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第330話◇
「玲央、今日はここで食べるの?」
「あぁ、勇紀がここが良いって」
「勇紀は?」
「今トイレ行った」
そっか、と頷きながら、見上げた玲央に、胸が弾む。
……居られる限り、ずーっと一緒に居る気がするのに。
少し離れてから玲央に会うと、すっごく気持ちが弾んでしまう。
オレって、本当に玲央が大好きすぎるなあ……。
なんて思っていたら。
「なんか優月めっちゃ嬉しそう」
「ほんと」
何となく周りにいた皆に、クスクス笑われた瞬間。
――――……!!!
皆、多分、何の気無しに、オレの事を見た感想をそのまんま言っただけなんだろうとは、思うんだけど。
あ、オレ、そんなに嬉しそうな顔してるんだと、認識させられたというか。
つまり。
もう、一瞬にして、真っ赤になった、のだと思う。
「なになに、優月、ゆでだこすぎるけど」
「耳まで真っ赤じゃん」
「な、なんでも、な――――……」
何でもない訳ない態度で、とりあえずなんでもないを言おうとして。
流石にオレが真っ赤すぎるからか、ちょっとびっくりしてた顔の玲央が、何かを言おうとした瞬間。
「ゆーづーきーーーーー!!!」
突然現れた何かに、抱き締められた。
抱き締められてから、声も含めて、勇紀だとは気づいたけど、あまりに突然。
「ぅ、わっ」
「優月、会いたかった――――!!」
「ゆ、ぅき……」
じたばたしてると、これは長そうだなと思ったらしく、皆は笑いながら、「先行ってるー」と言って、食事を買いに行ってくれた。
――――……助かった、勇紀、ありがと……。
思った瞬間。
「……まあいいタイミングだったけど。 そろそろ離れろ」
玲央が勇紀を引きはがした。
「お前ちょっと落ち着けよ」
自分の方に勇紀を引き止めて、玲央が苦笑い。
「離せよ、玲央ー」
「ダメだ」
そんな2人の様子に、ぷ、と笑ってしまう。
さっき真っ赤になったのは、勇紀を見てたら落ち着いた。
「大丈夫か? もう、トイレにでもひっぱってこうかと思ったけど……。勇紀来て良かったな」
「ごめん……」
「いいけど」
玲央はクスクス笑う。
「――――……もー離せよー、玲央ー!」
勇紀が玲央の手を振りほどいた、と思ったら。
また、むぎゅ、と勇紀に抱き締められてしまった。
「はー。玲央から聞いたよ。……よかったね、優月」
不意にそんな風に言われて。
「――――……」
何だか突然。
――――……急に、じわ、と涙が滲んでしまった。
、
もうなんか。
感情の上下が激しすぎて、ついていけない。
玲央も、勇紀を引きはがしは、しなくて。
少しの間だったけど。
――――……食堂入ったすぐの、メニューの前で。続々と人が入ってくる時間に、オレは勇紀と抱き合ってしまった。
その時。
「おーい……入口で、何してんのお前ら」
「優月の相手、勇紀だし。違うだろ相手が」
颯也と甲斐の、笑い声が後ろから響いた。
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