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第312話◇

【side*蒼】  優月と玲央を送って店の中に戻り、里村の隣ではなく、前に座る。 「帰った?」 「ああ」  さっき座っていた所から、里村が飲み物と小皿を手渡してくるのでそれを受け取りながら。 「何か頼むか?」  言うと里村は、まだ良いと笑う。 「――――……優月くん、ああいうタイプだと思ってなかった」 「どんなタイプだと思ってたんだよ?」  聞くと、里村は、ははっと笑った。 「特別思ってた訳じゃねえんだけど――――……なんつーか……まあ。ああいうタイプかって、感じ」 「どー言う事だよ?」  ふ、と笑うと。里村はんー、と顎に手をかけて、考える。 「蒼が可愛がるのがあれかーと思って」 「なんだよ?」 「なんつーんだろうな、あのタイプ。……天然……とも違うような」 「はは。 ……一言じゃ言えねえよな」  優月を思い出して、すこし考えるが。適当な言葉が見当たらない。 「お前が育てたんだろ。絶対」 「だから、優月が中学に入ってスマホ持つまで、週1の教室でしか会ってねえし。スマホ持ったって、そんな頻繁に連絡とる訳でもねえし?」 「週1でも、影響与えるには十分だろ」 「――――……どっちにしたって、優月は元々あんな感じだよ」  ビールを一口飲んでからそう言うと、里村は、ふーんと笑う。 「いいの? 渡しちゃってさ」 「ん?」 「お前のもとで可愛がってたいんじゃねえの?」  クスクス笑う里村に、ふ、と笑って。 「玲央のこと言い出した時、優月は男がありなんだとは思ったけどな。どう考えても、オレは、無しなんだよな。……今の立ち位置が一番居心地良い」 「ふーん……」 「何だよ」 「優月くん、初めての恋人なんだろ? 元々ノーマルの子でさ。片方はあんなイケメンの、バイを自覚してる、遊んでそうな玲央くん」 「――――……」 「今はお互いめちゃくちゃ大好きって感じだけどさ。いいの? 優月くん、傷ついても」  まあ言いたい事はすごくよく分かる。 「……玲央が優月を好きなのがさ」 「ん?」 「――――……なんかオレが優月を好きなのに似てるんだよな。オレのに、恋愛感情を足した感じ」 「はは。そうなの?」 「まあそんなの感覚だから、確かじゃねえし、何とも言えないけど」 「――――……」 「まあでも、もしそうなら、ずっと大事にしてくれるかもしんねえし。優月は、一回好きになったもの、そう簡単に手放さないし」 「ふうん……」 「としたら、ずっと続くかもなと、オレは思ってるよ。――――……あ、賭けるか? とりあえず3月まで続くか」  ニヤ、と笑って見せると。 「……続く方に賭けて良いなら乗る」  里村の言葉に、は?と視線を向ける。 「賭けになんねえけど。 お前は別れるって思うんじゃねえの?」  そう言うと、里村はものすごい苦笑いをして、オレを見た。 「今の聞いてたら、違う気がしてきた。まあなんか初々しいし。応援したい気持ちはあるんだよ。優月くん、かわいーし」 「は。じゃあ賭けになんねーな」 「ん」  ふ、と2人で笑ってしまう。 「ていうか、玲央くんも可愛いよなー」 「ん?」 「オレが、浮気とか言い出した時さー。一生懸命しないしないって、優月くんに訴えてて。 顔だけ見てれば、超生意気なイケメンっぽいのに。笑っちまいそうだった」 「優月はもう何も考えずすげー好きなんだと思うけど…… 玲央は色々経験あるだろうし、色々考えての好きだと思うから――――…… むしろ、玲央のが、優月を好きなんじゃねえかな」 「はは。いいねー、若くて、好きが一番でさ」 「そうだな。まあ、3月に、酒飲みながら、色々聞けるといーけどな。なんか飲もうぜ、日本酒いく?」 「お前明日、個展の最終日なんじゃねえの?」 「別に全然平気だし」 「あ、そ」  く、と笑いながら、里村がメニューを受け取る。 「3月楽しみだな」  クス、と笑う里村に。 「ああ」  ふ、と2人を思い出して。つい、微笑んで頷いた。   

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