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第362話■番外編■お正月

■前ページに引き続き、 本編には関係のない番外編、としてお読みください♡♡ このページは「お正月編」です♡ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 【side*玲央】  お互いの実家には帰った方がいいって事になって、31日から2日までは、それぞれの実家に帰る事になった。  神月の屋敷には、色んな親戚が集まり、挨拶やら、食事会やら、まあもう、ものすごい人数が集まった。  あっという間に時は過ぎ、2日の昼食会を終えてから、皆の引き止めをうまくスルーして、屋敷を出た。  電車に乗って、いつもの駅へ。  基本、オレも優月も家では人と過ごすので、電話はやめようという事になり、少し空いた時に、連絡を入れてやり取りする位。  2晩優月と離れた。  それだけなのに。何だかすごく、離れてる気がする。  約束したのは、普段使う駅の南口に16時。  一緒に神社にお参りすることになっている。  15時半に駅についた。  あと30分か……。早く着きすぎた。  ――――……よくよく考えると。今までのオレって、待たせる事ばっかりで、待つことって、あんまりしてない。ギリギリにつけばいいやと思ってるから、多少の遅刻はよくあったし。……待ってるとかしなかった。まあ、ほんと、自己中な感じだったと思うけど。  優月と付き合うようになってから、変わったとよく言われるけど。自分の雰囲気とかは、自分ではよく分からない。  ただ。  ――――……こんな30分も早く着くとか。これに関しては、はっきり事柄として分かるから、変わったかもなと思わざるを得ない。  30分、駅前で待つのは寒すぎるし――――……近くでコーヒーでも……と、見回した所で。  改札から出てきた優月とばったり会った。 「玲央?」 「優月……」 「どうしたの?」  走ってきて、笑顔で、オレの目の前に立つ。 「どうしたのって何?」 「え、だって。30分も前についちゃったからさ、どこで待とうかなって思ってたから」 「何でお前、こんなに早いの?」 「え、だって――――……早く、玲央に会いたくて。時間は分かってたけど……なんか早く来ちゃった」  照れたみたいな顔で微笑んでそう言って、オレを見上げてる優月に。  何だか愛しくてたまらなくなって。 「――――……」  ちゅ、とキスした。 「……わ。……玲央……」  びっくりした顔をして。  でも、すぐに、ふわりと笑う。  多分、ほとんど駅に人が居ないから。  まわりを気にするよりも、キスしたことが嬉しかったみたいで。 「――――……2日ぶりだね」  嬉しそうに笑うのが、本当に可愛くて。 「オレもお前に会いたくて、早く出てきた」  素直に、言葉が出てきた。 「うん」  ニコニコしてる無邪気な笑顔が可愛くてたまらない。 「行こう、優月」  その手を取って、繫いで歩きだす。  良く手を繋いで歩いてるので、もう最近は、手を繋いでも何も言わなくなった。きゅ、と握り返してくるのが可愛いなと、毎回想う。 「実家、もちろん、楽しかったんだけどさ……玲央が居なくて、寂しかった」 「――――……ん」 「昼間はわいわいやってるから、そこまで寂しいとかしゃなくて慌ただしく過ぎてくんだけど」 「夜、寂しかった?」 「……うん」  見下ろして聞くと、優月が頷く。 「――――……夜は1人で静かだったから……一番玲央の事、思い出してた」  優月が言ってるのを聞きながら、信号で止まる。  この道も人も車も少ないし、信号で止まってる歩行者もオレたち以外には居ない。 「優月」  呼びかけると、すぐに振り仰いでオレを見る。  その唇に、またキスして。 「早く、初詣行って、帰ろ。――――……くっついて、めちゃくちゃ抱きたい」 「――――……っ」  あからさまに誘うとそうなるのは分かってるんだけど。  