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第368話◇

 玲央、ほんとカッコいいなあ。  運転も、落ち着いてて。何だか安心して乗ってられる感じ。 「玲央、運転、よくする?」 「ん。ああ、好き」  好き。  そっか。うん、好きなんだろうなーと思う。 「優月は免許持ってる?」 「ううん。取りたかったらお金出してあげる、とは言われてる。母親が出来ないから、何かの時にはお願いするからって。だから、今年の夏休みに合宿みたいなの行こうかなーって思ってたんだけど」  そう言うと、玲央が少し黙ってから。 「――――……合宿じゃなくて、普通のにしたら?」 「……ん?」 「どっか泊りがけって事だろ?」 「合宿だからね……?」 「そういうのってどん位泊まんの?」 「……2週間位……もうちょっとかな?」 「……普通ので。無理。そんなに会えないの」 「――――……」  隣のめちゃくちゃカッコいい人を。  じっと見つめてしまう。  ……まあ全然別に。合宿が絶対と思ってた訳じゃなくて。別にそこまで調べてた訳じゃないんだけど、1回検索した時に田舎の合宿での取得を見かけて。  どうせ夏休み、時間もあるし、思い出作りに見知らぬ人達と田舎のどこかで楽しみながらもいいなあと、ぼんやり思っていただけだから。  全然、普通に教習所に通って取っても良いんだけど……。 「――――……」  まだ先の夏休み。  ――――……玲央、オレと居てくれる気なんだなあ、とか。  そんなのも少し嬉しくなってしまう。  玲央に会って、まだ、10日位なんだよね。  ものすごい濃い感じで、ずーっと一緒に居て。  こんなの分からないって、お互い、多分、いっぱい思いながら。  いっぱい考えて。好きってなって。恋人とかなったけど。  大体、オレは、こんなに好きになるのも、初めてなら。  男の人、ていうのだって、落ち着いて事実として考えれば、やっぱりかなり衝撃ではあるし。  ……恋人とかそういう関係も初めてで。  キスしたり、色んな事が全部玲央が初めてで。  会って10日でここまできて。  まだなんか、夢の中に居るみたいな。そんな感覚もある。  ――――……別に玲央の事、信じてない訳じゃない。  いつもめちゃくちゃ優しくて、まっすぐ見つめて抱き締めてくれる玲央の事、大好きだし。ずっと居たいって、本当に思ってるけど。  やっぱり、会って間もないし。  次の10日が経ったら、また全然違う関係になってるかも。  ……なってないなんて、誰にも言えないし。  ――――……まあ。  オレの好きな気持ちは、そう簡単に変わらないと思うんだけど。  玲央は。  ……今までの玲央と違うって、皆が言うし。  信じてない訳じゃ、ないんだけど。  ……そこの部分は、これから、時を積み重ねる事で、信じていける事だと思ってたりする。  もちろん。玲央大好きだから。  オレの事も好きで居てくれるように、一緒に居たいなとも思ってるけど。    だから、なんか。  まだ2ヶ月も先の夏休みの話をして。    会えないから合宿はやだ、とか言ってくれると。  そこまでは普通に居てくれようとしてるんだなって密かに確認して、嬉しいなと思ってしまう。 「……優月?」  色々、頭の中を整理しながら考えてたら。玲央がオレの名を呼んだ。 「うん?」 「――――……なんか黙ってるから」 「あ。ごめんね。合宿だよね。別にオレどうしても合宿が良かった訳じゃないし……」 「――――……」  前を見たまま。一瞬ちら、と視線を流されて。  伸びてきた手に頭、撫でられた。 「――――……?」 「ごめん。なんか――――……お前がやりたいっつってる事、邪魔するのやなんだけど」 「――――……」 「合宿2週間は……ちょっと嫌だな」 「――――……」  なんか。言い方、可愛くて。  ふ、と微笑んでしまう。  頭にのってる玲央の手を取って下に降ろして、きゅ、と握った。 「玲央が居なかったら行ったかもだけど。……オレも、会えないのやだから。普通の教習所、通うね」  そう言うと。  信号で止まった玲央がこっちを見た。  オレの握ってた手が、不意に動いて、オレのうなじに、かかって。  引き寄せられて、キスされる。  なんか。この上なくカッコイイ人と。  ものすごい、似合うなーと思うカッコいい車で、ドライブしてて。  止まったらキスされるとか。  ――――……玲央って。  漫画とかドラマとか。とにかく何かの主人公みたいだなあ……。  なんて、思いながら、キスが離れるのを、見つめてしまう。 ◇ ◇ ◇ ◇ あとがき。 ◇ ◇ ◇ ◇ 昨日のブログに玲央達の小話がのっております(*'ω'*) くだらないけど(笑)

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