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第386話◇

 バレるのが早くて、ウケたって……。  すげー楽しそうに、蒼さんが笑ってるのが聞こえる。  優月が苦笑しながらオレを見上げるので、ふ、と笑ってしまうと。 『玲央は?』  その言葉に、優月がオレにスマホを向けてくる。受け取って、「こんばんは」と、話し出す。 『ああ、玲央……つか、希生さんが、玲央のじいちゃんだったとはなー。さすがにちょっとびっくりしたけど』  笑いを含んでる声。 「オレも、びっくりしました。優月の教室に行ったら、じいちゃんに後ろから叩かれて」 『ああそうなんだ。……びっくりしたけど、言われてみれば、なんか似てるよな。なんか、納得した』  面白そうに笑う蒼さん。 「似てますか?」 『似てる。雰囲気っつーか。……なんか、そうだって思ったら、話し方も少し似てるような気もしてきたし』  クスクス笑いながらそんな事を言ってて。  それを聞いた優月が吹き出しそうになったみたいで、口元押さえて、それからニコニコしてる。  そんな優月の頬に、むに、と触れると、優月がオレを見上げて、ふふと笑う。 『あー、まあいいや。デートしてるとは聞いたんだけどさ、どーしてもツッコミたくてさ。希生さんの孫だったって事と――――…… 何で速攻バレてんだっつー事にさ。ほんと面白いな?』  可笑しそうに笑われて、もう、優月と2人で顔を見合わせて苦笑い。 「あ」  と優月が言うので、スマホを優月に戻すと。 「蒼くん、個展、無事終わった?」 『ああ、無事終わった。ありがとな、優月』 「ううん。お給料、受け取ったからね。ありがとう、蒼くん」 『ああ。さっき父さんに渡したって聞いた。そんじゃな、2人とも。ドライブなんだろ。気を付けてな』 「うん。またね」 「さよなら」  ――――……電話、終了。 「――――……」  何となく2人で無言で、顔を見合わせて。  クスクス笑ってしまう。 「なんか、言いたい事だけ言って、速攻切ったって感じ……」  そんな風に言いながら、優月はスマホをポケットにしまった。 「……あっという間にバレててウケた、だって」  優月がまた思い出したみたいで、ふふ、と笑う。 「――――……まあそうだよな。言われてもしょうがねえよな」 「すっごい、笑われちゃったね?」 「そーだな……」  ふ、と笑ってから、優月がオレの手に触れる。 「玲央、車、戻ろ?」  「ああ」  触れてきた優月の手と繋いで、歩き出す。 「なんか、誰も居ない海って」 「ん」 「気持ち良いねー……オレ、夜来るの、初めてかもしれない」 「そっか」 「そもそもあんまり海って来なくて。うちの家族って、山でキャンプの方が多かったから」 「キャンプ?」 「うん。キャンプ。だから海より川の方が良く遊んでた」 「へえ……キャンプか」 「玲央は、キャンプする?」 「キャンプはねえかも。海外連れてかれて、海に居たような」 「なんか玲央っぽいね」 「お前は? 海外行く?」 「うち母さんが飛行機嫌いだから、なんか一度も行った事ない。というか、北海道も行った事ないんだよね。だから、大学生になったら、いっぱい旅行しようって思ってたんだけど」 「だけど?」 「そういえば去年はそんなに行かないで終わった」  あはは、と優月が笑う。 「そんなにって事は行ったのか?」 「それが、飛行機結局乗ってなくて、近くの温泉地とか。そういうのばっかり」  何でだろ、そういうのの為にもバイトしてたんだけどなー、と笑ってる優月。 「――――……今年さ」 「うん?」 「キャンプとか、海とか、北海道とか……いろんなとこ、行く?」 「え。あ、うん、行く行く」  何だか顔をキラキラさせながら、オレを見上げてくる。 「さっきさ、夏に色んな事しようなって言ったけど…… なんか色々してたら忙しくなりそうだな?」 「うん。楽しみー」  手を繋いだまま、ホクホク楽しそうな顔をしてるのを何となく見下ろして。  自然と微笑んでしまう。   (2022/2/2) 2がたくさん♡

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