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第419話◇

 カラオケは一切使わず、皆騒ぐのみ。  騒ぐって言っても、玲央と甲斐と颯也は別に大声を出す訳じゃないんだけど。なんか、すごーく、騒がしい感じで、時間は過ぎていく。  カラオケ来て歌わないの初めて。  ――――……あ。玲央、後で歌ってくれないかなあ……聞きたいなあ。  ふと思いついて、玲央を見ると、「ん?」と見つめられる。 「玲央、後で歌ってくれる? 1曲でもいいから」 「聞きたい?」 「うん」  聞かれて頷くと、玲央はいいよ、と笑った。 「何が聞きたい?」 「玲央が好きな歌がいい」  そう答えたら、玲央は微笑んで頷いた。 「考えとく」 「うん」  嬉しくなって微笑んでると。 「優月、これうまいよー」  勇紀に呼ばれて、ぱく、と口に入れられる。 「何これ。あ、エビ?」 「エビのフリッターだって」 「ん、美味しいー。玲央も食べる?」 「ん」  勇紀の持ってる皿から1つ取って、玲央の口に入れてあげる。 「美味しい?」 「ん」  ふ、と笑う玲央に、稔から、不意にオシボリが飛んできた。 「は?」  一気に不機嫌モードな玲央が稔を睨むと。 「お前、あーんとかするキャラかー!」  まわりの皆がドッと笑う。  オシボリを、ぽい、と稔に投げ返してから。玲央は、オレ越しに手を伸ばして、勇紀の皿からエビを取って。 「優月、もいっこ」 「ん」  もぐ。玲央の手からエビを食べさせてもらうと。  玲央は、ふ、と微笑んで。 「優月限定で、するンだよ。 黙ってろ」  と稔に言い放つ。  ……うわー。何だろう。この感じ。……カッコいいなあ。 「うっわー、信じらんない。つか、優月、魔法使いか!」 「え、何それ……」 「あの玲央を、こんな感じにするとか……もう、夢か幻か……」  そんな稔の言葉に、まわりが可笑しそう。  稔の言葉に、甲斐も。 「つか、2週間位前まで、玲央がこんなんなるとか、思いもしなかったもんな」  そう言い出して、稔と一緒に笑い合ってる。 「でも、オレはもう慣れて全然驚かなくなってきた」  颯也が笑いながら言うと、甲斐も、オレも慣れたけど、と苦笑い。 「でもよく考えたら、あの玲央だぞ? やっぱ、稔の言ってる事も分かる」 「はは。まーな」  そんな風に甲斐と颯也の話が終わった所で、智也が面白そうに。 「そんなに、玲央は――――…… 甘々じゃなかったのか?」  そんな智也の質問に。  一気に皆が笑い出して。 「甘々の『あ』もないよね」  勇紀が笑って。 「無い無い。すっげークール」  甲斐と颯也も笑う。 「なのにモテるとか、ほんと意味わかんねーってオレは思ってたけどね」  クスクス稔が笑う。  皆が笑ってるけど。  ――――……玲央は、はー、とため息をついて、オレを見つめる。 「オレ、クール?」  聞かれて玲央を見つめ返していると。  何か面白そうな顔で、皆がオレを見ているのが分かって。  ちょっと笑ってしまいながら、ううん、と首を振った。 「玲央は、優しいよ」    言うと、くしゃくしゃと頭を撫でられる。また周りは、やれやれみたいな顔してるけど。  ――――……なんか皆、暖かくて。  オレ達って、男同士なんだし、普通は、こんな風じゃないんじゃないかなーと思うのに。  こんな風に受け入れてくれる皆、大好きだなあと思いながら。  隣の玲央が、呆れたように笑いながら、皆に言い返してるのを、見つめた。   

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