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第407話◇

 オレが優月をじっと見つめていたら。何やら勝手にどんどん恥ずかしくなっていくみたいで、視線を外して狼狽えだした。 「……って思ったけど。オレ今何言ってるんだろ。 いまの、無かった事にして。ごめん、なんか、玲央が初めてって聞いたら、ちょっと嬉しくなっちゃって……いや、絶対なんか今おかしい事、言っ――――……」  あまりに狼狽えてるので。  可愛すぎて。キスして、黙らせてみた。 「――――……っんっ…………っふ……?」  恥ずかしすぎるのか、涙目だし。  もうほんとに、可愛い。 「……ごめん、可愛くて、ちょっとからかった」  クスクス笑ってしまいながら、キスを外すと。 「ていうか、そもそも、オレがここ開けたし……玲央が悪いんじゃなくて……」  複雑そうな顔で優月がブツブツ言ってるのが可笑しくて、でも笑うとますます困りそうなので我慢して。ちゅ、と頬にキスした。 「マジでどれか買ってく?」 「――――……次回にしていい?」 「次回、買うの?」 「わかんない……玲央が初めてしたいっていうなら」 「なら、良いの?」 「……うん」  へーいいんだ。  ――――……すげえ、真っ赤だけど。  笑ってしまいそうなのを堪える。 「じゃあ次、楽しみにして――――……出よっか」  そう言ったら、やっとここから離れられるのが嬉しいのか、パッと笑顔になった。  「うん」  面白い。  ――――……そんな恥ずかしいくせに、玲央と初めて一緒なら、とか。  可愛すぎる。  最後に真っ赤な可愛い顔、見れたし。  バスルーム、すげー楽しそうだったし。  ここに居る間、ずっと可愛かったな、優月。  目の前でまだ赤い優月にちゅ、とキスして。  よしよし、と頭を撫でると、ふふ、と優月が微笑んだ。 「――――……」  違うか。ここに居る間だけじゃなくて、ずっと可愛いんだな。  なんて。  ほんと、どーかしてるな、オレ。  思いながらも、笑んでしまう。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「玲央、窓開けてもいい?」  思っていた以上に、楽しかったラブホを出て、海沿いを走り始めたら、優月がそう言った。 「いいよ」  言うと同時に窓が開いて、海の匂いが吹き込んできた。 「――――……こんな朝に、こんなとこ走っててさ。これから学校なんて、不思議だよね」  優月が楽しそうに言って笑ってる。 「そうだな……」  ほんと不思議。  ラブホなんて、珍しくもないし。別にそんな楽しいとこだっつー認識も無かったのに。  いちいち可愛かったなあなんて思う。  ラブホ泊まって、朝、こんな景色の中ドライブとか。  ――――……多分少し前のオレなら、早く起きて朝日の中ドライブして学校なんて、死ぬほどダルイと思ったろうし。なんなら、学校は休んだかも……。そう思うのに。  いっそ清々しいというか、楽しいとか、感じるなんて。   「風きもちー……海が朝日で、綺麗……」 「ん。だな」  信号で止まった所で、海に目を向ける。  マジで綺麗で、少し目を細めてしまう。  ――――……この感覚、優月と居るから、だよなあ……。  なんてしみじみ思っていたら。 「あ。そうだ」 「ん?」  優月がオレをまっすぐ見つめる。 「――――……今度、玲央の絵を、描かせてほしいんだけど……」 「ああ。うん」 「良い?」 「良いに決まってるし。 まあ。……イイ男に描いてくれるなら、な?」  笑いながら言うと。 「そんなの当たり前だよ」  優月はそう言って、この上なく、嬉しそうに笑った。  愛おしいので、よしよと頭を撫でてから。車を発進させた。 

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