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第366話◇
希生さんの隣で、久先生がクスッと笑った。
「……いつ気づいたの?」
久先生の言葉に。
「――――……最初からかな?」
と希生さんが少しふざけた感じで言う。
「さすがにそれは無くねえ?」
もう開き直ったのか、玲央は、もういつも通りで、そう返す。
「……お前が全然違うんだよ、玲央」
「――――……」
「まあ確信は、ライブと2次会って単語? 優月くん、言ってたもんな。個展の手伝いの後、好きな人のライブに行くって。蒼がそれを見に行くって。その話をしだした玲央に、優月くんが、あって慌ててるし。久は遮るし。おかしいだろ」
く、と笑う、希生さん。
………鋭すぎる。
それを聞いた玲央が、ああ、と笑う。
「そん時じいちゃんと会ってたのか。 優月がライブ来る前にそんな話してたってこと?」
オレが、うん、と頷くと。
「だからさっき――――……」
玲央がクスクス笑い出した。
「オレが今日、オレの家族には、まだ言わない方がいいとか言ったからだよな。ごめんな?」
「――――……」
なんで謝るんだろう。
別にオレだって、まだ家族に言ってないし。
首を振って、玲央を見つめてると。ふ、と笑って。
「近々行くから。じーちゃんち。……実家の屋敷じゃなくて、隣のじーちゃんち、な」
玲央がまっすぐ希生さんを見て、そうはっきり言った。
希生さんは、ふ、と笑って、頷いてる。
――――……なんか。
そういう笑い方。
ほんと。玲央とそっくり。
カッコイイなあ。
なんて。
多分オレ、少し現実逃避でそんな事を考えている。
久先生にもバレちゃったし。
玲央のおじいちゃんにもバレちゃったし。
特に玲央のおじいちゃん……希生さんにバレて良かったのかな。
そう思って、玲央を見上げると。
「大丈夫。じいちゃん、すげーうるせーけど。多分オレの味方だから」
そんな玲央の言葉に、なんだか、カチンときたのか。
希生さんが、調子に乗るなと言い出して。
「優月くんが可愛い子ていうのと、久のほぼ孫って事で、だからな。お前じゃない」
「はー? じーちゃんの名前引き継いだ、可愛い孫だろ」
「可愛かったの、小さい頃だけだがな?」
「んな訳ねーし。もう将棋つきあわねーぞ」
「……優月くん、将棋は?」
「え。あ。少し?なら。おじいちゃんとさしてたので……」
答えると。
「おじいちゃん、か」
はー、と希生さんがため息。
「思えば、玲央は最初からじーちゃんじーちゃんって。おじいちゃんなんて、可愛い呼び方された事ないな」
「はー? 可愛かったろ、じーちゃんだって」
「ああ、もうお前来なくていいや。優月くんと久だけおいで」
「はー? 絶対行くし」
もうすっかりいつも通り。
でもやっぱり。
可愛い大事な孫に。
男のオレ、とか。……いいのかな。
「――――……希生さん……あの……オレ、男なのは……」
口に出したとこまでは良かったけど、なんて聞いたらいいか分からなくて。
少し黙ってしまったら。 隣で玲央がオレを覗き込んで。ふ、と笑った。
「平気。じーちゃん、知ってるから」
え。
「じゃねーと、さすがに、あれだけのヒントで、結びつかねえし」
そんな玲央の言葉に、希生さんがふ、と笑う。
「玲央が男も大丈夫なのは知ってる。それより、不特定だってのに、ずっといい加減にしろって言ってたからな。孫がやっと選んだ相手だし」
「――――……」
「今度ゆっくり話そう。玲央の小さい頃の話とか、聞きたい?」
「あ。はい」
それはめっちゃ聞きたい。
うんうん、と頷くと。
玲央に腕を取られて、引き寄せられた。
とん、と背中に、玲央の胸。
「それは聞かなくていいし。……絶対優月1人で行かせねえから」
玲央の言葉に、皆、苦笑い。
玲央が触れてる腕が。
なんかあったかい。
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