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第322話◇

 食べ終わって、一緒に流しに並んだ。  オレが洗うのを、玲央が流していく。  洗い終わって、手を拭いたところで、「優月」と呼ばれて腕を引かれて、抱き締められた。 「玲央、どうしたの?」 「……なあ、お前ってさ」 「うん?」  抱き締められてるのが嬉しくて、聞き返しながら、すり、とすり寄っていると。 「オレの顔、好き?」 「――――……」  ……え? 何を今さら……。  見上げて、うんうん、と頷く。 「カッコいいとか、思ってる?」  うんうんうん。  頷いてると、玲央が、ふーん?とニヤニヤしてる。 「オレの外見、そこまで興味ないかと思ってた」 「え」  何で?  オレ死ぬほど、心の中で、カッコいい人だなーって、ずっと言ってるけど。  ……あ。心の中でか。 「……オレ、何回かは言ったよね? カッコイイって」 「……歌ってる時カッコイイとか……? 体がカッコイイとかは聞いたような……」  ……確かに、顔がカッコイイとかは……あんま言ってないかも……。  だって、カッコいいなーって思う時って、ものすごいドキドキして見つめてるから…… 言えてないのかもしれない…………。 「……ていうか、全部カッコいいよ? ていうか、玲央をカッコいいって思わない人なんて居ないと思うけど」  そう言って、自分でうんうん頷いていると、玲央は、ぷ、と笑った。 「そーなんだ……ふーん」  面白そうな顔をしながら、玲央がオレを見下ろしてる。 「あ、でも…………顔がカッコいいから好きなんじゃないよ?」 「――――……」  なんとなく言っておこうと思ってそう言ったら。  玲央は、今度はしばらく固まって。 「そっか」  今度は、何だか、すごく嬉しそうに笑う。 「……全部、カッコいいよ、玲央」 「全部?」 「話す事も。する事も。……話し方もだし。姿勢とか、立ってるだけでカッコいいし。 何でも出来るし……カッコいいと思うとこしか無くて、不思議」 「……ほんと、そんな事はないと思うけど……」  ぷ、と玲央が笑う。 「でも、優月がオレを大好きなのは、分かった」 「……それは、今分かったの??」 「――――……まあ、知ってたけど」  よしよし、と撫でられつつ。 「……何で、カッコいいと思うか聞いたの?」  不思議に思う事を聞いたら。 「運転するのがカッコイイだろうから、とか言うから。 お前、オレの事カッコいいと思ってるのかなーって」 「思ってるに決まってるし。 ……ていうか。世界一カッコいいよ、玲央」  そう言ったら。  玲央は、クッと笑い出して。  オレの両頬を挟んで、上向けた。 「優月は、世界一可愛い」  ものすごい近くで、まっすぐ見つめられて、そんな風に言われて。  自分が言った言葉を返してくれただけなの、分かっているのだけど。  玲央の瞳があんまり近くでキラキラしてるので。  また顔に熱が大集合。 「……なんでオレには言うくせに、優月は赤くなんの」  すりすりと頬を指で撫でられながら、笑われる。 「……だって、オレ、絶対世界一可愛くなんてないし。……でもなんか……玲央が、そんな風に言ってくれると……嬉しい……というか。それに、恥ずかしいし…………」  そこまで言い終えると、玲央は、ちゅ、と頬にキスしてきた。 「オレにとっては、ほんとに……こんなに可愛いと思った奴、居ないよ」 「――――……」  熱っぽい瞳が。  ……多分、今この時、ほんとにそう思って言ってくれてるんだろうなと思えて。  ああ。もう。  朝から、心臓が、もたないよう――――……。  そんな風に思っていたら。   唇が重なってきて。  ドキドキが、玲央と重なって、抱き込まれて何も考えられなくなって。  玲央の家で目覚めた2日目の朝は。  なんだかもう幸せ過ぎて。  こんなに幸せでどうしよう。と。 心から思ってしまった。    

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