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第304話◇
「落ち着いた?」
玲央のせいでおかしくなったのに、玲央ってば、そんな事を言いながら、クスクス笑って、楽しそう。
「……全然落ち着かないし」
一気に高まった熱も、ぽわぽわ浮いてるみたいな、変な感覚も、
全然抜けない。
「……あのね、玲央?」
「ん?」
ぽふ、と玲央の腕の中に埋まったまま、背中にぎゅ、と抱き付いたまま。
ふと見上げた。
「蒼くんがさ……」
「ん」
「……玲央が来てるなら美味しい物食べにつれてってやろうと思ってたのにって、さっき言ってて、でも今日は来ないからって、断ってたんだけど」
「うん?」
「今、来てくれたみたいって言ったら、来たいなら来てもいいよって」
ぽんぽん、と背中を叩かれながら、そう言うと。
「その言い方ってさ」
「うん」
「他にも誰か居るのか? 来なくても蒼さんは行くってこと?」
「あ、そう」
そう言われて、うん、と頷く。
「蒼くんのお友達みたい。一緒に受付してたんだけど」
「優月は行きたいか?」
「んー……2人で居たいなら、来なくていいぞって蒼くん言ってたから。2人で居たい気もするし……玲央が蒼くんとご飯行ってみたいとかあれば、行こうかなとか……」
「オレ、蒼さんには会いたいんだけどさ」
「そうなの?」
玲央を見上げると、ん、と頷いて笑う。
「ちゃんと付き合うって、報告したいから」
「――――……」
……好き。
玲央。
なんか、すごく、大好き。
玲央の腕の中でうー、と悶えていると。
「でも他の人居たらその話できねーよな?」
んー、と玲央は少し考えてて。
「優月、蒼さんに電話して、オレに貸して?」
「あ、うん――――……はい」
玲央にスマホを渡す。
「あ。こんばんは。玲央です――――……はい、今聞いた所なんですけど」
ふふ。蒼くんには、敬語なんだ、玲央。
敬語。なんかレアで好き……。
「蒼さんと話したかったんですけど、他の人が居たらまずいですよね?」
なんかもうすっぽり抱き締められすぎて。
すぐ上から、玲央の声が響いてて。
……なんか幸せ過ぎて、このままずっと、居たい……。
すり、と密かに玲央にくっついていると。
ふ、と上で玲央が笑う声がして。見上げると、玲央がオレを見つめてて。
電話を持ってない手が頬に触れて、すり、と撫でる。
「――――……はい。え。……大丈夫なんですか?」
そんな意外そうな玲央の声がして。
玲央がオレを見つめる。
「優月、いく?」
小声でそう聞かれて。うん、と頷いた。
「あ、じゃあ、今から行きますね」
玲央が電話を終えて、ふ、と笑う。
「優月と優月の彼氏が来るけどいい?て、向こうの人に聞いてたぞ」
「……そうなんだ」
「全然オッケイって、聞こえた」
「……なんか。蒼くんと里村さんぽい気がする……」
返されたスマホを、ポケットにしまう。
「ちゃんと立てるか?」
「うん」
……ほんとはもう少し前から、全然立ててたし。くっついてただけで……。
そっと起き上がらせてもらって。
でもずっとこのまま居たかったなあ……なんて思いながら離れると。
玲央がぷ、と笑って。
「気持ちよかったか? くっついてるの」
「――――……」
何でわかるの。
「……何で分かるのみたいな顔されても――――…… 分かるだろ。そんな離れたく無さそうな顔されたら」
玲央の手がオレの頬を挟んで、ちゅ、と額にキスされる。
……なんでおでこ?? 口にしないのかな?
ぼー、と玲央を見上げていると。
「口にすると、蒼さんにバレるし。 やっと顔、少し戻ったのに」
そんな風に言われて。
言われた内容よりも、何だか不思議に思う事を、聞いてみる。
「……何で、玲央は、オレの思ってることと、会話するの?」
「――――……」
口にするより早く、返事が返ってきてる気がするんだけど。
そう聞いたら、玲央は、きょとん、として。
それから、クッと笑い出して。口元隠して、オレに背を向けた。
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