301 / 856

第305話◇

【side*玲央】  授業が終わったら即帰ってジムに向かった。  先週サボったから、久々な感覚。ジムのインストラクターに、先週は忙しかったんですか?と聞かれた。ここに住んでからは、週1、2回は必ず行ってたからなー……。  ほんと先週は色々イレギュラー。  ――――……早めにトレーニングを終えて、シャワーを浴びて。部屋に帰ったけれど、まだ余裕で優月の所まで行ける時間だなと思ったら、もうあまり考えずに、出発。  悪いから、という断りだったと思うから、行ってもいいだろうと思って電車に乗って向かう。 ――――……だんだん近づくにつれ、これってどうなんだろうと考えながら、景色を眺める。  来なくていい、1人で大丈夫と言ってる奴を、迎えに行くって。  …………迎えに来て、とか送ってとか、言い続けられるのと、同じ位うざかったりして。  優月だから、ウザイとか、そんな事は言わないとは思うけど。  要らないって言ってるのに、来たの?……とか。  言われても良いレベルな気もしてきた。  優月、どんな反応、するかなあ……。  と。思いながら。昨日も長い時間過ごしたコーヒーショップで、コーヒーを飲みながら色々考える。  優月の側に居たいっていうのが大前提にあるから、その為に待つとか移動するとかは、全く何とも思わない。でもそれを、優月が申し訳なさそうにするなら、来ない方が良かったかなとも思うし。  んー。優月次第なんだけど。  ……オレ、変わりすぎだとは自分でも、思うけど。  迎えに来たことを優月に連絡を入れて、音楽を聞きながら、連絡を待つ。  何て、連絡くるかだよな……。  と、何となく、何度も来なくていいと言われたっけと引っかかって、モヤモヤしていた。  電話がかかってきて、何て言われるかなと思いながら、出ると。 「来てくれたんだね」と言われて。  要らないって言われてたけど、と思わず言った時。  嬉しい、と優月は言った。  悪いなって思ってたけど、来てくれてすごく嬉しいって。  本当に、可愛いって思ってしまって。  つい、路地裏に引き込んで、キスしてしまった。  ――――……どうしてこんなに愛しいかな。  腕の中の優月が、めちゃくちゃ愛しくて、可愛くて。  なんだかどうしたらいいか、よく分からない。  とりあえず思うままキスしたら、また立ってられなくなる優月を支えて。……すぐ感じてそうなるのが、ほんと可愛い。  その後優月を抱き締めたまま、蒼さんと電話して、一緒に夕飯を食べる事になった。  抱き締めていた腕から優月を起こして離すと、離れたくなさそうな顔をして。  額にキスしたら、何で口じゃないのかな?と不思議そうで。  確かにそれらを優月に言葉として言われた訳ではなかったけど、そうだとしか思えない顔をするから、それに対して勝手に話を進めていたら。  ものすごく、不思議そうな顔をして。 「……何で、玲央は、オレの思ってることと、会話するの?」  と言われた。  なんでって――――……。  答える前に吹き出してしまった。  だって、お前の顔、そうとしか取れないっていうか。   ……これはオレじゃなくて、他の奴だって分かると思うんだけど。  可愛くて、なんだか笑いが抑えられなくて。  つい、笑い続けていたら。 「なんでそんなに笑うの?」  むー、と見上げてくる。 「優月?」 「……何?」    ムッとされても、ふ、と笑ってしまう。  もう、本当に可愛い。なんでそんなに素直なんだ、お前。  優月を引き寄せて、ぎゅ、と抱き締める。  すっぽり埋まって、少しすると。もう、腕の中でほくほくした顔してる。 「……素直なとこ、マジで好き」  よしよし、と撫でていると。 「――――……オレは、玲央、全部好き……」  今から蒼さんのとこ行くのに。そう思うんだけど。  ――――……我慢できなくて、ちゅ、と唇にキスした。  触れるだけのキスをして。ゆっくり離すと。  ふわ、と笑う。  花が咲くみたいに笑うってこういう事かなと、思うような笑い方で。    ――――……はー。可愛い。  オレ、頭ん中、溶けてそうだな……。

ともだちにシェアしよう!