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第340話◇

 コンビニから急いで出て来て、いつもの所に向かう途中に、クロを見つけた。抱っこして、いつもの芝生に座って、クロにおやつをあげる。 「美味しい? クロ」  美味しそうに食べてるクロに話しかけながらおやつをあげて。  ふと思い出した。 「……次行く時がちょっと怖い」 「ん? ……ああ、コンビニか」  オレのセリフに一瞬不思議そうにした後、すぐに可笑しそうに笑う。 「もー、笑い事じゃないよ、しかもはっきり言ってもないしさ」 「もう分かっただろ、あれで」 「そうだけど、仲良しとしか言ってないじゃん?」 「まあ。そういえばそうか」 「絶対すっごい聞かれる……玲央、次も一緒に行こうね?」  クロをナデナデしながらそう聞くと、オレを見つめて玲央は、クスクス笑った。 「いいよ」  ちょっとホッとする。  オレだけだと、もう絶対、狼狽えて終わってしまう。 「お茶飲むか?」 「ありがと」  麦茶を渡されて、一口飲んだところで、思い出した。  よしよし、とクロを撫でながら、 「玲央、チョコ食べたい?」 「チョコ?」 「うん、美咲がくれたの。すごいおっきいチョコ。美味しいって」  鞄をがさごそ探して、美咲からもらったチョコを3こ、取り出す。 「ん」 「どれが良い? 味が違うんだって。感想聞かせてねって、言ってた」 「どれでも――――……じゃあ赤いのは?」 「んー……」  赤い包み紙のチョコを見ると、ミルクと書いてあった。 「これ、ミルクだって。はい」  玲央の手に、ころん、と赤い包み紙のチョコを渡す。 「美咲、チョコ好きだからさ、美咲が美味しいって言うなら、ほんとに……」  話しながら、ふと、玲央の顔を見ると。  ぱく、とチョコを口に入れた玲央のほっぺが、ぷくっとして、可愛い。 「あは、可愛いね、玲央」  でっぱってる部分を、つん、と指先でつついて、ふふ、と笑ってしまう。  これかー、美咲がオレの口に入れるとこ見たいとか言ったの。  玲央も可愛くなっちゃった。  クスクス笑っていたら。  黙っていた玲央に、つついた指先を取られて、そのまま、手首をぐい、と引かれた。 「え?」  びっくりしてる間に、玲央の腕の中に居て。  次の瞬間には、唇が、重なってきていた。 「んっ……??」  片手は繫がれたまま。  顎を片手で押さえられて、一気に深く、キスされる。 「……んン……っ?……」  玲央の舌が、絡む。  チョコが、めちゃくちゃ、甘くて、   甘い香りと、激しいキスに、頭、くらくら、する。 「――――……ん……っふ……?……」  ゆっくり、唇が離れて、すり、と頬が撫ぜられる。  ゆっくりゆっくり、瞳を開いたら。   「――――……美味しかった?……優月?」  ふ、と瞳が優しく緩んで、クス、と笑われて。  そんな風に、囁かれて。ちゅ、とまたキスされる。   「……え?」  はぁ、と吐いた息が、熱い。すると、玲央は、ふ、と笑って。 「…どうだった? ミルク」  と聞いてきた。 「……え?」 「チョコ。美味しかった?」  やっと、質問の意味が分かった。 「……っ……味なんて、分かんない――――……」 「そう? しただろ、チョコの味」 「し、した、けど……」  玲央が、ぺろ、と自分の唇を舐めて。 「確かにうまいかも。このチョコ」  そう言いながら、オレがまだ手に握り締めていたチョコに、ふ、と気付くと。 「優月は? どっち食べんの?」 「……キャラメル……」 「金の方?」 「ん……」  なんだかまだキスしてしまいそうな位近くで、玲央が楽しそうに笑う。  白い包み紙のをオレの手から取って、オレの鞄にぽん、としまうと。 「優月、そっち食べて。オレもちょっともらう」 「――――……な、何する……」 「お前の口からちょうだい」 「……っなんか恥ずかしくて、無理……玲央、食べていいよ。あげるから」  恥ずかしすぎてそう言うと、玲央はクスッと笑った。 