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第412話◇

 何か色々考えていたら、ふとまた玲央の姿を思い浮かべてしまった。  んー……そうだよなぁ。  玲央は男らしい、よね。  ――――……なんかほんとに、男、て感じ……。  別に、筋肉もりもりとか、ごついとか、そんなんじゃないのに。  なんでだろう。  ――――……オスっぽいていうのかなあ。フェロモンぽいのが、すごい溢れてるというか……。  そりゃ、色んな人が惹きつけられて、別にセフレでもいいとか思っちゃうよなあ。って、オレもだった。……ていうか、オレそういうの鈍いんじゃないかと自分で思うのだけど、そのオレを惹きつけるって。もうなんか全人類惹きつけられちゃうんじゃないかな……。  と、玲央に言ったら、笑われるだろうなあと思う事を考えていたら。  ふっと気づいた。  ……って、フェロモンとか。恥ずかしいな。  オレってば、朝から、1人で、何を考えてるんだろう。  ……わー、なんか。  やらしい時の玲央が、頭に……!  落ち着いて、オレー!  ――――……はあ。  俯いて、ぐりぐりこめかみを押してみる。  ……勉強。しよ。うん。  気合を入れて、前を向いた。  なんかオレ、最近いつも、気合入れないと授業に集中できないってどうなんだろう……。玲央が、オレの人生で、この上無い位、強烈すぎるからいけないんじゃないだろうか……。いや、いけない訳じゃない。玲央は全然いけなくない……。  なんて、もう、とめどない事を思いながらも、とりあえず、教授の顔をじっと見つめて、残りの授業を頑張った。 ◇ ◇ ◇ ◇  お昼は、2限の皆と食堂にやって来た。    何となく食堂全部見回して。  今日は、玲央居なそう……。ちょっと残念……。  ……って、ついさっきまでずっと一緒に居たのに、オレってば……。  なんて思っていると、周りの皆が話し出した。 「そういえば、クラス会しようとか言ってたよな?」 「金曜だよな?」 「あ、うん。金曜って言ってたね。皆行くの?」  そう聞いたら、大体皆参加らしい。バイトの後行くって答えてる人も居る。 「優月は?」 「うん、行くよ」 「参加率高いよなー、うちのクラス会」  そんな言葉に皆、そうだよなーと、笑う。 「早く、皆が酒飲めるようになるといいよな」 「今まだ何人かだもんな」 「オレ3月まで飲めないなあ」  何気なく言うと、皆がオレを見て。 「なんか優月は3月になっても、飲んだら大変そうな気が……」 「飲めるのかな、優月」 「どういう意味だよー、きっと飲めるから」 「そうかなあ??」  クスクス笑われて。んー?と、首を傾げて。 「オレって飲めないイメージ?」  そう聞くと、周りの皆が苦笑いで。 「皆そう思うんじゃないかなー?」 「優月が飲めそうって、全然おもわねーな」 「でもこれで、優月がすっげえ飲める奴だったら、それはそれで面白いな?」 「確かに」  なるほど。面白いんだ。 「じゃあオレは、頑張って飲む事にするね」 「あ、いや、やっぱやめて。倒れたら困るから」 「倒れる姿しか思い浮かばない」 「何なんだよー! もー」  意味の分からないやり取りを繰り返していると、「優月」と後ろから呼ばれた。 「あ、美咲。おはよ」 「うん。ねえ、今度さ」 「うん」 「智也と夕飯行こうよって昨日話してたんだけど」 「うん、行く。いつがいい? オレ今週は、今日と金曜は用事ある」  オレがそう言うと、美咲はスマホの予定を確認しながら、少し眉を寄せた。 「あー……じゃあ来週かな。また連絡するね」 「うん、分かった」 「じゃあね、優月」  バイバイと手を振って、前を向き直して、食事を続けようとすると。 「今の子がたまに言ってる幼馴染だろ? すごい綺麗だよなー」 「うん。そーだね。綺麗だよね、美咲。オレこの話、よく聞かれるなぁ……」  クスクス笑うと、皆、「だってあの子目立つもんな」と笑う。 「みさきちゃんて言うのかー」 「うん。美しく咲くって書いて、美咲。ピッタリだよね」  ふふ、と笑って言うと、皆が興味津々。 「付き合ってるのって、まさか……」  なんて言われて、あは、と笑ってしまった。 「今のやり取りに、そんな感じ、あった?」  そう聞くと。 「無いな」  と皆納得の顔。  だよね、と言いながらご飯の続き。 「じゃあ、誰?? 優月」 「うーん……ここではちょっと……」  オレが言うと、皆、えーー?と騒ぐけど。  ……ほんとの事言った時の、騒ぎは比じゃないだろうから。  とりあえずここでは、絶対言わない……。  と、心に決めて、皆のブーイングを流しつつ、ご飯を頬張った。

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