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第317話◇

 普通は、自分が気持ちいいから。  ……オレは、玲央が気持ちいいのが見たいから。  変、なのかなあ。  さっき玲央にも言ったけど、恥ずかしいがすごいし、なんかもう未知の感覚にいっぱいいっぱいで――――…… 玲央が気持ちよさそうで居てくれるっていうのが、すごく幸せだって思っちゃうんだけど……。  ――――……あ。  そう、いえば……。  キスされながら、ふと、気づく。  少し、唇が、離れた時に、玲央を見上げた。 「……ん?」  微笑む玲央の、優しい瞳が好きすぎて、胸が痛い。 「……玲央も……同じような事言ってた気がするんだけど」 「何と同じ?」 「――――……最初に会った頃……全然最後までしなくてさ」 「うん?」 「オレを気持ちよくしたいからって、オレばっかり、してたでしょ」 「――――……あー……そうかもな」 「あれは、同じじゃないの?」  そう聞くと、玲央は、クスっと笑った。 「……あれは、ちょっと特別かなあ」 「特別?」 「……キスも初めてのお前に、全部一気になんてできないし……男が好きなわけでもないのに、オレのとこ来てくれた優月が、可愛かったからさ」 「――――……」  頬に触れて、すりすりと頬をなぞる。  ……玲央って、こうやって触れるの、好きだなあ。  ……優しくて、大好き。 「すげえ優しくして、気持ち良くしてやりたかったんだよ」 「――――……」 「……だからあれは少し特別で、今優月が言ってたのとは、違うかも、なんだけど――――……」  じっと見上げてるオレの頬に、ちゅ、とキスした。 「まあ……優月が気持ちいい顔してんのを見たいからやってた、てとこは一緒かもな」 「……うん。玲央が、そういう風にしてくれたから、オレ、今そう思うのかもしれない」 「――――……」 「……相手が気持ちいいことするのが、こういうコトだって。玲央が、教えてくれたから――――……よく分かんないけど、そう思うんだと思う……」 「……オレが教えたの? それ」  面白そうな顔をして、玲央がオレを見下ろしてくる。 「……だってさ、こういうの全部玲央が初めてだから――――……思う事も全部、玲央の影響だと思うんだけど……」 「……ふうん……」  少しの沈黙の後、玲央はふ、と笑った。 「――――……早く、ベッド行こうぜ」 「え?」  急な一言に、間抜けな声を出してオレが玲央を見上げると。  クスと笑った玲央はオレの頬に口づけた。シャワーを出して、オレにかけてくる。 「なんかさ……分かってはいたけど、全部オレが初めてとか、改めて言われると」 「……?」 「――――……すげー燃える」 「――――……」  急に、視線や声が、色っぽくなって、そういう雰囲気を作る。  ――――……玲央は、無意識にやってるんだろうけど。 「お前は、オレを煽るの、ほんと上手な」  くす、と笑うだけだって。  もうさっきまでの優しい笑い方とは、全然違う。  どうしてこんなに――――……。  ドキドキ、しちゃうんだ。  また急に、頭の中まで鼓動だらけみたいな。  体中、ドキドキして。  玲央は、オレの言葉を聞いて、たまに、煽ってるとか言うけど。     ――――……玲央は、瞳や声だけで、すぐ、オレを煽る。  ……多分、これが煽られてるって状態なんだよね、きっと。  ドキドキして。  ――――……玲央に触れたいって。触れてほしいって、すごい思ってしまう。  なんでこんなに、色気のある人が、オレに煽られるとか言うんだろ。  ……不思議。 「――――……とりあえず、優月洗って、出よっか」  濡れたみたいな声で、耳元で囁かれて、こくこく頷く。  すると、ふ、と笑う気配がして、耳に舌が這った。 「……ひゃ……」  一瞬で。  ぞくん!と激しい感覚が、体を走る。  本当に、一瞬で。  背中に大きな手が置かれて、後ろに引けないようにされたまま、耳や首筋を、唇や舌がなぞる。  もう、体、ピクピク震える、のみ。  動けない……。 「……ここだけで、気持ちいい?」  くす、と笑われる。 「はは。かわい……」  ぺろ、と頬も舐められて。  ……ほんと。玲央って、舐める、なぁ、人の事。  ――――……人を舐めるって…… なかなかやった事なくて。  まあそれ以外もやった事ない事ばかりなんだけど。  ぺろ、と舐められると、こんなに肌がざわざわして、気持ちよくなっちゃうとか。……考えた事も無かった。というか、人を舐めるていう行為自体、あんまり認識が無いというか。 「頭洗ってやる」  人をこんなにゾクゾクさせておいて。  ……楽しそうにオレの髪に触れて、泡立てていく。  ちょっと恨めしく思いながら。  でも、ん?と優しく笑まれると、そんなのも吹き飛んでしまう。

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