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第415話◇
一緒に並ぶのすら、嬉しいって。ほんと何なんだろう。
そう思うけど、楽しくて嬉しいんだから、しょうがない。
「あ、玲央、さっきのメッセージって……」
「勇紀の?」
「うん」
「あれは……優月に聞かれてんだけどオレが動物なら何に似てる?て聞いたのが、間違いだったんだよ」
――あ、やっぱり、そういう事だったんだ。
うんうん。
「あ、でもオレも、ライオンとか、虎とか、ホワイトタイガーかなっとか思ってたんだよ」
「……肉食獣だな」
「うーん、そういうイメージだよね、カッコいいもん」
「――あ、優月はカッコいいから、そう言ってんの?」
「それ以外に何があるの?」
「いや。よく分かんねえけど、あいつらのは悪意を感じるから」
そんな風に言う玲央に、クスクス笑ってしまう。
「悪意じゃないよ、玲央のことが好きなんだよー」
「……発情期の肉食獣って好意?」
ちら、と見られて、そこはどうなんだろう? ちょっとふざけてるかも?? と苦笑いを浮かべてしまうと。玲央も、クスクス笑って。
「――まーお前にはいつでもはつじょ」
思わず玲央の口を塞いでしまった。
「――優月?」
玲央の手が、オレの指を掴んで、外される。
「何で塞ぐの?」
ニヤ、と笑われて、妖しい瞳で見られると。
心臓が、どき、と動く。
ここは人気があんまりないって言っても、部室の近くだし。
外だし。
「……っ今、玲央、絶対恥ずかしい事、言おうとしたもん……」
そう言って、手をゆっくり退こうとすると、ぎゅ、と掴んで止められた。
ん?と玲央を見上げると。
「もんって……あーほんと可愛い。どっか空き教室行くか?」
「空き教室……って――っっ皆待ってるしっっ」
うわーん、やっぱり恥ずかしいしー。
発情期の肉食獣って、言い得て妙……。
とか言ったら、ほんとに連れ込まれそうなんだけどー、わーん。
そう思っていたら。
後ろから、聞き覚えのある声がした。
「おーい、玲央ー、こんなとこで何イチャついてんだー?」
玲央がとっても嫌そうに振り返り、オレも玲央の視線を追いかけると。
「あ、智也と西野く」
「稔、ね?」
智也は苦笑いしてオレを見てて。
西野君がオレの言葉を遮って、そう言った。
「稔、でいいの……?」
「良いよ」
「じゃあ、……稔にするね?」
オレがそう言うと、西野君改め、稔は。
すごく嬉しそうに笑った。
「もーほんとに、玲央は優月が可愛いのな? こんなに迫られてて疲れない? 優月」
「え。疲れないよ?」
恥ずかしいけど……。そうは思いながらも即答すると、玲央がオレの首にぐい、と手をかけて、自分に引き寄せた。
「優月が疲れる訳ねーだろ」
べ、と舌を出してる玲央。
――玲央って、いつもだけど勇紀と稔と話してると、なんかちょっと幼くなる時があって。やっぱり可愛い。
さっきまであんなに、「発情期の」、とか、すごいあやしい感じでドキドキさせられてたのに。
オレに引っ付いてる玲央を見上げて、ふふ、と笑ってしまう。
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