真っ赤になって、ん、と頷いて、そのまま俯く。  それ以上は言葉が出てこないけれど。  きゅ、と指を握られる。 「……優月、何をお願いするか決まってる?」 「ん。大体は決まってるんだけど……玲央は?」 「オレも大体決まってる」  オレがそう言うと、優月は、そっかと頷いて。  それから、少し経って、クスクス笑って、オレを見上げた。 「……でもオレの願いは、自分で叶えるものな気がしてきたかも」 「――――……それ言ったら、オレもそうだな」 「やっぱり神頼みは今まで通り、健康面にしようかなぁ……」 「今までそうなのか?」 「うん。皆、元気が一番かなって」 「じゃあそうしたら」 「……うん。そうする」  頷いて、優月がまた、ふふ、と笑った。   「……じゃあ、自分で叶える方は何?」  オレが聞くと、優月は少し黙って。  じっとオレを見上げてから。 「――――……玲央とこのまま一緒に居たいなーって」  そんな風に言う。  まっすぐだなー……優月。  思わず、くす、と笑ってしまう。 「それは、オレが叶えてやるよ」  思うままにそう言ったら。  優月は、数秒黙って、オレを見つめて。  それから、めちゃくちゃ嬉しそうに笑った。 「じゃあ、玲央のも、オレが叶えられることがあれば言って?」 「――――……んー……じゃあ」 「うん?」  楽しそうな笑顔でオレを見上げてる優月に。  もう、オレも笑顔しか、出てこないし――――……。  こんな風に笑ってンの、実家に居た親戚とかに見られたら、二度見三度見されそう……。とか、思いながら。 「オレの側から離れないこと」 「――――……」 「叶えてくれる?」 「――――……うん」  一度頷いた後。  また、うんうん、と頷いてる。 「絶対叶える」  ふ、と笑って、オレを見上げてる。  そこで、ちょうど、神社の入り口に立つ。  2日の午後。  小さな神社はそんなに人も居なくて静か。  繋いでいた手は解いて、軽く礼をして中に入る。  手水舎の水で両手を清めて、口をすすいで、進む。  数人並んでいたので、一番後ろに並んで、ふ、と見つめ合う。 「オレ、去年のお正月は、玲央の事、知らなかったんだよね」 「……ん」 「――――……良かった、知れて」 「そーだな……」  多分、優月と会ってなかったら。  ――――……オレ、多分、前のまま、だったろうな……。 「玲央が居てくれて、嬉しい」 「――――……」  抱き締めてしまいたいけど。  家までは、少し我慢。……何となく。神社だし。キスしたりはやめとこう。    少しずつ前に進みながら、何気ない会話をしながら。  新年、初デートが神社なのも、なんかいいよなぁと。  やっぱり、今までのオレっぽくはない事を、すごく思っていた。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 【side*優月】  年末年始は、お互い実家に。  いつもいつも玲央と一緒に居るから、すごく隣が空いてる気がした。  日中は親戚の子達も居るし、家族も皆居るし、わいわい楽しかったけど。ふとしたいつも見上げる顔が隣に居ないていうのが、ちょっと切なくて。  ――――……こんな風に思うのは、生まれて初めてだった。  幸せな事なんだと思うけど、大体いつも周りには優しい人達が多くて。  小中学までは智也も美咲も居たし、2人とクラスが離れても、クラスに仲良くしてくれる友達は居て。どんくさかったと思うオレを、助けてくれる友達も常に居たような気がする。  高校入って、智也と美咲が居なくなって、最初少し不安だったけど、関わる人には優しい友達が多くて。ずっと楽しくて穏やかだった気がする。    好きな女の子も居たけど、大体仲良くなっちゃって、多分男としても見られないし、オレもだんだん完全に友達になっちゃって。強い気持ちで好きだったことは、無かった気がする。これは、皆に言われるし、そうだったかも、と思う。  