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第342話◇

 3人が先に席に行って、少し2人で話した。  コンビニに行ってクロのおやつを買いたいという優月をポンポンと撫でていると。なんか、抱き締めてほしそうな顔で、じっと見つめてくる。  ああもう。本当に――――……。  何でこんなに可愛いかなぁ……。 「……部室で、抱き締めさせて」  こそ、と囁くと。すぐ、赤くなる。  名残惜しいけど、こんな満足に触れもしない所に居るよりは、早く食べて2人になりたいし。  仕方なく、優月の髪をクシャクシャと撫でて、そっとその頭から手を離して、別れた。  …………つか。  こんなに、誰かに。……しかも、つい朝までずっと一緒居た奴に。  偶然会えたからって。  なんでこんなに嬉しいんだか。  優月に学校の中で偶然会うたびに、心が弾む気がする。  顔に出ないだけで、多分、優月と同じかそれ以上に、オレの方が嬉しいし浮かれてると思ってしまう位で。  食事を買って、3人が座っていた所に座ると。 「……なあ玲央、今朝も一緒だったんだよな?」  甲斐が言う。 「今朝っつーか……夜もずっと一緒だったけど」  答えると。 「……つか、先週から、ほぼずっと一緒にいるんだよな?」 「あぁ、そう、だな。まあ日中は色々あるから別行動多いけど」 「とか言っても、夜ずっと一緒だろ?」  甲斐が続けて聞いてくる。 「そーだな」  頷きながら、何が言いたいんだよ、と聞くと。 「何なの、久しぶりに会えたから離れられません、的な感じがすごいんだけど」  甲斐の言葉に、颯也と勇紀が、ぷ、と吹き出した。 「――――……そう見えるか?」 「見えるわ」 「まあ……ほんとは離れたくねーんだけど。そうもいかないしな」  もー別にいいか、と思って、思うまんまに言ったら。  3人が、はー、とため息をつきつき。 「だめだ、もうこうなったんだって、分かってはきたんだけど――――……」 「そう簡単に、今までの玲央が、頭から消えないよな……」 「オレは大分慣れてきたけど……でもなんか、甘々すぎて、ため息がでるわー」  甲斐、颯也、勇紀。  好きな事言ってるが、これに返しても、また別の言葉が飛んでくるだけだし。  無視して、食べ続けてると。 「何で急いで食べてんの?」  と勇紀に聞かれる。 「この後優月と、猫んとこ行くから」  そう答えた瞬間。 「あーはいはいはいはいはいはい」  何回、はいって言うんだ。  と勇紀に対して思うが、まあもう、そこもスルー。  ぷ、と吹き出す颯也。  ……なんか颯也、最近ほんと、こういう笑い方、するよな。  吹き出すとか、あんま無い奴だった気がするんだけど。 「――――……オレ、お前見てると、最近笑えてくる」  そんな言葉に、颯也も、自分でもそう思ってる訳か、と。  こっちこそ、ちょっと笑えるし。 「まあ――――……楽しそ―な玲央が見れるのは、楽しいけどなぁ?」  甲斐が何やらしみじみ言って。すると、颯也も勇紀も、笑って頷きながら。 「そーだよ、今までって、何やってても冷めてるっぽい顔しててさ」 「何かを好きで欲しがってるとか、見た事ないもんな」  勇紀と颯也もそう続けてる。   甲斐は、にや、と笑って。 「まあ――――……イジるとこ多すぎて、おもしれーしな」  クスクス笑う甲斐に、は?と視線を向けた瞬間、今度は勇紀が。 「あーそうだった!!」  と騒ぎ出す。うるせーぞ、の視線は、完全にスルーされる。 「聞いてよ、さっき1限の時さー、優月になら、甘えてほしいとか言い出してさー。優月が甘えないからどーのって愚痴るんだよー、信じられるー?? 大体さー、今までは玲央がさあ」  あーそれ……言うなっつったのに。  オレの視線は全く物ともしないでと延々話し続ける勇紀に、ため息。  ――――……とりあえず。飯食お。  オレは、スルーしまくりで、食事を進めた。

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