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第301話◇

 玲央に甘える、か……。    そもそもオレは、男だから、女の子と当然付き合うんだと思ってて  そしたら、優しくしたいと思ってたし。  甘える側、だと思ってないんだよね……。    女の子と付き合って、お互いが、空気みたいにほんわかと、無くてはならないものになって。でもって、結婚とかして。子供が出来たら、その成長を見守って。  強く、絶対こうするんだって思ってた訳じゃないけど、なんとなくでも浮かんでたのは、そんな未来だった気がする。  まあ、見本は、父さん母さん達だと思うけど。  だから、女の子と付き合うなら、オレが優しくしてあげて、甘えさせてあげたかったなーと思う。  玲央は、男の人な訳だし。  見惚れちゃう位、カッコ良い人で。  すごく、モテる人。  ファンもいっぱい居て、玲央の事を大好きな人は世の中にいっぱい居る気がす。  玲央が、「空気みたいなほんわかした存在」になる気は、今の所全然、しない。  「なくてはならない」はすごくあるけど……。  玲央はそこに居れば、ただ立ってるだけで、目立つし、  近づかれてしまえば、息が止まってしまいそうな位、まだまだドキドキしまくりだし。  改めて考えてみると、不思議な位、思ってた感じとは違う。  こんなに違ってていいのかな、と、考えてみる、けど……。  玲央を思い浮かべるだけで、ふと、微笑んでしまう。  今頃何してる頃かなあ。運動中かなあ。  何人か案内をしながら、昨日ここで、一緒に写真や絵を見た玲央を想うと、もう、早く会いたいなって、思ってしまう。  玲央に甘える、かぁ……。    オレって、いつも誰に甘えてるのかな。  ……美咲と智也には、なんか、気持ち的にすごく甘えちゃってる。  蒼くんには、気持ちもだけど、送ってもらうとかどこかに連れてってもらうとか、なんか実際やってもらう事が多い気がする。  だからオレが入れるような手伝いが必要な時とかはなるべく手伝うようにしてて。お返しの気分だから、最初はお金要らないとかそんな話してたのに、仕事じゃないと何時間も拘束できないと蒼くんが譲らなくて。結局こういう受付も、アルバイトって事になってしまったけど。  ……それだって、結果的には。蒼くんの好意に甘えさせてもらってるような気がするし。  甘える……。 あとは家族だなあ。  ていうか正直、蒼くんも智也も美咲も小さい頃から知ってる、なんなら家族みたいなもので。オレが遠慮しないで、甘えられるのは、家族、てことなのかな。  てことは。  いつか玲央が家族みたいになったら……。  甘えちゃう、かなあ……。  いやでも、家族って何。  玲央と家族って。  かあっと、熱くなる。  わあ、収まれ……。  心の中で慌てていると、蒼くんと里村さんが帰ってきた。 「あ、おかえりなさい」 「ん。平気だったか?」 「うん、大丈夫」  答えると、ふ、と蒼くんが笑う。  スーツの蒼くん、ほんと、カッコいいな。  里村さんと並んで話してるのを見てると、ふと思った。  まじめな顔して仕事してる蒼くんて、そりゃ、世にファンがいっぱい居ると納得しちゃうけど。なんか、昔からずーっと見てるからなのかな、どんなにカッコよくても、玲央を見てる時みたいなドキドキとかは、一切ない。  ……ていっても……もともとオレ、男はそういうドキドキ対象に無かったはず、なんだよね……。  玲央は、最初から。  カッコよくて。  見つめられると、ドキドキして、好きって思って……。  でもなあ。どんなにカッコよくても、オレ、男に興味なかったのに。  どうしてオレ、キス、全然嫌じゃなくて、受け入れて――――……。  そっか。今日月曜日だから ――――……先週の今頃なんだ、玲央のマンションに行ったの。  出来事よりも心の中でものすごい色んな動きがあって、たった1週間後の今日、玲央と恋人同士になってる、とか。  ……会って数か月で結婚しましたとか、そんな事があるって聞いた事があるけど。こんな風な感じなのかなあ……。  こんな事が、自分に起こるとか。  ほんと、不思議。

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