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第387話◇
ほんと和む……。
優月に会うまで、和むとか、人に求めた事も無かったので、
それについて考えだすと、正直、意味が分からない。でも。
頬に触れると、少し笑んで、オレを見上げる。
そうされると、ふわ、と心が和らぐ。
この感じを、離したくないと、勝手に思うんだから、もう意味なんか考えても、どうしようもないというか。
「……玲央」
電話がかかってくる前の形で、またぎゅ、と抱き付いてきた。
「――――……優月?」
……自分からくっついてくるのは珍しいかも。
そんな風に思うと同時に、愛しくていっぱいになる気がする。
――――……すげー可愛いんだけど。
なんでこれ、こんなに可愛いんだ。
腕の中の優月をすっぽり抱き締めて、髪の毛にすり、と頬を寄せてると。
「……いく、ホテル」
「――――……」
なんか、今オレ。……ものすごく可愛い、無邪気な物を、ひたすら無心に可愛がってる気分だったからか。一瞬、ホテルに「?」しか浮かばず。
答えずにいたら、すり、とすり寄られた。
「……玲央とくっつきたい」
「――――……」
さっき、行ってみたいと言った優月には、探検みたいな興味しか無かったから、連れて行くのもどうかなと少し思ったのだけれど。
くっつきたい、とか言われると。
一気に、気分が煽られる。
「――――……」
「――――……」
「……? 玲央?」
オレが何も答えないものだから、きょとん、とした表情で、オレを見上げるのも。
絶対的に、良くない。
なんか、ほんと、すげー可愛いし。
――――……マジでほんとに、襲いたいし。
と、いうような、体の反応してしまいそう。何とか平静を保つけど。
――――……ヤバいな、優月。
無邪気すぎる感じで煽ってくるって。
……違うか。
何でオレは、この感じに、煽られるんだっつー、話か。
「あ、でも――――……これから行ったら帰るの遅くなっちゃうね」
「……明日何限から?」
「明日は2限から」
「じゃあ、泊まってって、朝早く帰ろ」
「あ、そんな技が……」
「技って」
ふ、と笑ってしまう。
「玲央はいっぱい、行った事あるの?」
「――――……」
普通こういうのって、嫉妬からかなーと思うんだけど。
……どーいう意味で聞いてんだろ。
「ん?」
と聞いてみると。
「詳しいの?」
という質問が続く。
――――……ああ、やっぱ、そっちの意味か。
何となく、優月が言う事が少しわかってきたような。
何だか可笑しくて、クスクス笑う。
「――――……それさ、優月」
「ん?」
「詳しいって言ったら」
「うん」
「……嫌じゃねえの?」
「――――……」
瞬間首を傾げて、すぐ意味が分かったみたいで、あ、と口を開ける。
「――――……嫌……かも?」
「普通は、かもじゃねえんだけどな」
抱き締めて、優月の後頭部、わしゃわしゃと、撫でてしまう。
「……行った事はある、て事にしとく」
「――――……うん」
優月は、頷いて、それから、ふ、と笑ってオレを見た。
「オレと会う前の玲央だし――――……別に、良いよ」
「良いの?」
「……てか、嬉しくは無いよ? でもさ、過去の玲央、全部込みで、今の玲央だし……それに、セフレでもいいよって、言っちゃう位、だからね、オレ」
「――――……」
「……それ位、玲央と居たかったの、オレだから」
何だかなあ。ほんと。
「……優月?」
ちゅ、とキスする。
「――――……お前と居たいの、オレの方がずっと強いと思うけど」
愛しすぎて。そう言ったら。
また嬉しそうな笑顔で、オレを見る。
駄目だ。ほんと可愛い。
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