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第278話◇

「……嬉しくて泣くのは、ありだよな」 「――――……ごめん、オレ……」 「ん……?」 「オレ男なのに……めちゃくちゃ泣いて」 「男とか関係ないだろ――――…… オレには、こういう時なかなか泣けないから、素直なのがすげえ可愛いって思うし」 「――――……」 「優月が泣いてるの、昨日からどんだけ見たか分かんなくなってるけど……」  くす、と笑いながら。玲央はオレを腕の中から起き上がらせた。  それから、ふ、と笑いながら、オレを覗き込んできて。 「全部、めちゃくちゃ可愛かった」  瞳が優しく笑んで、近づいてきた玲央に、頬にキスされる。 「――――……泣き止んだか?」 「……ん。ごめん」  言ったら。  玲央は少し不思議そうにして。それから、唇にちゅ、と口づけてきた。 「つか、ごめんは、いらない」  抱き締められて、撫でられる。 「なんで可愛いって言ってンのに、謝るんだよ??」  そう言った玲央にまたキスされて、頬に触れた指が、優しく首筋を辿って、うなじに触れる。 「――――……」  なんか。  ――――……    泣きすぎちゃった自分がすごい恥ずかしくて、どうしようと思っていたのに。  ――――……こんなに優しく、そこらへんも消し去ってくれて。  抱き締めて、キスしてくれるって。 「――――……」  そっとキスしてる玲央の顔に触れて、少しだけ唇を離す。 「……玲央」  オレが名を呼ぶと、ん?と笑みを作る玲央の瞳。    ああ。もう。  ――――……ほんとに、この世界で、一番大好き。  玲央の頬を、両手で挟んだまま。  引き寄せながら、背伸びをして。  じっと見つめたまま、キスした。  数秒見つめ合ったまま。唇、触れて。  そしたら、玲央が、くす、と笑った。 「……触れる、だけ?」  見つめ合ったまま、唇の間で囁かれて。  かあっと、熱くなったけれど。  ゆっくりと、舌を、玲央の唇の間に、挿し入れた。  舌先が、触れて。躊躇うけど。  すぐ、ゆっくり、絡めてみた。  今、玲央は積極的に動かないでいるから。  キスしてるのはオレの方、なのに。  なんだかすごく、ゾクゾクしてきて。  なのに、なんだか全然足りなくて。  思わず、玲央の背中に、ぎゅう、と抱き付いてしまう。 「……れお」  ふ、と吐いた息が、無性に熱くて。 「――――……オレがする?」  玲央の手が、オレの頬にかかった。  優しい瞳に、ん、と頷くと。 「――――……可愛すぎ、優月……」  玲央の唇が触れて。  深く深く。――――……望んだキスが、重なってきた。

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