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第380話◇

【side*優月】  食事を終えてからまた玲央の車に乗って、しばらく走った。  目に映る風景に、海が現れてからも、結構走って、少し広い駐車場で玲央が車を止めた。 「着いたよ、優月」 「海だー」  海、久しぶり。  ――――……海の匂い、する。 「優月、あっちから、降りよ」 「うん」  駐車場の端の階段から、砂浜に降りれるみたいで、玲央が指さしながら歩き始める。その隣に並ぶと。  ふ、と見下ろされて。 「手ぇ、つなぐ?」  ん、と手を差し出されて。オレは、嬉しくて、その手に触れた。  きゅ、と繋がれて、そのまま砂浜に降りた。  ちょっと沈んで歩く、独特な感覚。 「砂浜歩くの、久しぶり」 「オレも歩くのは久しぶり」 「歩くのはって?」  オレが玲央を見上げると、笑いながら見下ろしてくる。 「ドライブしたい時はよく来るんだけど、1人じゃ降りないから」 「なるほどー……じゃあ、玲央も楽しい?」 「ん、そーだな」  玲央とクスクス笑いあって、砂を踏み歩く。 「――――……月、すごい綺麗……」 「ん。そうだな」 「海にさ、月が浮かんでるみたいだね」 「そうだな」  玲央が、くす、と笑いながら、優しく頷く。  手がより絡んで、なんだか玲央にすごく密着してる感じ。 「――――……今日ね、どこに連れて行ってくれるのかなって……」 「ん」 「……すごく、楽しみにしてたんだ」  くっついてる玲央を見上げながらそう言うと、ちゅ、とキスされた。  人気が無い、海。遠くにいくつか人影が見えるけど。 「もっと遊ぶとこに行きたかった?」 「――――……ううん。そんな訳ないでしょ」 「ん。だよな」 「うん」  クスクス笑いあって、そのまま、波打ち際にたどり着いた。 「サンダル履いてたら、入るのになぁ」 「今度また来よ。タオルとかも無いし」 「そだね。――――……海、キレイだね。波の音。いいなー」  玲央の手を解いて、砂浜にしゃがんで、砂に指先で触れてみる。  サラサラして、心地いい、感触。 「玲央、海まで、良く走るの?」 「ん。たまにな」  頷きながら、玲央もオレの前にしゃがんだ。  砂を指で辿ってると。  玲央もオレの指先を見てる。 「1人で?」 「――――……1人で来てた」 「……そうなんだ」  くるくるなぞってるのを止めて。  同じようにしゃがんで、同じ目線に居る玲央を見つめた。 「……玲央が1人だった色んな所に」 「ん」 「オレを入れてくれるのって……」 「――――……」 「なんか、嬉しい」  なんか本当に嬉しくて、ふ、と笑んでしまう。 「――――……オレ、優月を、他に何に入れてる?」 「ん?」 「1人だった色んな所って言ったろ」 「ああ……」  んー、と考えながら。 「玲央の家に連れてってくれたり。一緒のベッドで寝てくれたり……」 「――――……」 「朝も早く起きて、一緒に食べて――――……とかさ? してなかったって言ってたでしょ」  クスクス笑いながら、オレが言うと。  ――――……そうだな、と玲央が静かに言う。 「……手ぇ繋いで歩くとかも、してねーしな」  立ち上がった玲央に、手を差し出されて。  その手に触れると、また近くに引き寄せられる。 「……なんか、オレ、そういうの聞いてると……」 「うん?」 「――――……1人で動けなくなってるみたいじゃねえ?」  めちゃくちゃ苦笑いの玲央に、ぷ、と笑ってしまう。 「お前、横に居ないと、嫌なのかもな」  そんな風に言って、また、顔が、近づいてくる。  ほんとに。綺麗な顔……なんでこんなにカッコいいんだろ。  じー、と見つめてると、柔らかくキスされて。  それから、ぷっと笑われる。 「そんなマジマジ見てンのは、何で?」 「……カッコ良すぎるなーって、思って」  はは、何それ。と玲央が笑う。  ――――……オレ、本気なんだけど。  と思いながら、ゆっくり唇が重なってくるのを、玲央を見つめたまま受ける。

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