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第383話◇

「なあ優月、恥ずかしいついでにさ」 「――――……なに??」  まだ何か言われるのか、ドキドキしてるっぽい優月の顔。 「ここからの帰り道にさ」 「うん」 「――――……んー。言ったら嫌われるかな……」 「え。嫌わないよ?」 「んーでもなぁ……」 「玲央が何言ったって、嫌いになる訳ないし」 「……でもこれは、なるかな……」 「えー……」  何だかものすごく不安そうになる優月。 「……なに? 何か、すごいこと……?」 「――――……」 「でも、嫌いになったり、しないよ?」  一生懸命な感じでそう言う優月。  ――――……可愛すぎる。 「つか、そんな大したことじゃねえよ」  ぷ、と笑ってしまうと、優月が途端にホッとした顔をして、でも、なんだかムッとして。 「もう、何? 早く言って??」 「んー、あのな、優月」  ぴた、と頬を挟んで、見つめると。  優月の動きが完全に止まる。 「この帰りの道沿いにな?」 「うん……??」  ドキドキしてそう。  ああ、可愛い。 「――――……男同士でも入れる、豪華なラブホがあるんだって。行く?」 「……らぶ、ほ…………」  つられるように言った優月は、みるみる真っ赤になって。   「……っもう……玲央ってばっ!」  むうううう、と膨らんでる。  ほんと、面白い。  20才になる男が「ラブホ」って発音した位でこんなに真っ赤になるとか。  ほんとかわい。  よしよし、と撫でていると。   「――――…………」  優月はまだ赤い顔で、じーっとオレを見上げて。 「――――……良いよ? 行っても」 「え」  今、なんて?  おそらく相当不思議な顔をしたオレに。  優月は今日一番に、真っ赤になった。 「じょ……冗談で、言ったの? もう、やっぱり、玲央、嫌い」  あ、こんなとこで、嫌われた。  クスクス笑いながらオレは、優月を引き寄せて。 「優月、嫌がると思ったから、冗談で言ってたけど」 「…………っっ」 「行ってくれるなら、行くけど」  優月の顔をじっと見つめていると。 「――――……っっやっぱ、無理!」  オレの視線に耐えられなくなったのか、また赤みを増して、小さく首を振ってる。 「ん、どっち? 嫌なら行かねえし」  クスクス笑いながら聞くと。  優月は、少し俯いていたけれど。その内、じっと見つめてきた。 「――――……行った事ないから、行ってみたいなって、思っただけ……」  あ、なるほど。  純粋に興味だな、これは。  シたいからとかじゃねえな、絶対……。  まあいっか。 「――――……じゃあ行く?」 「んー。でもな……ちょっと怖いような……」 「怖い?」 「未知のゾーンだから……」 「あぁ。――――……多分、へーき……」 「ほんと?」 「うん」  よしよし、と撫でながら。  ん。善は急げだな。やっぱりやめるとか言いかねないし。  優月の肩を抱いて、車に向かって歩き出す。 「やっぱりちょっと怖いなあ……」 「ん……へーきだよ」  可愛くて、肩をポンポン叩きながら、歩く。  怖いって。  ――――……怖いってなんだ?    なんて不思議に思うけど。  なんか、可愛いとも、思ってしまう。  

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