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第385話◇
「――――……」
触れたキスを離して、優月がオレを見上げる。
「あのさ、玲央」
「ん……?」
「……オレ、ほんとに好きになったものってさ……」
「――――……」
「なかなか嫌いになれないんだよね……多分結構重いと思う……」
「――――……」
優月は、ぷ、と笑って、オレの顔に触れて。
「……玲央と会ってから、玲央の事ばっかりなんだよ、オレ」
「――――……」
「だから、あんまり……今みたいなこと言われると、ますます玲央の事ばっかりになっちゃうというか……」
そこまで言って、優月は、ふわふわとまた微笑む。
「これ以上好きになったら、玲央、困ると思う位で」
そんな風に言う、優月に。
なんか本当にたまらなくなって。引き寄せて、ぎゅ、と抱き締めた。
「――――……」
優月はクスクス笑いながら、オレの背中に腕を回してきて、すっぽり抱き付いてきた。
「――――……優月」
「……ん?」
「優月」
「……??」
「――――……」
何か、言いたいセリフが出てこなくて。
何も言わずに、そのまま、ぎゅ、と抱き締めた。
「――――……」
優月もそれ以上何も言わないし。
隙間が無いみたいに、抱きしめ合っていた時。
優月が手に持ったままだったスマホが、震え出した。
長く続く。
優月がスマホをちら見して。それからオレを見上げてくる。
「電話?」
「……蒼くんから」
苦笑いの優月。
「出て良いよ」
「……ん」
少し離れて、優月が通話ボタンを押した。
「もしもし?」
『ああ、優月? 今、玲央と一緒だよな? 電話してて平気か?』
全部聞こえる。
優月がオレを見上げるので、笑みを作って、頷くと。
「ん、平気」
優月がそう言うと。蒼さんが、電話の向こうで笑い出した。
『なあ、今日、希生さんと父さんに、バラして帰っただろ』
「……バラした訳じゃなくて……バレたんだけど」
『そんなに長居してたわけじゃないんだろ? ちょっと居ただけだって言ってた』
「――――……そう」
『つか、希生さんの孫だったとか……驚いたな?」
「うん。びっくりした」
『でもって、何でバレる訳。さっき合流したら、2人が知ってて驚いた』
「――――……何でだろ。もう、なんか……鋭すぎて」
優月が言うと、蒼さんが電話の向こうで笑ってる。
『何か口走った?』
「んー……蒼くんの個展で会った時、オレが好きな人のライブに行くって言ったでしょ? なんかそこら辺から、あっという間に。否定すれば、出来たのかもしんないけど、なんかもう無理だった。久先生なんて、ほんとすぐバレたよ。……あ、でも希生さんも、最初からとか言ってたから……おじいちゃんたち、鋭すぎなんだよね……」
優月が苦笑いで、蒼さんに説明してる。
なんか、困ったみたいな喋り方、可愛いなあなんて思いながら、海の風に乱れた髪を撫でながら整えていたら。
優月がオレを見て、ふ、と笑む。
『基本バレても平気てスタンスでいくんだな?』
「うん。そう」
『了解。つか、バレんの早くて、すげーウケたから電話した』
蒼さんの笑い声に優月も苦笑いしてる。
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