「なんで? いつもキスしてるだろ。何が恥ずかしいンだよ」 「食べ物、間に入れて食べさせるって……っ」  真っ赤になってるオレを見て、玲央はますます面白そうに、クスクス笑って。 「何がヤなの?」 「……っ何がって……っ?」  何がも何も。嫌じゃないけど。  ……なんか、めちゃくちゃ、恥ずかしいんだもん……っ。  むり、と、ぷるぷる首を振っていると。 「じゃあ、チョコちょうだい」 「え?」 「食べさせて」 「……ん」  何だか。見られてるだけで、ドキドキしてしまう。  だってこれ、玲央の口に、入れたら、きっと。 「――――……」  玲央の口に、チョコをそっと入れると。  玲央が、口に入れられたチョコを、歯で、割る。   「――――……ん?」  ふ、と笑んだ唇の奥で、そんな声を出しながら。  とんとん、と唇に触れられて。  そのまま、自然と、口を開けてしまうのは。何でなんだろう。  そっと開けた唇に玲央の唇が触れて。  甘い甘い固まりが、口の中に、入ってきた。 「……ン、ふ……」  舌の間で、溶けて。  甘い香りが、また、抜けてく。 「――――……っ……ふ…………ンっ」  息が、ちゃんと出来ない。  頭が朦朧として――――……。 「……んんっ……」  舌が噛まれて、びく、と体が震えた。  自分の反応に驚いて、うっすら瞳を開いたら。  玲央の視線とぶつかって。  ――――……心臓が、破裂、しそうなんだけど……。  激しすぎる鼓動に、見つめ合っていられなくて、ぎゅ、と瞳を閉じたら。  キスが少し外れて、ふ、と笑んだ気配がして。  最後にもう一度、ちゅ、と唇にキスして。ゆっくり、離れる。 「――――……どっち?」 「……え……?」  ゆっくりゆっくりと瞳を開ける。  まっすぐ見つめ合ったら、また、優しく瞳が緩んだ。   「さっきのとどっちが美味しかった?」  すりすりと、親指で頬を撫でられて、くす、と笑われる。 「――――……っわ、かんない……」  すっかり涙目で、視界がぼやけてて。  もう。全身、ポワポワする。  クスクス笑う玲央に、よしよし、と撫でられる。 「……ほんと可愛いな、優月」 「……っ」 「オレ、キャラメルのが好きかなあ。 優月は?」 「……分かん、ない……」  クスクス笑う玲央。 「あのチョコ、駅ビルん中に入ってたような気がする。今度買ってやるよ」  ちゅ、とキスされる。  頭を撫でられながら、少し離してくれる。  ……人。  居なかったよね……。  少し顔を上げて、辺りを見回してから、はー、と息を付いた。  隣に座ってたクロを撫でる。   「……玲央、の……キスが」 「ん?」 「……甘すぎて…… チョコの味の違いは分かんなかった……」  クロを膝に乗せて、よしよししながら、そう言って。  はーもう……とため息をついてると。  ぐい、と引き寄せられてしまう。 「え?」 「――――……せっかく離してやったのに……」  玲央まで何故かため息を付きながら、オレの肩を掴んで。  ぐい、とひいて。  またキスされる。  遠くで。  鐘が、鳴りだして――――……。  しばらくして、玲央が名残惜しそうに、唇を離した。 「……続き、夜する」    なんて囁くから。ただでさえ、もう、玲央の腕の中でくったりしてたのに。  ますます、顔は熱くなって。  ……だめだ、これ、もう。  熱い頬を手で覆って。  めちゃくちゃ大きなため息をついたら。  玲央に、めちゃくちゃ面白そうに、笑われた。 後書き♡♡ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ プロット書いてた頃から、このシーンだけ結構出来てて。 どこに入れようかなとずっと思ってたシーンです(*´ω`) 私なりには、精一杯の甘々でした…(*'ω'*)♡ by悠里

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