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第402話◇
空気やシーツの感触が、いつもと違くて、目が覚める。
優月はまだ腕の中に埋まったまま。
朝から、和みながら、ベッドの上の時計を見ると、5時。
もう頭はすっきりしていた。
二度寝しない方が良さそうだな。
優月の頭に頬を寄せて、目を閉じる。
誰かを抱き締めて寝たり、そのまま抱き締めたまま起きたり。
別にしたくないというよりは、するかしないかを考える事も無く。
――――……したこと、なかったな……。
腕、絡められて、ドキッとして、動けなくなる日が、
オレに来るとか。
すげーびっくり。
オレの周りの奴らには、死んでも言わねー……。
「――――……ん……」
もぞ、と動いた優月が、足を、絡めてくる。
少し優月の方が冷たいから、暖かいのかな……
くす、と笑ってしまうと。
それに気づいたみたいで、ぱ、と顔を上げた。
「あ。玲央……」
目が合った瞬間、ほわ、と笑う。
――――……可愛すぎ……。
少し下の方に潜り込んでいた優月を、引き上げて、抱き締める。
「おはよ」
「うん。おはよー……」
スリ、と頬に触れてくる。
――――……すり寄ってくんの、すげー可愛いんだけど。
やらなくなったら嫌なので、言わない。
「まだ早いけど」
「ん。……何時?」
「5時過ぎ」
「わー早いね……」
「朝食6時だから」
「あと1時間かー……」
優月は、ふ、と笑って。腕を背中に回してくる。
「……もうちょっとこのままでもいい?」
「ん」
可愛くて、より抱き締めてしまう。
思う度に、可愛いって言ってたら、さすがに優月でも、その内うざがられそうな気がする位で。
マジで不思議すぎる……。
「あのさ、玲央」
「ん?」
「オレ、人に腕枕っぽいのしたことないんだけど……」
「ん」
……あったら、困るけど。
「疲れない?」
「ん……?」
「ずっと、抱き締めて、寝てくれるのってさ」
「――――……」
「身動きできないでしょ? だるくなったら、外してね?」
「――――……分かった」
「うん」
優月はクスクス笑ってる。
「でも無理」
「……ん? 無理?」
優月がオレを見上げてくる。
「抱いてたいから」
腕の中にぎゅー、と抱き締めると、優月が笑う。
「オレ、玲央がよければ、手つないで寝るとかでもいいよ?」
「――――……ああ、それもいいな」
「うん。疲れそうならそうしよ?」
「ん」
くす、と笑って、頷く。
「ずーっとオレと寝てくれる気で、言ってる?」
「え。……あ」
ふ、とオレを見上げて、じー、と見つめてくる。
「昨日オレ言ったろ、朝と夜、一緒に居れたら、昼間離れてても、耐えるって」
「うん」
「優月が、心の準備出来たら、いつでも言って」
「――――……」
ふ、と優月が笑む。
「オレ、嫌なんじゃないよ? 玲央」
「ん、引っ越しがハードル高いのは分かるから。いいよ、心の準備出来るまで、今みたいに過ごすから。良い?」
「うん。もちろん」
嬉しそうに笑って、優月がオレを見上げる。
――――……ふと思うのは。
なんか自分が「待つ」側になるとか。
今まで思った事も無くて。
――――……実際、そんな事、今まで無かったなーと。
でも、こんな風に待ちたい位、
優月が好きなんだな、と思うと。
……悪くないなーと。
思って。
「お前の事、すげー好き」
そう言ったら。
優月は、瞳を大きくしてオレを見つめて。
ふわふわと、微笑む。
「オレも」
オレの首に優月の腕が絡んで、むぎゅ、と抱き付かれる。
可愛くて、よしよしと撫でながら頬にキスすると、くすぐったそうに笑うから、余計可愛い。
――――……こんな風に過ごしてるの。
あいつらが知ったら、ぶっ飛びそう。
今夜の集まりをふと浮かべて、そんな風に思った。
まあ自分でも謎すぎるから、あいつらの反応の意味もまあ。
分かるんだけど。
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