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第315話◇

 キスしてれば幸せ、とか言いそう。  玲央の言ったセリフを、自分の中で繰り返してみる。 「うん。キスしてるだけで幸せだし……そうも思うんだけど……」 「――――……ん、だけど?」  玲央の指が、唇に触れてくる。  そっと、下唇をなぞられる。  それだけで、ゾクゾクするって。  ……玲央は、分かってやってるんだろうか。  それとも、こんなでゾクゾクするの、オレが、変なのかな。 「――――……」  何だか何も言えず、黙って玲央を見つめていると。  玲央は、クスっと笑った。 「オレもさ。こんな風に、していい?とかあんまり聞いた事ないんだけどさ……」 「……そうなの?」 「聞かない。まあ……セフレだったし」  ちょっと言いにくそうに、玲央が言う。   「……その時は最初からそのつもりで会ってるし。だから、こんな風に聞かないし」  そっか。 そういえば、オレも、最初はそのつもりの覚悟で来てたっけ。  玲央は、なかなか最後までしなかったけど。  …………最初から、めちゃくちゃ優しかったなあ……。  と。  頭の中とろけそうな感じで、最初の頃の玲央を思い出していたら。 「キスして、応えてきたらもうそれでオッケイって事にしてたから」  ……そうだろうね。  玲央に、その気でキスされて、断る人なんて居ないと思っちゃう位。  …………玲央のキスって……。  ヤバいもん、ね……。うんうん、分かる……。 「でも、優月がキスに応えたらオッケイって事で受け取ってたら、オレ毎日しちゃうと思うんだよな」  クスクス笑いながら、玲央はオレの唇をまたなぞる。 「優月、キスするとすぐ返してくれるから」  ちゅ、と優しくキスされる。 「でもまだ慣れてないし、体辛いと思うから聞いてる」 「――――……体は大丈夫……」  オレがそう言うと、玲央は、ふーん?と微笑む。 「キスしてれば、幸せとか、確かに思うんだけどね」 「ああ」 「――――……あの時しか見れない玲央が居るから……するの、好き、だよ」  オレの言葉を聞いて、唇をなぞっていた、玲央の指がぴた、と止まる。 「……何それ? あの時しか見れないオレ、て何?」  ふ、と面白そうな顔をして、玲央が聞いてくる。 「……え」 「そんな風に言われんのは、初めてかも。 何だよ、それ?」  うう。そこ、つっこまれると、恥ずかしい。  かああ、と顔に熱がどんどん集まっていくから逸らしてしまいたいけど。  頬に手がかかってるし、唇にも触れられたままだし、動けない。 「あの――――……何て言うか……」 「ん。何て言うか?」 「……すっごく――――……」 「ん」 「…………男っぽくて…… きもち、良さそう……?」 「――――……」  オレが何とか言葉にして言った瞬間、きょとんとしてしまった玲央の顔を見ていたら、急に恥ずかしさが大爆発した。 「……真っ赤」  玲央がぷ、と笑って、頬に触れてくる。 「い、まの、全部無しにして、ちょっと待って、変な事言った」  オレは今一体、何を言っちゃったんだ、恥ずかしすぎる………っ。  心の中でめちゃくちゃ狼狽えて、玲央から顔を逸らそうとしていた時。  玲央に、むぎゅっと抱き締められた。 「……落ち着けよ」  クスクス笑う玲央。  ぎゅっと抱き締めてくれているので、顔を見せずに済むから、バクバクした心臓も少しずつ落ち着いていく。  恥ずかしすぎる。    わーん。2分、時を戻してほしい……。

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