410 / 830

第416話◇

 笑ってしまっていたら、「ん?」と見下ろされて、ううん、と首を振る。  肩はすぐ離されて、部室行くか、と玲央が言う。 「村澤も来れたんだな」  歩き出しながら、玲央が智也に言うと、智也は苦笑いを浮かべた。 「オレ、ほんとは今日買い物に行きたかったんだけどさー、西野……じゃなく、稔がどーしても来てって」  あ、智也も稔って呼ばされてる。  面白いなあ、とクスクス笑いながら。 「だって智也には、優月の昔の事聞きたいし」  稔って、智也の事ももう普通に呼んでる。智也は呼び直してる位なのに。  なんかすごいなあ~、稔の方には、全く違和感ない。  なんて、感心しながら、話を聞いていたら。    ん? 今、オレの昔の事って言った?  オレが稔と智也の方に顔を向けると、智也はオレと視線を合わせて、苦笑い。 「そう言うんだけど……別に、優月の昔の話って、なんかあるかな??」 「……さあ??」 「優月の事全部話したって、何も困る事ないよなあ?」 「うん……どうだろ……??」  智也の言葉に首を傾げてると、稔は、クスクス笑って。 「玲央は、昔の話されたら、困る事しか無いだろ」  面白そうに笑ってそう言う稔に、玲央はジロ、と軽く睨む。  でも稔はいっこうにめげずに。 「ほんとなんか、色々正反対って感じだな、お前ら。一緒に居て、合うの?」  笑いながらそう聞いて。返事は待たずに、部室の建物への階段を駆け足で上る。 「今日いっぱい観察させてもらおーっと。ほら、早く玲央たちの部室行くんだろ、いこーぜ」  ご機嫌で言うと、稔はさっさと建物に入って行った。  観察……。  思って固まってると。  玲央が嫌そうに。 「優月、やっぱりやめとく? かえろっか?」  そう言ったけど。「早く来ーい!!」と稔の呼ぶ声がして。  はー、とため息をついて歩き出す玲央の後ろで、智也と苦笑いで顔を見合わせた。   「智也、バンドの人達も知らないよね? なんかオレの事で買い物行けなくてごめんね?」 「いや、ていうかそれ言うなら、優月じゃなくて、稔だから」  クスクス笑って智也がオレを見る。 「まあそうかもだけど、間接的に……?」 「いーよ、オレも、優月が神月の仲間と、どんな感じなのかも、ちょっと見たかったし」 「あ、心配?」 「心配とかはしてないし、優月大丈夫なんだろうけどさ。バンドのメンバー見た事あるけど、結構派手だし? どーやって仲良くしてんだろうとは思った」 「あは。 確かに、派手だね、皆」 「うん。まあ、稔と神月しか知らないけど、まあ優月居るし、別にいいかなと思って、今日はこっち来た」 「智也、誰とでも話せるもんね」 「――――……」  そう言うと、智也は、ちょっと止まってオレを見た。 「それ、優月に言われると、笑う」 「ん??」 「優月より色んな奴と話せる奴見た事ないけど」 「……そう?」 「……まあ、いいけど。ほら、神月、待ってるよ」 「あ、うん」  クスクス笑われて。  前で立ち止まってる玲央の所に急いだ。  「優月の話は聞きたいけど、優月は聞かなくていいからな」  玲央がすっごく嫌そうにそう言ったのを聞いて、少し後ろで智也がクッと笑い出す。 「何聞いても、何も変わんないよ」  オレも笑ってしまいながら、そう答えた。  

ともだちにシェアしよう!