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第279話◇

「……ン、っふ……」  熱い。  ほんとに舌の境界がよく分からなくなる。どっちの舌か分かんない。  玲央の舌と混ざって、溶けてしまう気がする。 「……んン、ぅ」  息を吸うために開けた唇を、更に深く、塞がれて。  くらくらする。  いつも玲央が外でするキスは、これに比べたら、全然優しくて。  加減してくれてるんだなぁ、なんて、そんなことぼんやり、思いながら。  舌に応えていると、玲央の指がするすると、オレの肌をなぞりだした。  頬に触れて、顎から上に滑って、耳に触れる。髪の毛を耳にかけるみたいな動きをしながら、耳に触れて、耳の後ろや耳たぶをくすぐる。 「……っ」  なんでそんなとこで、と思う位、急にぞくっとしたものが背筋を走って、舌が外れた。もう片方の手で顎を捕られて上向かされて、軽く押さえられてまたキスされる。 「……ん、ン――――……」  耳の中にくすぐるみたいに触れられて、ぴくん、と震えてしまう。  ますます頭の中に靄がかかっていく。  かくん、膝から力が抜けるけど、いつも通り、玲央が支えてくれてる。  こうしてると、そうなるって、玲央は分かってる、のかな。  ……皆、なるのかな。立ってられなくなるとか。 「――――……ぁ……」  耳をたくさん触ってから、玲央の手が、服の裾から中に入って、腰に直に触れる。手、熱い。――――……それに、ぞく、と震えていると、玲央の手がウエストから胸へと滑った。  不意に舌が解かれて、玲央がふ、と笑いながら。 「――――……すべすべ、優月……」  可愛いなあ……と耳元で囁かれて、ぎゅ、と瞳を伏せる。  さっきまで指で触れられてた耳に、玲央が舌を這わせてきた。 「っ……や……」  手で触れられて、うっすらと感じてたゾクゾクが、舌に舐められて圧倒的に気持ちよい感覚に変わった瞬間、玲央の手が胸を滑って、触れた乳首を引っ掻いた。 「……ひゃ……っ」 「――――……乳首きもちい?」 「……っくすぐったい……」 「くすぐったいの? ――――……気持ちいい、じゃなくて?」  笑いを含んだ声がして、耳の中に舌が入って来た。 「……ん…………や……」  水音が、頭の中に響くのが、こんなに気持ちいいとか。頭クラクラするとか。恥ずかしくて、死にそうになるとか。  玲央にしたらちょっと舐めてるだけなのかもしれないのに。  オレの中で襲ってくる、激しい感覚は。  乳首への刺激と一緒に、もう、強すぎて。    何だかやたら丁寧に、体をほぐされて行くみたいで。  もうだめ。なんか、もう全くどうしていいのか分からない。  どうしよう。 「……っ」  息が熱い。体の中心に、急に熱が集まって。  でもまだキスして、少し、触られて、耳、舐められただけ、なのに。  なんでこんなに気持ちよくなっちゃうんだろう。 「……ふ……っ……んン……っ」  声が。我慢しようとしても、漏れてしまう。  こんなに早く反応してるの、玲央に、知られたくない。  どうしよう、恥ずかしすぎる……。  後ろが壁だから大きくは下がれないけど、少しだけ足を引いて、その部分、玲央に触れないように、離れてみる。  玲央の舌が耳から首筋に沿っておりてきて。肩にかぷ、と優しく噛みつかれた。 「…………ん、ふ……」  だめ、だ。  何されても、もう、気持ち良くて。  なんかもう。 「…………っ」  体が、ふる、と震えだす。  ――――……玲央に抱き付いても、止まらない。  触れられてもいないのに、熱を持った下半身は、全然おさまらないし。  震えてるオレに気付いたみたいで。  玲央が、顔を上げて、オレの顔を見つめる。 「……気持ち良すぎ、て顔してる」    くす、と笑う気配がして。  バレバレすぎて、ますます熱くなる。  玲央がオレをまたひょい、と抱きあげた。 「――――……シャワー浴びよ、優月」 「――――……っ」  ほんとに。ひょいひょいといっつも抱っこされて。  ――――……ほんと恥ずかしい、んだけど。 「――――……」  首に手を回して、ゆっくり、抱き付く。 「はは――――……それ、ほんと可愛いなあ。 もっとさ、ぎゅーーて、くっついてて?」  クスクス笑う玲央が、そんな風に言う。  ――――……大好き、玲央。    オレの全部が、そう言ってて。  それは、言葉に出したら、弱まってしまうような気がして。  口では言わずに、ぎゅ、と、玲央に抱き付いた。

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