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第327話◇

【side*優月】  玲央と別れた所で、友達に会った。おはよーと皆と挨拶をして、一緒に校舎に入る瞬間。何となく、玲央と別れた所を振り返ったら。  こっちを見て、止まっててくれた。  嬉しくなって、手を振って別れて、校舎にまた足を向けた。    ずっと一緒に居るのに、授業で離れるのが寂しいとか。  恋人って、皆、こんななのかな。  やっぱり付き合っちゃうと、こうなるのかな。  あ。なんか。  今、思っちゃった。  絶対遠距離とか、無理だ、オレ。  玲央と遠距離とかなったら――――……多分オレのものは全部捨ててついて行っちゃうかも……。ああでも、きっとそういうの、玲央は嫌だよね。  鬱陶しいとか思われちゃうかな。  うう。  遠距離とかに、なりませんように……。  突然思いついた事に、変なお祈りをしていると。 「なあ優月ー?」 「……え?」  不意に現実に引き戻された。 「何?」 「あのイケメンNo1と、何かあんの?」 「え」  何かある。  ……そ、それは恋人とかそういうこと??  え、何でまだ誰にも言ってないのに、バレちゃんうだろう。  と思ってたら。 「なんかオレも先週一緒に居るとこ見かけたけど」  他の友達にもそう言われる。 「なんか繫がりでもあんの?」  あ、そう言う事ね。  関わりが無さそうだからって事か。  うわー……先週オレ、学校では、そこまで玲央と長い時間居なかったと思うんだけどな。授業は別だし。終わった時とかにちらっと、とか。それ位だったと思うんだけど。  なんか、結構見られてるんだな。  ……ていうか、玲央が目立ちすぎるからだな、他の友達と居たって、こんな風には言われないに違いない。  目立ちすぎるって……やっぱり、ちょっと大変。 「何で知り合ったの?」 「何で……何で……えーと。……猫に缶詰あげに行ってたら、そこで会った」 「何それ」  なんか周りにいる皆に口々に笑われる。  教室に着いて、適当に近くに座りながら、皆はオレを見てくる。 「猫んとこで会ったら、仲良くなったの?」  ――――……クロのとこで会って……。  ……急に、キス、された。  言ったらびっくりするだろうなあーと思ったらついつい、ふ、と笑ってしまった。  そんなオレに気付いた皆が。 「何だよ、優月。思い出し笑い」 「何思い出したー?」  皆がクスクス笑いながらオレを見てくる。 「……うん、猫のとこで初めて会って――――……仲良くなった」  付き合ってる、と言っちゃいたいけど――――……。  さすがにここで言ったら、全員に広まっちゃいそう。  それはちょっとなーと思って、口を閉ざす。 「あいつって良い奴なの?」  むむ。……何だかなーもう。  この質問て、引いては、いい奴じゃないんじゃないの?てことだよね。  玲央って一体どんなイメージなんだ。  むむむ。 「玲央は、すごく優しいよ」  そう言うと。 「優しいタイプじゃなくね?」  けろっと言われ。 「何かオレ、先週もこんな会話を誰かとした気がする……」  ムムと眉を顰めつつ言うと、周りの皆が「だってそう見えるじゃん」と笑う。むー、ひどいー。  ――――……あ。そうだ。 「――――……今度玲央、紹介するね?」  にっこり笑顔でそう言ったら。  皆、え?とオレを見た。 「玲央が優しいかどうか、確かめてよ」 「えええー?」 「それで優しかったら、オレに謝ってもらうからね」  ふっふっふ、と笑って見せたら。  皆、はー?と笑って。 「何で優月に謝んだよ?」  口々にそんなような事を言ってくる。  だって大好きな恋人の悪口言われたんだから。  謝ってほしいし。  そう言いかけて、はた、と気付いて止まる。  そっか、「恋人」って事を言わないんだったら、  確かに、オレに謝るって、よく分かんないか。  ――――……むー。  後でどこまで話していいか、もう1回聞いておこ。  聞かれたら話しちゃうねとか言ったけど――――……、  大学の全員が知ってるとか。それは大変だもんね。    ――――……うー、でも。今言いたいかも……。    玲央と付き合ってるって。 ほんとに優しいよって。

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