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第401話◇

【side*玲央】  バスルームを出て、髪を乾かしてから、部屋に戻った。 「優月、水飲んで」 「うん」  部屋に戻ってすぐ窓の所で外を見にいってた優月が戻ってくる。 「水持って入ればよかったな」 「ん」  頷きながら優月が水を半分くらいまで、一気飲みしてる。 「おいしー。すごい喉乾いてたみたい。気づかなかったけど」 「いっぱい飲んどけよ」 「うん」  ふふ、と優月が笑う。なんとなく優月の頭を撫でていると。 「もう結構遅いねー……」  なんだかのんびりな感じで、話し始める。 「早く寝ないと、明日朝、玲央運転してもらわないとだもんね……」 「運転は平気だけど…… 学校だしな。寝るか」 「うん。あ、歯磨こ?」  優月が、自分の頭を撫でてるオレの手に触れながら、見上げてくる。 「一緒にいこ」  頭から外れたオレの腕に、優月がする、と腕を絡めた。 「――――……」 「……あ。ごめん、びっくりした?」  オレが一瞬固まったからか、優月がそんな風に言って、振り返る。 「なんか玲央の腕が気持ち良かったから、そのまま……ごめんね、急に腕組んで」 「――――……」  そんな風に謝る必要一切ないのだけれど。  何となく言葉が出なくて。そのまますっぽり抱きしめてしまった。 「……玲央??」 「謝んなくていいよ」 「……びっくりした?」 「あー……ん。びっくりはした」  そう言うと、優月は、クスクス笑う。    腕組まれた事なんか、数えきれないほどあんのに。  する、と組まれた事で、すげー動揺したというか。  ……ドキドキしてびっくりしたとか。  記憶に、あんま無い。 「……玲央??」  いつまでも離さないオレを見上げて、優月がきょとんとしてる。 「……歯、磨く?」 「あ、うん」  すぐに頷いて、優月がオレの腕から抜け出ると、バスルームの方に歩いていく。 「玲央、はい」  歯ブラシを袋から出して、少し濡らして渡される。 「歯磨き粉……」  言いながらオレのにつけて、自分のにも付けて、少し濡らして口にくわえる。無言で歯磨きをしながら、優月が見上げてくる。 「――――……」  目が合うと、嬉しそうに顔が緩む。  何でそんな笑顔かな……。  自然と左手が動いて優月の髪に触れて、よしよしと撫でてしまう。  ますます、笑む優月に。  ほんと、ダメだなこれ。  ――――……可愛いのメーターみたいなのが、最大値を振り切ってるような気がする。  特に何も話さず、何となく見つめ合って。  オレは、左手で優月に触ったままで。  磨き終わって、順番に口を漱いで拭いたと同時に、優月を引き寄せた、 「……なんかオレさー」 「うん??」 「……お前、可愛くて、困る」 「――――……困る?」 「んー。なんか。……困るかも」  抱き締めて、ちゅ、とキスすると、 「そんな事言ったら、オレは、玲央がカッコよくて――――……たまに可愛くて、困る」 「…………可愛い??」 「うん。たまにね。可愛い」  謎な事を言って、嬉しそうに笑ってる優月。 「寝よ、玲央」  腕を引かれて、一緒にバスルームを出ると、部屋の電気を暗くした。  布団に入って、優月を抱き寄せると、途端に欠伸をし始める。 「なんか一気に眠くなった……」  言いながら、すり、と腕にはまってくる。 「優月、あったかいな」 「眠いからかなぁ……」 「子供か……」  笑いながら言うと、優月は、ふふ、と笑って。 「なんか、今日……1日すごい長かった気がしない?」 「……そうかもな。優月の絵の教室あたりからすげえ長かった」 「うん。ほんと…… 楽しかったね」  すり、と額が、顎の辺りに触れてくる。 「――――……明日は、あいつらと、夕飯だろ……」 「……楽しみだねー」  クスクス笑う優月。  オレ的には、楽しみとかよりは、うんざりが捨てきれないのだけれど。  そんな事を考えていたら。 「毎日、楽しいね……」  うわごとみたいな感じでそう言って、優月は、すー、と眠り始めた。  自然と、微笑んでしまう。    つか、何で眠っただけで、可愛いとか、思うかな。  さっきだって、腕組んだだけで、可愛いとか。  自分に対してそんな風に思うけれど。  可愛いもんは、可愛いしな……。 「――――……」  優月の肩が出ないように布団を引き上げて抱き寄せる。  優月が暖かくて、オレもすぐ、眠りについた。

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