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第411話◇

 あの後、玲央と勇紀と別れて、教室に来た。  仲の良い皆の所に歩いて、おはよーと言った瞬間。 「なんかいい匂い、優月」 「あ。うん。香水」  つけたばっかりだから、香るのかな。  つけてくれた時の玲央とか、その後の勇紀のツッコミとか、色んなのが思い出されて、ふふ、と笑いながら答えて、空いてる席に座ると。周りの皆が面白そうな顔でオレを振り返ってくる。 「優月絶対彼女できたよな?」 「え。どうして?」 「先週もなんか服オシャレになってたし、香水つけたり」 「髪も前はそのまんまって感じだったのに、なんかやたらサラサラしてるし」  ――――……玲央がほぼ毎日、ドライヤーしてくれて、さらさらにしてくれてる。とは言えないけど。 「皆、外見よく見てるんだね……よく気づくなあ……」 「気づくだろ。あ、てことは、やっぱり彼女できた?」  楽しそうに聞かれて、何て答えるべきか、迷う。  ――――……彼女じゃなくて、彼氏だよ?  うん。なんか。皆が叫ぶのが聞こえてくるようなので、これは、もうすぐ授業の始まる教室では、だめだな。  ――――……恋人できたよ。  彼女、と言わずに、わざわざ恋人と言い換えたら、なんか察しそうな人も居るしな。これもダメだな。  ――――……うん。  頷くだけは? ……だめだ、そんなことしたら、根掘り葉掘り聞かれるに決まってる。 「何でだんまりなんだよー?」  クスクス笑われて、突っ込まれる。 「なんかさあ。優月が付き合うとかって、なんか不思議」 「あ、オレも」  クスクス笑われて、「どういう意味?」と聞くと。 「んー。何となく?だなあ……優しいし、きっといい彼氏になるんだろうけど」 「男!って感じしないからかも」  なるほど。うんまあ。確かに。  今までもずっと、そんな感じで言われてるから、否定する気もないけど。  あ。そういえば。  昔の事思い出した。 「そういえばさ……」  ふとそう口に出したら、皆が、ん?とオレを見つめる。 「高校ん時言われて、なんとなく忘れられないのがさ」 「うん」  軽く話そうと思ったのに、思ったよりも皆がワクワクしてるので、言わなきゃよかったかなと思いながら、もう話し始めちゃったし良いか、と続けることにして。 「仲の良い子達に、『男子、優月、女子』って分けられそうって、言われたんだよね。まあ……深い意味は、よく分かんないんだけど。そんな感じ、って」  皆、少しの間、じーっとオレを見て。  ぷ、と吹き出したり。「ああー」と納得したり。  それから。皆揃って。 「分かるー」  と言われる。何やら皆がとても楽しそうなので、それはそれで、ちょっぴり複雑だけど。 「……分かるんだ。ていうか、誰か分からない人居ないの?」  そう聞いても、皆笑いながら、分かる分かると頷いてる。 「良いんだけどさ」  ふー、とため息を付くと。  隣に居た友達に、よしよしと撫でられる。 「良い意味だと思うけど、それ」 「そんな笑いながら言われても」  苦笑いしか浮かばないけどね。  やっぱり言うんじゃなかったかな。  男らしくないとかの話でついつい思い出しちゃった。  まあもう、それ言っても言わなくて、皆の印象が変わる事は無さそうだから、もう良いんだけど。  散々その後もなんだかんだと、いじられてる間に教授がやって来た。  皆前を向いて座り直して。  オレも、まっすぐ前を向いて――――……。  ふと、またまた、玲央を思い出す。  玲央も、分かるって、言うかなあ……??

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