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第371話◇

 ほんとに5秒くらい抱き締められて。  顔を上げさせられて、じっと至近距離から見つめられる。 「……何。寂しいの? ちょっと離れてるから?」 「…………」  クスクス笑われて一瞬頷くのどうしようと思うのだけれど。  ものすごく優しい瞳が目の前にあるので、自然と頷いてしまう。  すると、笑んだ唇に、ちゅ、とキスされた。  オレの頭を撫でてから、玲央は体を運転席に戻した。 「――――……」  あーなんか。  体も気持ちも、ホカホカしてしまった感覚が……。  一瞬でふんわりとめちゃくちゃ満たされた自分に、現金すぎてちょっと呆れていると。  ハンドブレーキを外してから、玲央が、オレの手を取った。 「しばらくまっすぐだから手、つなご」  玲央はそう言って、オレの手を握る。  わー……。  こんなこと、普通にする人、ほんとに居るんだ……。  ていうのが、ぱっと思った感想。  こんな風にカッコよく出来る人は。  そんなに居ないんじゃないかなと思ってしまうんだけど。 「いっつも触ってるもんな、オレ。――――……確かにこの距離に居て、触らないとかいつもは無いかもな」  玲央、クスクス笑ってそう言って。  信号が青になると、走りだす。  つないでる親指で、オレの手をスリスリしてくれてて。 「――――……玲央」 「ん?」 「……すごく、大好き、玲央」 「――――……」  感情極まって、ついつい漏れた言葉に。  くす、と笑って、玲央がオレの手をぎゅと握る。 「……今、何も出来ないから、後で言って」  なんて言って、玲央が笑う。 「……うん」  何も出来ないから、とか。ちょっと恥ずかしいんだけど。  意味は、分かったから、頷いて。  オレは、隣の、普段はあまり見慣れない玲央の。  ひたすらかっこいい、横顔を見つめた。    直接まっすぐ見詰め続けるのはさすがにちょっとなーと思うので、  何となく、運転席の前方を見るような感じにはしたけど。  ……見てるの、絶対バレてるよなあ。  なんて思いながら。 触れてる指が愛おしくて。すりすりと、触れていると。 「なんか、あんまり手に、サワサワ触られてるとさあ」 「うん。あ、くすぐったい?」 「なんか変な気分になる」  しばらく、ぽかん、として。 「――――……え」  変な気分?て?  それってどういう……。    固まっていると、玲央が信号で止まって、オレを見つめて。  ぷ、と吹き出した。 「そういう気分に、なるなーって。さわさわさわさわ、ずーと撫でられてると」 「――――……っ」  やっぱり、そう言う意味なんだ、と思った瞬間。顔が発火。  もう、火が出そう。  何なんだ、もう、玲央……。  思わず、手を引いてしまおうとしたら。  きゅ、と握られた。 「ああ、うそうそ。そのまま触ってて」  クスクス笑われるけど。  そんな風に言われて、同じように触ってられる訳、ない……。  動けずいると、玲央の手が、絡んできた。 「――――……ほんと、かわいーな、優月」  そんな風に笑み交じりに言ってる玲央を、ちら、と見つめる。  手、触ってる位で、玲央がそんな気になったりするのかなって思うと。  多分絶対、からかわれてるんだろうな、とは、思う。  もう言われた時は、フルで慌ててしまうけど。  ――――……玲央はいっつも余裕があって。いいなあ、なんて思うし。  可愛いとか。  よく、こんな風に、カッコよく、さらさらっと、言えるなあとも思う。  オレもし、女の子と付き合ってたら、言えたかなあ……。  無理かな。まず片手運転が出来る気がしない。  運転に慣れたら出来る……?  ……んー、無理だな、うん。  ていうか、玲央だから、カッコいいんだよなー……。  むー。  ちょっとカッコ良すぎて、何でだろって思ってしまう。  ――――……何でオレ、こんな、全然普通レベルを遥かに超えちゃってる人と、一緒に居るんだろうか。  なんて、思いながら。  ――――……でも繋いでる手が暖かすぎて。  微笑んでしまう。 ◇ ◇ ◇ ◇ お知らせ ◇ ◇ ◇ ◇ ブログで玲央と優月がミニ会話に参加してます(笑) お暇なときにでも♡ https://fujossy.jp/notes/29362

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