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第328話◇

 納得は出来なかったけど。  教授が入ってきてしまって、授業開始。  ぼんやり考えていたら、ふと。  でも、まあいっかと、すぐに思った。  玲央を知らないから、そんな風に言ってるだけで。  ……玲央を知ってる皆は、玲央の事が好きだもんね……。  セフレがいっぱい居ても。周りの皆は、玲央の事を分かってたし。  オレに、玲央をよろしく、て言ったりする。  玲央の事を好きじゃなかったら、そんなこと言う訳無いし。  ぱっと見冷たく感じるのは――――……カッコ良すぎるからかな。  あと、バカ笑いしたりするタイプじゃないから。  とにかく、玲央の事を知ってる皆は、玲央の事が好き。  オレも。玲央が、すごく好き。  だから、いっか。  ――――……今度いつか、機会があったら玲央を知ってもらお。  そんな風に思って吹っ切った。  先週は玲央の事で混乱しすぎて、玲央の事ばっかり考えてて、授業ボロボロだったけど、やっと落ち着いて授業に出れてるなーとしみじみ。  ……とか言いつつ、まだ玲央の事考えてるけど。  下を向いて文字を書きつつ、苦笑いが浮かんでしまう。  もうオレ、ずーっと玲央の事考えてそう……。  そんな風な1限が終わって2限に向かう途中。  美咲に会った。 「おはよ、優月」 「おはよー」  挨拶して止まると、一緒に2限に向かってた皆が、「先行ってるよー」と言いながら歩いて行った。 「あれ、結んでないんだ、髪」  今日も美咲は綺麗。  珍しく髪の毛全部下ろして、ストレート。ピアスは今日は小さい。 「なんかおしとやかだね、美咲」 「今日、ちょっと良いなと思ってる人と、デートなの」 「……あれ? 美咲、彼氏は?」 「優月が大変だったから言ってなかったんだけど、別れたんだよね、先週」 「えええっ」 「別にあたしからお別れしたから、全然いいの」 「そ、そうなの?」  ものすごーくけろっとしてる。  ……まあ。昔から、もうだめ、と決めたら、早かったけど。  それで今日、デートとか。美咲らしい。  クスクス笑ってしまうと。 「優月は? 昨日もあいつのとこ?」 「今日も、そうだよ。ていうか、ずっと一緒かも……」  言ったら美咲は、もーしょうがないなーと、笑う。 「初恋だもんねー。浮かれるよね……」  あ、また初恋とか言われた。  初恋って。  ……確かにそうなんだけと、初恋って響きが……。  なんか恥ずかしい。  もうすぐ20才なのに初恋とか。 「オレ今までも好きな子、居たよ?」  一応、言ってみたけど。 「だからー、それはちょっと好きとかでしょ?」  ……何で蒼くんも美咲も、同じ事言うんだろう。  でもそうな気がするから、もうここから言い返せなくなるんだけど……。  初恋。  玲央と初恋、かー。  ……でもそれはそれで。  全部玲央が初めてって。幸せなことかもしれない。  ――――……なんて思っていたら、美咲が鞄をガサガサ探り始めた。 「優月、手だして?」 「ん?」  差し出した手に、何だかおっきいお菓子が3こ。 「なに?」 「チョコレート。めっちゃ美味しくて、お気に入りなの。食べてみて?」 「わー、ありがとう。すごいおっきいね」 「いっぺんに口に入れたら膨らむよ。あ、優月の口に入ったとこ、写メしたい」 「何それ、やだよ」  想像したら可笑しくて、首を振ると、美咲も笑う。 「味が全部違うから、どれが美味しかったか今度聞かせてねー」 「うん、ありがと。デート頑張ってねー」 「うん」  手を振って、美咲と別れる。  さらさら長い髪の毛を揺らして歩き去って行く美咲を見送ってから、オレも2限の教室に向かった。    

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