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第384話◇
車まで歩きながら、ふと。
「優月、嫌だったら、ラブホ行かないけど?」
「ん?」
「別に家帰れば2人だし。行かなくてもいいし。どーする?」
「……えーと……ちょっと考えていい?」
「良いよ」
ふ、と笑ってしまう。
怖い、が何かよく分からないけど。
まあ何かが怖い、んだろうし。
「――――……あ」
「ん?」
「写真撮ろうぜ。月、バックで」
そう言いながらスマホを出すと、優月が柔らかく笑んでオレを見上げる。
「うん。撮ろ」
月を後ろにして画面に入るようにして、2人で並ぶ。
肩を抱いてくっついて、うまく入る所で、画面の優月を見ながら、「良い?」と聞くと、「うん、良いよー」と笑う。
何枚か撮影した後、ふと思いついて、低速の連射ボタンを押しながら、優月の頬にキスする。
「うわ、わ……」
最初びっくりした顔してた優月は、すぐにクスクス笑い出して、キスを受けてくれる。
最後ちゅ、と唇にキスしながらも押してたけど。カメラの位置とか意識してなかったから、撮れたか分かんねえなと思いながら、優月と一緒にスマホを見てみる。
最初の何枚かはちゃんとカメラ目線。
オレが悪戯でキスしたあたりから、オレは全然カメラ見てないし、優月はびっくりした顔でオレを見てるし。
でも、意外と写ってはいた。 キスしてるとこも辛うじて写っていて。
まあ最後の方は、月はもう画面からは消えてたけど。
「キス、してる写真」
「ん?」
「……恥ずかしいね」
「……そう? これ?」
数枚めくって、キスしてるのが一番よく写ってるのを見せる。
「うん」
優月がめちゃくちゃ照れながら、微笑む。
……そっか。恥ずかしいのか。
嫌だったかな? キスしてる写真は。
「……優月に送る?」
「うん。送って」
「どれ?」
「んー……全部?」
「OK」
一応全部、とはいってくれるのか、と思いながら。
とりあえず送信。
スマホを見ていた優月は、ふ、と微笑んだ。
「……玲央がなんか、可愛いから好きかも」
「え?」
「キスしてる写真って、恥ずかしいんだけどさ。でも、オレにキスしてる玲央を、外から見る事って無いからさ。なんか嬉しい」
そんな風に言いながら、嬉しそうに笑う優月に。
「良かった」
「え?」
「キスしてるとことか、写真に撮るなんて嫌だと、思ってンのかと思った」
思わずホッとしながら、そう言うと。
優月は、きょとん、としてオレを見つめた。
「そんな心配、してくれるの?」
優月がふふ、と笑って、オレを見上げる。
「オレ、嫌だったら、言うし。――――……恥ずかしいとか、慣れてないとかは、玲央と居ると色々あるんだけど…… 嫌な訳じゃないよ?」
「――――……」
「……ずっと、好きって思ってるんだけどなぁ……? ごめんね、オレ、嫌そうに見えちゃってる?」
少し首を傾げながら、優月がそう言う。
「嫌そうには見えてない――――…… 多分オレがお前の事好きすぎなんだと思う」
だから、嫌だなと思われたくないというか。
気になってしまうんだと思って、ほんと柄じゃないなと思いながら、でもそうとしか思えなくて言ったら。
「――――……うわぁー……」
優月が、ほわほわと幸せそうに、オレを見上げて。
にっこり、笑う。
「そういうの、さらーっと、自然に言われるとさ……」
「ん?」
「……ただでさえ玲央の事ばっかりなのに、ちょっと困る……」
困る?
ふと見下ろしたオレに、不意に優月が近づいて。
ちゅ、とキスされた。
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