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第316話◇
「……よく分かんない変な事言ってごめん……」
そう言ったら、玲央は、ぷ、と笑って。
「何で? よく分かるけど?」
抱き締めたままのオレの後頭部を、よしよしと撫でてくれる。
「優月が狼狽えてんのがすげえ面白いし……ていうか、可愛すぎる」
クスクス笑う玲央が優しすぎるけど。でも。
「…………でも変なこと言ったよね……?」
「変じゃねえよ」
玲央は言いながら、髪の毛にちゅ、とキスしてる。
「……気持ちよさそうなオレが見たいから、したいんだろ?」
「…………っ」
うう。恥ずかしすぎる。
言わなきゃよかった。
「……ていうかさー。お前って、ほんと……」
「――――……?」
お前ってほんと…… なに??
この会話でこのタイミングで、間を空けられるとドキドキするー。
「なんか――――……相手の事ばっか、とは思うけど」
「――――……」
……咄嗟に意味が分からない。
何が、相手の事ばっか……??
あれ、今何の話してたんだっけ?
と、頭の中で会話を巻き戻す位、よく分からない。
思わず、玲央を見上げると。
「あ、意味が分からねえ?」
うん、と頷く。
……また玲央は、オレの心の声と会話してるけど。
「セックスとかってさ、気持ち良いからしたいって思うだろ」
「うん……」
「普通は、自分が気持ち良いからとか。それで 良いと思うんだけどさ」
「……うん……?」
「オレが気持ちよさそうだから、したい、とか」
「――――……」
「お前が、じゃなくて、オレが気持ちよさそうなのが見たいからとか」
……だって、ほんとに――――……
そっちのが好きで。
え、変なのかな?
「……オレ、気持ちは良いけど……恥ずかしいとかが結構まだ強くて……でも、玲央が気持ち良さそうなのは……大好きだから……」
「うん」
「……それで言っちゃったんだけど……変?」
普通は気持ち良いからしたいのか。
そっか。でもそうだよね……。
玲央が気持ちよさそうなのが好きだからしたいとか。
オレはやっぱりものすごい、恥ずかしい事言ったんじゃ……。
考えがそこにたどり着いた瞬間、恥ずかしさにまた真っ赤になったオレ。
「あ? 何でまた真っ赤?」
玲央がびっくりした顔をして。
それから、ふ、と笑うと。
オレの両頬を挟んで、ぐい、と引き寄せた。
唇が重なって、舌が滑り込んでくる。
「……っん……」
「――――……舌ちょーだい、優月」
言われるままにすると、また食べられて、吸われて、舌の根がツン、と引きつる。
「……ッン……ぁ」
絡まって、噛まれて――――……。
本当に数秒で、ものすごいゾクゾクさせられる。
「……ん、ん……っ……」
ゆっくり、舌が外されて。終わりなのかと思ったら、また、かぷ、と噛まれて。
「……ん、ぅ……」
ゾクゾクが止まらない。少し唇を離した玲央は、至近距離からオレの瞳をまっすぐに見つめて、ふ、と笑んだ。
「うん。……すげえ、気持ちよさそう」
「――――……?」
「オレもそーだなと、思った。――――…… オレも、優月が気持ちよさそうなのが見たいから、したい」
そういう言い方されると、めちゃくちゃ恥ずかしい……オレ、ほんとに何言ったんだろ。
「……でも普通はさ、自分が気持ちいいからって言うとこだから」
「――――……」
「優月らしい言い方で――――……すっげえ、好き」
ほんとに水も滴るイイ男……イイ男過ぎる玲央は。
何だか本当に優しい笑顔で。そんな風に言って、ちゅー、とキスしてくる。
オレの、自分でもよく分からない、発言。
そんな風に、優月らしい言い方なんて、良い方に受け取ってくれて。
すっげえ好きとか言ってくれちゃう玲央が。
オレの方が、大好きで大好きで、しょうがない。
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