402 / 856
第407話◇
オレが優月をじっと見つめていたら。何やら勝手にどんどん恥ずかしくなっていくみたいで、視線を外して狼狽えだした。
「……って思ったけど。オレ今何言ってるんだろ。 いまの、無かった事にして。ごめん、なんか、玲央が初めてって聞いたら、ちょっと嬉しくなっちゃって……いや、絶対なんか今おかしい事、言っ――――……」
あまりに狼狽えてるので。
可愛すぎて。キスして、黙らせてみた。
「――――……っんっ…………っふ……?」
恥ずかしすぎるのか、涙目だし。
もうほんとに、可愛い。
「……ごめん、可愛くて、ちょっとからかった」
クスクス笑ってしまいながら、キスを外すと。
「ていうか、そもそも、オレがここ開けたし……玲央が悪いんじゃなくて……」
複雑そうな顔で優月がブツブツ言ってるのが可笑しくて、でも笑うとますます困りそうなので我慢して。ちゅ、と頬にキスした。
「マジでどれか買ってく?」
「――――……次回にしていい?」
「次回、買うの?」
「わかんない……玲央が初めてしたいっていうなら」
「なら、良いの?」
「……うん」
へーいいんだ。
――――……すげえ、真っ赤だけど。
笑ってしまいそうなのを堪える。
「じゃあ次、楽しみにして――――……出よっか」
そう言ったら、やっとここから離れられるのが嬉しいのか、パッと笑顔になった。
「うん」
面白い。
――――……そんな恥ずかしいくせに、玲央と初めて一緒なら、とか。
可愛すぎる。
最後に真っ赤な可愛い顔、見れたし。
バスルーム、すげー楽しそうだったし。
ここに居る間、ずっと可愛かったな、優月。
目の前でまだ赤い優月にちゅ、とキスして。
よしよし、と頭を撫でると、ふふ、と優月が微笑んだ。
「――――……」
違うか。ここに居る間だけじゃなくて、ずっと可愛いんだな。
なんて。
ほんと、どーかしてるな、オレ。
思いながらも、笑んでしまう。
◇ ◇ ◇ ◇
「玲央、窓開けてもいい?」
思っていた以上に、楽しかったラブホを出て、海沿いを走り始めたら、優月がそう言った。
「いいよ」
言うと同時に窓が開いて、海の匂いが吹き込んできた。
「――――……こんな朝に、こんなとこ走っててさ。これから学校なんて、不思議だよね」
優月が楽しそうに言って笑ってる。
「そうだな……」
ほんと不思議。
ラブホなんて、珍しくもないし。別にそんな楽しいとこだっつー認識も無かったのに。
いちいち可愛かったなあなんて思う。
ラブホ泊まって、朝、こんな景色の中ドライブとか。
――――……多分少し前のオレなら、早く起きて朝日の中ドライブして学校なんて、死ぬほどダルイと思ったろうし。なんなら、学校は休んだかも……。そう思うのに。
いっそ清々しいというか、楽しいとか、感じるなんて。
「風きもちー……海が朝日で、綺麗……」
「ん。だな」
信号で止まった所で、海に目を向ける。
マジで綺麗で、少し目を細めてしまう。
――――……この感覚、優月と居るから、だよなあ……。
なんてしみじみ思っていたら。
「あ。そうだ」
「ん?」
優月がオレをまっすぐ見つめる。
「――――……今度、玲央の絵を、描かせてほしいんだけど……」
「ああ。うん」
「良い?」
「良いに決まってるし。 まあ。……イイ男に描いてくれるなら、な?」
笑いながら言うと。
「そんなの当たり前だよ」
優月はそう言って、この上なく、嬉しそうに笑った。
愛おしいので、よしよと頭を撫でてから。車を発進させた。
ともだちにシェアしよう!