397 / 856

第402話◇

 空気やシーツの感触が、いつもと違くて、目が覚める。  優月はまだ腕の中に埋まったまま。  朝から、和みながら、ベッドの上の時計を見ると、5時。  もう頭はすっきりしていた。  二度寝しない方が良さそうだな。  優月の頭に頬を寄せて、目を閉じる。  誰かを抱き締めて寝たり、そのまま抱き締めたまま起きたり。    別にしたくないというよりは、するかしないかを考える事も無く。  ――――……したこと、なかったな……。  腕、絡められて、ドキッとして、動けなくなる日が、  オレに来るとか。  すげーびっくり。    オレの周りの奴らには、死んでも言わねー……。 「――――……ん……」  もぞ、と動いた優月が、足を、絡めてくる。  少し優月の方が冷たいから、暖かいのかな……  くす、と笑ってしまうと。  それに気づいたみたいで、ぱ、と顔を上げた。 「あ。玲央……」  目が合った瞬間、ほわ、と笑う。  ――――……可愛すぎ……。  少し下の方に潜り込んでいた優月を、引き上げて、抱き締める。 「おはよ」 「うん。おはよー……」  スリ、と頬に触れてくる。  ――――……すり寄ってくんの、すげー可愛いんだけど。  やらなくなったら嫌なので、言わない。 「まだ早いけど」 「ん。……何時?」 「5時過ぎ」 「わー早いね……」 「朝食6時だから」 「あと1時間かー……」  優月は、ふ、と笑って。腕を背中に回してくる。 「……もうちょっとこのままでもいい?」 「ん」  可愛くて、より抱き締めてしまう。  思う度に、可愛いって言ってたら、さすがに優月でも、その内うざがられそうな気がする位で。  マジで不思議すぎる……。 「あのさ、玲央」 「ん?」 「オレ、人に腕枕っぽいのしたことないんだけど……」 「ん」  ……あったら、困るけど。 「疲れない?」 「ん……?」 「ずっと、抱き締めて、寝てくれるのってさ」 「――――……」 「身動きできないでしょ? だるくなったら、外してね?」 「――――……分かった」 「うん」  優月はクスクス笑ってる。 「でも無理」 「……ん? 無理?」  優月がオレを見上げてくる。 「抱いてたいから」  腕の中にぎゅー、と抱き締めると、優月が笑う。 「オレ、玲央がよければ、手つないで寝るとかでもいいよ?」 「――――……ああ、それもいいな」 「うん。疲れそうならそうしよ?」 「ん」  くす、と笑って、頷く。 「ずーっとオレと寝てくれる気で、言ってる?」 「え。……あ」  ふ、とオレを見上げて、じー、と見つめてくる。 「昨日オレ言ったろ、朝と夜、一緒に居れたら、昼間離れてても、耐えるって」 「うん」 「優月が、心の準備出来たら、いつでも言って」 「――――……」  ふ、と優月が笑む。 「オレ、嫌なんじゃないよ? 玲央」 「ん、引っ越しがハードル高いのは分かるから。いいよ、心の準備出来るまで、今みたいに過ごすから。良い?」 「うん。もちろん」  嬉しそうに笑って、優月がオレを見上げる。  ――――……ふと思うのは。  なんか自分が「待つ」側になるとか。  今まで思った事も無くて。  ――――……実際、そんな事、今まで無かったなーと。  でも、こんな風に待ちたい位、  優月が好きなんだな、と思うと。  ……悪くないなーと。  思って。 「お前の事、すげー好き」  そう言ったら。  優月は、瞳を大きくしてオレを見つめて。  ふわふわと、微笑む。 「オレも」  オレの首に優月の腕が絡んで、むぎゅ、と抱き付かれる。  可愛くて、よしよしと撫でながら頬にキスすると、くすぐったそうに笑うから、余計可愛い。  ――――……こんな風に過ごしてるの。  あいつらが知ったら、ぶっ飛びそう。  今夜の集まりをふと浮かべて、そんな風に思った。  まあ自分でも謎すぎるから、あいつらの反応の意味もまあ。  分かるんだけど。  

ともだちにシェアしよう!