学校が変わるとか、忙しくなっちゃうとかで、誰かと離れても、また別の誰かが居て。だから、強く誰かに居てほしいとか、あんまり思わずに来た。  離れた友達と、ふと連絡して遊んだりはあったけど、今日も明日も明後日も、同じ人にずっと一緒に居てほしいって。そんな風に思う事は、無かった。    だから。たった2日、玲央と離れただけで、切ないとか。……違う、1日目から、隣が寂しいって、思ってたとか。おかしいのかなって、思って。  なんか……もう二十歳になるっていうのに。  1人が寂しい、なんて。  こんなの、玲央には言わないでおこうって、思った。  たった2日も、耐えられないとか。  なんか、ちょっと情けないし。言うの恥ずかしいなって、思って。  だから、玲央と連絡とる時も、こんな人に会ったとか、こういう事をしてて楽しいとか、そんな連絡だけにして、会いたいとかは入れなかった。  でも、玲央との待ち合わせ時間が近くなるにつれて、もうじっとしていられなくなって、帰る支度を始めた。  家族は夕飯位食べて行けばと言うし、双子たちも寂しそうだったんだけど。  また来るね、と言って、家を出た。  玲央に会える場所に近付くほどに、心が弾んで。  空いてる電車で鼻歌を歌ってしまいそうな位。浮かれてて。  まだ待ち合せまで、30分以上ある。そう思いながらも、嬉しくて、軽い足取りで電車を降りた。階段を駆け上って、改札を出ようとした時。  めちゃくちゃ会いたかった人が、目の前に現れた。  思わず駆け寄って、どうしたの?って聞いた。  ああ、オレ、今、すっごい笑ってると思う。  だって、すごい、嬉しい。 「どうしたのって何?」  玲央がふ、と笑って、聞いてくる。  会いたかったから早く来た、て自然と漏れて。  そしたら。キスされて。2日ぶりの玲央に、めちゃくちゃ喜んでいたら。 「オレもお前に会いたくて、早く出てきた」  そんな風に言ってくれる玲央が、もう、嬉しすぎて。  もう、心臓も気持ちも、これ以上ないって位、弾んでる。  結局、実家に居る時、玲央が居なくて寂しかったことも白状しちゃったし。  玲央はもしかしたら実家で楽しんでるかもしれないし、それなのに寂しいとか入れたら、めんどくさいかなあとも思ったから言えなかったんだけど……。  会ってしまえば、玲央の顔が優しすぎるし。繋いでる手も優しくて。  何を言っても大丈夫そうな気がしてしまった。  夜寂しかった?なんて聞かれて、頷いたら。  早く家に帰って、しよう――――……みたいな事とか。  照れるけど。  ――――……嬉しいし。  手を繋いで神社まで行って、皆の健康を神頼みして、それぞれお守りを買って、プレゼントしあった。大事にしようねって事で、交換。  そして、マンションの下のお店でご飯を食べてから、家に帰った。  シャワーを浴びて、ベッドに誘われて。  今日の玲央は。  ――――……なんか全部ゆっくりで。  キスもずっと優しくて、ゆっくりゆっくり触れられて。  少しずつ気持ちよくさせられて。  体、繋がっても、なんかやたらゆっくりで。  ――――……ちょっと……ウズウズする位。 「……玲央……?」  は、と息を付きながら、玲央を見上げたら。  視線が絡んで。 「――――……はー。なんか……」 「う、ん?」 「可愛くて死にそうなんだけど……」 「――――……っ」  こういうことしてる玲央って。  ただでさえ、めちゃくちゃ色っぽいのに。  ……なんか、すこし眉を顰めて、そんな風に言われると。  ――――……胸が痛すぎて、こっちが、死にそう……。 「……ずっと繋がってたいかも……」 「――――……」  そんな風に言って、ますますオレの言葉を奪う玲央。  もう、ただ、ぎゅとしがみついて。 「……うん」  かろうじて、頷く。 「……優月――――……」  優しく、またキスされる。  名前呼ばれるだけで。唇が触れるだけで。  愛しすぎて、死にそうなんだけど、ほんとに、どうしたら……。   