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第284話◇

 バスルームで裸になって、固まる。  うわーうわー。  ……キスマークが、なんか……結構ついてる。  そんなつけられた記憶、ないんだけど。  最後の時に、首筋、されたのは覚えてるけど。  ふ。  ……ふともも、とか。  こんなとこに、玲央、口付けて……。  ふとももとかって……ふとももに玲央が居るとかって……。  その光景を頭に浮かべてしまうと、ヤバい位に、赤面してしまう。  なんか、血が上りすぎて、耳鳴り迄してくる。  ……玲央とするのって……。  体も、意味わかんなくなって、大変なんだけど。  …………本当に。  これ、毎回、毎回、すっごく思うんだけど。  一番好きな人に、一番恥ずかしいとこ見せなきゃいけないって……。  ……ダメージが……。  ……でも。  玲央が優しくて、色っぽくて、カッコよくて。  あの独特な時間は、普段一緒に居ても、持てない気がして。  だから、玲央とするのは、好き。  あの時でしか、見れない玲央が居るから。  だけど。  オレのことは見せたくない、というか。   「うー…………」  ほぼ足の付け根、とか。  ここにキスマークって。  ダメだ、もう見ない見ない見ない。  ざーーーーーーーーー。  シャワーを頭からかけ続けて、ため息とともに、止めた。 「優月、もう出る?」  玲央の声がする。 「あ。おかえりなさい」 「ああ。 優月、朝食、皿に出してから来るから、服着てて」 「うん」  玲央の気配が消える。  出なくちゃ。  1人、シャワー浴びながら悶えてたから、遅くなっちゃった。  バスタオルで拭いて、服を着る。  髪の毛をタオルで拭いて、ドライヤーを出しながら。  あ、玲央がやってくれるって言ってたっけ。  電源を入れようとした手を、止める。  何だかすることが無くて、タオルでもう一度髪の毛を拭きながら、鏡を見ていると。 「……」  キスマーク。首の、見える、なあ……。  でも、この位置って、なかなか隠れなそう……。  ……諦めよ……。  あ。  ――――……今日もスーツ着るんだ。上までちゃんと着れば大丈夫かな。 「優月、お待たせ」  玲央が戻ってきて、ドライヤーを手に取った。 「どうかしたか?」 「ううん。あの……これ、見える?」 「これって?」 「……これ」  首筋に触れて、玲央を見上げると。 「ああ。――――……悪い、昨日最後に、つけちゃったんだよな……」 「……スーツ、平気かな?」 「Yシャツ着れば隠れそうだけど――――……その服だと、見えるな」 「……うん、スーツ着てる時じゃなきゃ、いいや」  オレが言うと、玲央は、何か言いたげに、オレを見つめた。 「……恥ずかしいけどね」  くす、と笑って、付け加えると。  あ、やっぱり? と、玲央は笑った。  ドライヤーのスイッチを入れて、オレの髪の毛に優しく触れる。  優しいなあ。  ……触り方。  ――――……玲央って。  ……ほんと。優しい。  一緒に居れて、嬉しいな。 「気持ちい?」 「うん」 「気持ち良さそ」  クスクス笑いながら玲央が言う。  例によって、真正面でかけられてるので、少し上を見ると、玲央の顔が至近距離にある。  へんなの……。  普通、向かい合わせでかけないよね……。  と思いながらも。  めちゃくちゃくっついて、されてるみたいで、幸せなのだけど。 「――――……」  そー、と、ちょっとだけ背伸びして、少し上の位置にある、玲央に、ちゅ、とキスした。 「――――……」  少し驚いた顔をしていた玲央が。  クスクス笑い出して。 「可愛いからやめろよ」  言いながら、ちゅー、とキスしてくる。 「ドライヤー途中になるよ?」 「――――……ん」    ふふ、と笑んで、またドライヤーをかけてくれる玲央の手に、少し俯いた。  もう。大好きすぎて。  朝から、いっぱいいっぱいなんだけど。    ほんとどうしよう、かな……。

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