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第309話◇
「……撃ち抜かれて?」
優月が不思議そうに、蒼さんの言葉を繰り返しながらオレを見つめてくる。視線が思い切り絡んだ瞬間。何だか一気に照れて、オレは思わず視線を逸らしてしまった。
「え。……玲央、照れてる?」
「……ちょっと黙ってて」
「……っていうか、玲央が照れると、オレまで照れるし」
顔熱い……。と、視線の端で、優月が顔をパタパタしてるのが見える。
…………マジで、今、キスしたい。
「……里村が変なこと聞くから、すげーあてられて終わっただろーが」
「つーか……何、この子。まっすぐ過ぎねえ? 何それ、側に居たいって、そんなまっすぐ言われるとか」
蒼さんの呆れたような言葉に、さらに里村さんの呆れたような声が重なる。
「蒼が可愛がり過ぎたんじゃねえの? こんな記念物みたいなのに育っちゃって」
「会った時すでになんか他のガキんちょとは違ったぞ」
「じゃーもともとこんなだったのを、お前が育てたんだろ」
「そこまで一緒に居ないし。勝手にこう育ったんだよ」
オレには、2人の言ってる意味が、ものすごくよく分かるけど。
優月は、何を言われてるんだか、分かっていないみたいで。
一応話の流れ的には自分の事かなくらいは分かってるみたいで、聞いてはいるけど、何言ってんだろ、とばかりの怪訝な顔して、目の前の2人を見てる。
何かすごく可笑しくなってしまって。
耐えられなくて、笑いながら、優月の頭をクシャクシャ撫でたら。
きょとんとしてオレを見た後、また、嬉しそうに笑う。
それを見ていた目の前の2人が、また呆れたようにあれやこれや言い始めた。
なんか、やっぱり、優月が。
――――……「最強」な気がする。
「もう分かった。イジらねえよ。つまんねーし」
「面白がるから、返り討ちにあうんだよ、バカだな」
「……蒼が可愛がってるっつーだけあって……未知の生物かもなー……」
そんな里村さんの言葉に、蒼さんは、なんだそれ、と笑ってる。
「もしかして、玲央くんのが大変なのかもな」
「――――……」
「こんな特殊な感じの、他に居なそう」
里村さんの言葉に、ちょっと深呼吸。
「芸術の人達て――――……人をあれこれのぞき込むの、得意なんですか?」
そう言いながら、里村さんの後に、蒼さんにも視線を合わせると。
2人は、く、と苦笑い。
「図星だって」
「らしいな」
クスクス笑ってる。
優月は、分かってるんだか、分かってないんだか。
何も言わず、考えている風だったけれど。
「そりゃ、玲央の付き合ってた人達とは、多分、オレ違うと思うけど……」
むー、と少し膨れてる。
……ちがうな。そう言う意味で特殊とか言ってるんじゃない。
分かってねえなあ、やっぱり……。
ふ、と笑うと、蒼さん達も笑う。
「とりあえず思い切り恋愛してみろって、優月に言ったもんな?」
「うん」
「大体にして、その年まで何もない方が不思議なんだから。せっかく好きな奴出来て、お互いそうなったんだから、頑張れよ」
「ん」
蒼さんの言葉に優月が頷いて、オレを見つめて、「頑張っていい?」と聞いてくる。「当たり前」と答えると。また嬉しそうに笑う。
「なんか、見てると、あほらしくなるなー」
里村さんがニヤニヤ笑いながらそう言った。
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