「……だいすき……」  そう言うと。  黙った玲央に、数秒見つめられて。 「――――……今はなし、それ……マジで死にそう」  頭をぎゅう、と抱き締められて。はー、と息を付いてる。  くっついてる玲央の体が、やたら熱くて。その熱さが気持ち良くて、背中に腕を回して、抱き付く。  抱き付いて密着したら。  ほんとに愛しすぎて、きゅ、と胸が締め付けられて。 「――――……ずっとお前ん中、居たい。良い?」 「……うー……むり……」 「無理?」  くす、と笑われる。 「……居てほしいけど――――…… すっ、ごく、ゾクゾクする……」  うー。  なんか、ゆっくりが、優しくて、良いんだけど。 「……玲央、なんか……もう――――……」  ゾクゾクが止められなくて、そう言ったら。  悟ってくれた玲央が、はあ、と息をついた。 「――――……あーごめん。もう手加減できないかも……」  うん、て言うよりも早く。  深く、突かれて。  あ、と玲央にしがみつく。激しくなって、しがみついた腕もすぐ解けて。  シーツを辿って、握り締めて。  さっきまでゆっくりすぎたのが嘘みたいに。  激しくなって。 めちゃくちゃキスされながら――――……。  いつのまにか落ちて。眠りについた。   ◇ ◇ ◇ ◇ 「――――……」  ふ、と目覚めて。いつも通り玲央の存在を探して、目を閉じたまま手を動かすと。 「……おはよ」  優しい声が聞こえて、目を開けると、玲央の顔が目の前。 「ん。おはよ……」 「ん」  クスクス玲央が笑う。 「……まだ夜中だけど」 「玲央、寝てなかったの?」 「ん。何となく――――……起きるだろうと思ったから」 「待っててくれた?」 「ん」  頷いてくれた玲央に、もぞもぞ動いて抱き付いた。 「玲央」 「ん?」 「…………大好き」  そう言ったら。  玲央が、クスクス笑って。 「あのさー優月」 「ん?」 「抱いてる時にそれ言うのさ」 「え?」 「ヤバいから」 「――――……」 「……どうなっても良いなら、言って良いけど」  玲央はクスクス笑いながら。  何だかものすごく恥ずかしい事を言われてる気がして。顔が、かあっと熱くなる。 「……どうなっても良くは、ないけど……」 「ん?」  笑いを含んだ声で、聞き返されるけど。 「……言っちゃうかも」 「じゃあ覚悟しようなー、優月……」  オレは玲央に抱き付いたままで。  髪の毛にキスしてる玲央に、もうほんと。……ドキドキする。 「まあいっか。――――……可愛いし」  ぎゅ、と抱き締められる。 「……1人で寝んの、広くて良かった?」  笑いを含んだ声で、そんな風に聞かれて。  クスクス笑いながら、首を振る。 「……もう、狭い方が良い」  そう言ったら。脇に入って来た手に、引き上げられて。  ぽふ、と枕に沈められた。  オレの顔の横に手を付いた玲央に。  まっすぐまっすぐ見つめられて。  ふ、と笑まれて。 「――――……ほんと、かわいーな、優月……」  「――――……」  ちゅ、とキスされる。  少し離れて、玲央が苦笑。 「あ。……言ってなかった」 「何を?」  聞き返すと、ふ、と笑んで。 「今年もよろしく、優月」 「あ。そうだ。言ってなかったね」  オレもふふ、と笑って。 「今年もいっぱい、よろしくね、玲央」 「ああ」  じーと、見つめ合って。  ふ、と笑んで、キスしあう。  今年も。その先もずっと、玲央と居れるように。  色々、がんばろっと。  触れ合うだけのキスを何度も重ねながら。  自然と笑んでいた。     ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 終了(⌒∇⌒)♡ これで頭に浮かんでた番外編、全部終わりです♡ 次ページから、本編に戻ります(*'ω'*)♡♡

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