので。  多分、嫌がってるとか、思ってるんだろうなと思って。  オレは、違う、と首を振った。  手の甲で、溢れた涙をぐい、と拭った。 「――――……なんか……嬉しくて…………」 「――――……」 「……ごめ、んね、ちょっと、待って…………」  まだ涙が零れて来そうで、俯いて、息を押さえようと唇を噛みしめた。  すぐに、玲央の手に上向かされて。 「……優月」  名を呼ばれると同時に、深いキスが重なって、きた。  

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