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第357話◇

 残ってた生徒さんも、片付け始めて。  ――――……こっちのやりとりに、気が散っちゃったのかもしれないけど。  先生がそこで少し話しに行ってる。  オレも、自分の絵の道具を片付けることにした。  ………ちょっと離れて落ち着きたかったし。  玲央と希生さんが、なんか少しぽつぽつとしゃべってるのを、見て。  ……おじいちゃん。  玲央の。  ――――……玲央が似てるって言ってた、カッコいいおじいちゃん、だよね。オレが写真見せてって言ってた……。  どんな所で人って繋がってるのか……  わかんないんだなあ……。蒼くんに言ったら、びっくりするだろうなあ。  結局、他の生徒さん達は帰ってしまって、4人になった。 「優月、大丈夫?」  久先生がオレの所に来て、クスクス笑ってる。 「あ、なんか……すごいびっくり、して」 「そうだよねえ。 スケッチブックで殴るとか、ありえないよ、希生」  あ。  ……そっちじゃないんだけど。  そっちはまあびっくりしたけど。  ――――……その後の、知り合いっぽいやり取りに、びっくりして。  おじいちゃん、ていうことに、死ぬほどびっくりしただけで。 「つか、人の頭殴んなっつーの。しかも後ろからいきなりとか」  荷物を片付けて、久先生と一緒に、玲央と希生さんの近くに戻る。  玲央のそんな言葉が聞こえる。  苦笑してしまうと。 「悪い、久。はい、返す」  希生さんが、スケッチブックを久先生に差し出している。 「……全く。返すじゃないよ」  受け取りながら先生が苦笑い。 「別に全力で殴ってないよ」 「……そういう問題じゃないよ」  さらに苦笑い。  まあ。  全力で殴ってたらあんな軽い音な訳が無いから、皆分かってるんだけど。 「いつ以来だ、玲央の顔見るの」 「んー。正月、かな」  ……うん。まあ。5月だけど。  ――――……玲央。長い春休みはおじいちゃんのとこは行かないのかな……。  ……来てほしかった感じの言い方だけど。  心の中だけで思いながら見守っていると。  希生さんが、オレをちらっと見た。 「優月くんが可愛い感じで迎えに行った相手がどうして玲央なんだか」 「――――……」  可愛い感じ……。  うう。恥ずかしいな。いやでも、赤くなるな。なるな。  困っていると。 「優月、大学が一緒なんだよ」  多分、玲央が助けてくれたんだと、思う。  希生さんは、ふーん、と笑って。 「――――……それにしてもな……」 「……何?」  希生さんは、玲央とオレを見比べて。 「お前のチャラい友達たちと、タイプが違いすぎて」 「チャラく――――……はあるけど」  玲央が反論しようとした後……苦笑いしてる。    勇紀達の事なのかな。   その他の友達のことも知ってるのかな?  まあでも。なんか。玲央の友達、派手な人が多い気がするもんね。きっと、そういう人しか、玲央の側になかなか行けないんじゃないかと、予想してしまうけど。カッコ良すぎて、派手過ぎて、絶対、気後れしちゃうもんね。  …………ていうか、そう言っちゃうと、確かに、オレってば、全然玲央とタイプ合わないんだけど。 「大丈夫? 玲央と居て、疲れてない?」  希生さんにそんな風に聞かれて、ぷるぷると首を振る。 「そ、んなこと無いです」 「ふうん……?」  ああ、なんか。  ――――……玲央に似てるって、分かる気がする。  こういう聞き方と。  なんか、じっと、見つめてくる感じとか。  この人もモテたんだろうなぁ、なんて思っていたら。 「生憎、超仲いいから。変な風に聞くなよな、じーちゃん」 「――――……ふうん。超仲いいか」  玲央の言葉に、希生さんはふ、と笑って。 「こっちも、意外だって言われ続けてたろ」  久先生が急に、そんな風に言って、笑う。 「ああ。久とオレがだよね。……そういや、確かに言われてたな」 「玲央くん、若い頃の希生にそっくりだね」 「はー? こんなだったか?」 「そっくり」  久先生は懐かしそうに笑う。 「そう言えば、優月くんは、久に似てるかも。血のつながりないのに不思議だな?」 「まあ。……孫みたいに思ってるのは、波長が似てるからかもね。蒼も可愛がってるしなぁ……」  久先生と希生さんが、目の前で楽しそうに話を続ける。  オレなんて血のつながりもないのに、似てるって言われて。  目の前の、2人と、オレ達が、似てるの?と思うと。  ――――……まあ玲央は思い切り似てるし。  確かにオレも、久先生とは、波長が合うと思うし。  ……似てるかも。  ――――……タイプ、違っても。  目の前の2人みたいに、ずっと仲良くできたりするのかなぁ。とか。  思ってしまったら。何だか、ちょっと嬉しくなったりする。  まあ、オレ達の関係と、先生達の関係は、全然違うけど。  ちら、と玲央を見上げると。  ん? と笑う玲央。  ううん、と首を振って。  楽しそうな目の前の2人に視線を戻した。  

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