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第382話◇

【side*玲央】  何度もキスして、ほんとはまだまだ離したくなかったけど。  ずっと離さずにキスしている訳にもいかないので、途中で、そっと離した。  優月は瞳を開けて、くす、と笑う。 「――――……玲央、キス、好きだね?」 「――――……」 「……オレも、玲央とするの、好き」  とか言われると。  またキスしてしまうし。 「――――……」  本当に柄じゃないけど。  ――――……今まで行ってたような、街の派手な眩しい場所じゃなくて。  静かな場所を、優月と一緒に歩きたかった。  車を走らせる時によく来る海。  海岸線をずっとまっすぐ走れて、平日の夜なら渋滞知らず。  普段はひたすら車を走らせて、適当に終わりにして戻るのだけれど、今日は優月と一緒に砂浜に降りた。  何度も何度も通っていたけれど、降りたことは無かった場所。  月も海も綺麗で、一緒に歩いてる優月が、どうしても、可愛い。  やっと離して、歩き始めて、月を見ていたら思い出した。 「……そういえばさ、優しい月の子、ってさ」 「うん?」 「優しい月の子」  んん?と優月が首を傾げながらオレを見つめている。 「優しい月って、オレの名前のこと?」 「ああ」 「……名前の漢字説明する時は、そう言うけど…… 子って何???」 「――――……」 「優しい月の、子……??」  オレが黙っていると、優月が改めてそう言って、ん?とオレを見上げてくる。なんだか、おかしくなって、ぷ、と笑ってしまう。 「稔がふざけてそう言ってたんだよ」 「あ、そうなの? ……って、どういうふざけ??」 「さあ。よくわかんねえけど。まあ、可愛いから良いかと思ってスルーしようとしたら、可愛いと思ってんだろ、キモイ、とか言われたなーと思って……」 「キモイ?」  優月がクスクス笑ってる。 「……よく分かんないけど……優しい月の子って、可愛いって思ったの?」 「思った」 「……玲央って、オレのこと、そんなに、名前だけでも可愛いの?」  優月がちょっとふざけた感じで言って、オレに微笑む。 「――――……そうみたいだな」  ふ、と笑ってオレも優月を見つめると、優月は、きょとんとしてから、ふ、と嬉しそうに笑む。 「……変なのか?」 「うーん、変、かな……」 「あ、そ」  変と言われて、クスクス笑ってしまう。 「でも、変だけど、なんか嬉しい」  手を繋いだまま砂浜を歩きながら。  優月がオレを見上げてくる。 「――――……そ?」 「ん」  ふふ、と笑って、頷いて。 「この短期間にさ。オレの周りは玲央の事知って、玲央の周りもそうで……不思議だね」 「そーだな……」  返事をしてたら、ふと。 「……優月も、男、知っちゃったしな?」  思いついたからかいを、口にすると。 「…………っ」  だからなんでそーいうことを……。  そんな顔をして、プルプル見つめてくる。  ぷ、と笑いながら。 「何考えてる?」 「……っ何で玲央はそういうこと普通に言うのって思ってる」  ……思った通り。  知らず、笑みが零れてしまう。 「――――……赤くなるの、可愛いんだもんな、優月」 「……っっ恥ずかしいんだってばっ」 「だから可愛いんじゃん」 「…………っ」  また黙ってしまった優月に、ふ、と微笑んでしまう。

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