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第343話◇

 完全に弄りモードに入ってる3人をスルーして食事を終えて、優月の方を見ると、ちょうどこっちを見た所だった。  終わったか? と、口だけで言うと、うんうん、と離れた所で頷いている。  がたん、と立ち上がって、「じゃあまたな」と言ってから。 「あ、今からちょっと部室寄って優月の荷物取りに行くから」 「んー」 「……しばらく来んなよ」  オレがそう言うと、皆、「は?」とオレを見上げて。  その顔がちょっと笑えたので、にや、と笑ってしまうと。 「玲央さー……オレの優月、学校でまで汚さないで」  勇紀が苦笑い。 「つか、お前のじゃねーし」  ムッとして言うと。 「さすがにヤんなよ」  甲斐が笑いながら言ってくる。 「優月は猫触りたいから。……時間ねーから、やんねーよ」 「あーはいはい」 「じゃーねー玲央ー」  若干呆れ顔の3人と別れて、優月の所にたどり着く。 「優月、行けるか?」  そう言うと、 慌ててるので急がないように言って、優月の準備を待っていると。周りの友達が優月に聞いた。 「どこ行くの? 優月」 「猫にエサあげに」 「ああ、いつものか」 「……一緒に行くの?」  その間と言い方に、オレが優月と行くのが、不思議なのかな。と、察する。  まあ……オレと優月って、普通にみたら接点とか、まるで無さそうだもんな。  ふーん、と不思議そうな顔をした周りの、1人がオレを見上げながら。 「猫、好きなの?」  と聞いてきた。  ふと、見つめ返して。  その一瞬で。何だか周り中の視線が集まってる。  ……それと、ともに。優月も、なんだか固まって、オレを見てる。  なんだか、優月までもが固まってるのが、なんだかおかしくなってきて。  ふ、と笑んでしまいながら。 「あぁ。嫌いじゃないし――――…… 優月が、クロを好きだしな」  興味津々な周りへのからかいと――――……固まってる優月が可愛くて。  そう言ったら。  思っていた以上に、場が、しーん、と静まり返った。  ――――……お。なんだ、予想以上の反応だな。  面白ぇな……。 ま、いっか。   「ほら行くぞ、優月」  優月に話しかけると。  ものすごく固まってた優月がはっとした顔をして。 「あ、う、ん」  トレイを持って。固まってる周りに、またね、と挨拶して。周りも、短く答えている。  ――――……はは。  面白ぇ。  優月が猫を好きだから、オレも行く、てことは。  オレは、「猫を好きな優月が好きだからだ」って、遠回しに伝えたんだけど……伝わったのかな。固まってたから伝わったか?  狭い食堂は優月の前を歩いて進み、トレイの返却口にたどり着いて、トレイを置いてから優月を振り返った。  ……うわ。――――……優月、赤い。  苦笑いが浮かんでしまう。 「……優月、顔、赤――――……何で? さっきの?」 「――――……だって……」  まあ少なくとも、優月には伝わったってことか。  はは。かわいーな。  真っ赤……。 「とにかく、歩こ」  優月の手を引いて、トレイの返却口から離れると、そのまま隣に引き寄せる。そこで、仕方なく手を離した。 「……なんで、あの言い方、したの?」  優月がオレを見上げてくる。 「んー。猫が大好きっつーよりは……優月の事が好きで一緒に行くから、そう言ったんだけど」 「――――……」 「まずかったか?」  黙る優月に少しだけ心配になって聞くと。 「……まずくはない。……ていうか――――……嬉しいけど」 「嬉しいのか」  可愛くて、ぷ、と笑ってしまう。 「……でもちょっと……ていうか、すごく恥ずかしいかも」 「どうして?」 「……だって玲央が、オレの事、好き、みたいで」 「――――……みたいじゃねえけど」  ものすごく、好きだけど。  そんな事を思って、笑ってしまいながら言うと。  優月は、ふ、と照れくさそうな、嬉しそうな顔をする。  ――――……あ、もーむり。  早く、触りたい。   「……部室、いこ、早く」  優月の腕を引いて、部室迄連れて行く。  中に優月を入れて、すぐ鍵を閉めた。 「――――……優月……」  ぎゅーと、抱き締めた。  あーもう。なんなんだ、これ。  癒される、つーか。――――……興奮するっつーか。  どっちもって。  可愛くてしょうがないし。  ――――……乱したくて、しょうがない。   「――――……ずっと、こうしてたいとかさー……」 「……玲央……」 「すげー思うんだけど。何だ、これ……」  想いの、ほんのほんの一部を、優月に言ったら。  ぎゅ、としがみついてきて。  ――――……愛しくてたまんなくなる。

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