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第417話◇

 部室に行くともう全員揃っていたので、すぐに皆で駅の近くのカラオケに向かう事になった。  部室を出たまま、智也と並んで歩き始めると、勇紀がオレの隣に並んできた。オレを挟んで、智也をちょっと覗き込む。 「こないだ食堂でしゃべったよね」 「ああ。優月が助けたって話してたよな?」  あは、と勇紀が笑って、智也を見る。 「そうそう。これからよろしくー。絶対今後も、オレらも絡むと思うから」  勇紀が楽しそうに智也に話しかける。  智也はオレを見て、ふ、と微笑んで。 「そうっぽいな。オレ、村澤智也だよ」 「智也でいい?」 「ん」 「オレは、和泉勇紀」 「勇紀ね」  オレを挟んで、勇紀と智也が自己紹介してるのを、何だか不思議な気分で聞いてしまう。  玲央の友達とオレの友達。  ――――……美咲もいつか、玲央と話したりするようになってくれるのかなあ。きっと、オレがずっと玲央と仲良かったら、ちゃんと認めてくれるかも。    皆が皆と色んなとこで繋がって、ずっと楽しかったら、  ほんと、いいなあ。 「智也と優月はいつから友達なの?」 「幼稚園から一緒。こないだ食堂でオレが居たあの女の子。分かる?」 「どの子?」 「勇紀に、神月玲央は恋人居ないのかって、聞いてた女の子」 「ああ、覚えてる。綺麗な子だよね?」 「美咲っていうんだけど、優月と美咲と3人、母親同士が仲良かったから。よく遊んでたんだ」 「なるほどね。あー、オレ達は、付属の幼稚園から一緒。まあずっと同じクラスじゃないから、中学でバンド始めてから余計仲良くなった感じ。稔はバンド一緒じゃないけど、あんな感じで玲央にもすげー絡むから」  クスクス笑う勇紀。  ずっと稔はそうなんだなーと思うと、なんか玲央のあの対応も余計面白いけど。 「あ、優月とオレ達は高校は一緒じゃないよ。たまたま、大学一緒だったんだよな、優月」 「うん」 「あ、じゃあ、一緒に受けた訳じゃないんだ?」  勇紀の言葉にクスクス笑って智也が「まさか」と笑う。 「3人ともいくつか受けて、受かった中から、皆がたまたまここに決めたんだよ」  そう答えてから、智也が、な?と、オレを見る。 「うん、そう。すごいよね」  そう答えると、勇紀が「縁があるんだろうね」と笑う。 「あーでも、あんまり仲いいと、玲央が妬きそうー」  オレと智也を見ながら、クスクス笑う勇紀。 「え、玲央、そんなの妬かないよね?」  そんな馬鹿なと思いながら、勇紀と智也を見ると。 「さあ……どうだろな?」  と智也が笑う。 「絶対妬くって。智也は、玲央と喋んの?」 「優月の事で初めて個人的に話した」 「じゃあ、あんまり知らないじゃん。優月、気を付けた方がいいよ」 「ええー……だって、智也だよ?」 「智也だよ?とか言っちゃうのが余計アブナイなあ」  そんな馬鹿な、とクスクス笑った時。  前を歩いてた玲央がふとこっちを振り返る。 「――――……」  オレと目が合うと、ふ、と笑んで、また前を向く。稔と颯也に玲央は挟まれてるのだけど。  玲央を一緒に見てた、両脇の2人が。 「今のってさー、どういう笑い? 優月楽しそうでいいなってこと?」 「ちゃんとついてきてるな、て笑ったのかな。ていうか当たり前だけどな」 「それとも、お前そんな2人に挟まれてないでこっちにこいよ、て思いながらも、言ったらかっこ悪いからニッコリしたとか?」  勇紀と智也が、オレを挟んで、あれこれ言ってるけど。  ほんと何言ってるんだろうと苦笑い。 「玲央、ただ目が合ったから笑ってくれただけだよ」  そう言うと、2人は、ふー、と笑って。 「絶対違うと思うけど」  と言う。ていうか、智也まで、なぜ……。   「あーいう、今まで執着してこなかった奴が、執着しだすと、ほんとすごいと思うんだけどなー、オレ」 「オレも、神月はそうだと思う。全然関係ない奴にも、優月に触んなって言いそう」 「…………」  ――――……それは言いそう……? とちらっと、2人に流れそうになって。 いや、言わないと思う、と踏みとどまる。  ……まあ。  言ってくれるのも、嬉しいから、全然問題ないんだけど。   「でも、玲央がクールだった頃は、玲央の事こんな風に思う日が来るなんて思わなかったから、もう日々面白くて、優月に感謝」  勇紀の楽しそうなセリフと笑顔に、もう、ほんと、笑ってしまう。

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