405 / 856
第411話◇
あの後、玲央と勇紀と別れて、教室に来た。
仲の良い皆の所に歩いて、おはよーと言った瞬間。
「なんかいい匂い、優月」
「あ。うん。香水」
つけたばっかりだから、香るのかな。
つけてくれた時の玲央とか、その後の勇紀のツッコミとか、色んなのが思い出されて、ふふ、と笑いながら答えて、空いてる席に座ると。周りの皆が面白そうな顔でオレを振り返ってくる。
「優月絶対彼女できたよな?」
「え。どうして?」
「先週もなんか服オシャレになってたし、香水つけたり」
「髪も前はそのまんまって感じだったのに、なんかやたらサラサラしてるし」
――――……玲央がほぼ毎日、ドライヤーしてくれて、さらさらにしてくれてる。とは言えないけど。
「皆、外見よく見てるんだね……よく気づくなあ……」
「気づくだろ。あ、てことは、やっぱり彼女できた?」
楽しそうに聞かれて、何て答えるべきか、迷う。
――――……彼女じゃなくて、彼氏だよ?
うん。なんか。皆が叫ぶのが聞こえてくるようなので、これは、もうすぐ授業の始まる教室では、だめだな。
――――……恋人できたよ。
彼女、と言わずに、わざわざ恋人と言い換えたら、なんか察しそうな人も居るしな。これもダメだな。
――――……うん。
頷くだけは? ……だめだ、そんなことしたら、根掘り葉掘り聞かれるに決まってる。
「何でだんまりなんだよー?」
クスクス笑われて、突っ込まれる。
「なんかさあ。優月が付き合うとかって、なんか不思議」
「あ、オレも」
クスクス笑われて、「どういう意味?」と聞くと。
「んー。何となく?だなあ……優しいし、きっといい彼氏になるんだろうけど」
「男!って感じしないからかも」
なるほど。うんまあ。確かに。
今までもずっと、そんな感じで言われてるから、否定する気もないけど。
あ。そういえば。
昔の事思い出した。
「そういえばさ……」
ふとそう口に出したら、皆が、ん?とオレを見つめる。
「高校ん時言われて、なんとなく忘れられないのがさ」
「うん」
軽く話そうと思ったのに、思ったよりも皆がワクワクしてるので、言わなきゃよかったかなと思いながら、もう話し始めちゃったし良いか、と続けることにして。
「仲の良い子達に、『男子、優月、女子』って分けられそうって、言われたんだよね。まあ……深い意味は、よく分かんないんだけど。そんな感じ、って」
皆、少しの間、じーっとオレを見て。
ぷ、と吹き出したり。「ああー」と納得したり。
それから。皆揃って。
「分かるー」
と言われる。何やら皆がとても楽しそうなので、それはそれで、ちょっぴり複雑だけど。
「……分かるんだ。ていうか、誰か分からない人居ないの?」
そう聞いても、皆笑いながら、分かる分かると頷いてる。
「良いんだけどさ」
ふー、とため息を付くと。
隣に居た友達に、よしよしと撫でられる。
「良い意味だと思うけど、それ」
「そんな笑いながら言われても」
苦笑いしか浮かばないけどね。
やっぱり言うんじゃなかったかな。
男らしくないとかの話でついつい思い出しちゃった。
まあもう、それ言っても言わなくて、皆の印象が変わる事は無さそうだから、もう良いんだけど。
散々その後もなんだかんだと、いじられてる間に教授がやって来た。
皆前を向いて座り直して。
オレも、まっすぐ前を向いて――――……。
ふと、またまた、玲央を思い出す。
玲央も、分かるって、言うかなあ……??
ともだちにシェアしよう!