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第426話◇
「んー。悪さかぁ……」
「……そういえば、なんか優月、浮気も許しそうな事さっき言ってたろ。嫌じゃないの?」
「許すっていうのとは、ちょっと違うかなあ。……玲央がオレと居たいって思ってくれてる内はしないと思うから」
「ん」
「浮気するって事は、オレが、玲央にそう思われてないっていうか……玲央がオレより、その人と居たいって思っちゃったというか……だからもう、それは、オレが許すとかそういう問題じゃないような……」
「じゃあさ――――……ちょっと魔が差しただけだから許してって言われたらどーすんの?」
「なんでそんな突っ込むの?」
困ってそう言うと、智也がごめん、と笑った。
「なんかさ、優月と浮気とかについて話す日がくると思わなかったから。ちょっと聞きたくなっただけ。嫌なら考えなくていーよ」
クスクス笑う智也に、んー、と少し考える。
「――――……人間だからさー。あると思うんだけど……」
「……」
「……オレがその時、玲央をどれくらい好きか、かな」
「なんか優月は許しそうだな」
智也が苦笑するけど、オレは、どうだろ、と笑って見せる。
「分かんないな。……許せないかもしれないし。……こんな風に好きになるのが初めてだからさ。毎日、色んな感情があって。まだまだよく分かんないんだよね……」
「そっか」
「うん。楽しいけど――――……なんか、不思議だし」
「ふーん。まあオレも。優月がまさか、ああいう感じの奴と恋愛するとか……かけらも思わなかったから。すげー不思議だけど」
「……オレだって、かけらも思わなかったよ」
「まあ。そうだよな」
2人で顔を見合わせて笑いながら、何か反対側でめっちゃ騒いでる他の皆をふと見つめる。智也も同じように皆を見てから、ふ、と笑ってオレに視線を戻した。
「ここついてきて、あのメンバーと優月が一緒に居るのは、不思議じゃなくなった」
「あ、ほんと?」
「うん。優月と玲央が付き合う事、誰も反対してないんだって事も分かったし。来て良かった」
「反対?」
「うん。ほら。バンドやってるだろ? セフレくらいで遊んでるなら良いけど、がっつり恋人とかだとさ。反対されたりしないかのなーってちょっと、いらない心配も少ししてたからさ」
「あー……なるほど。そうだよね……そういえば、なんか最初から誰も、反対されてないような……何でだろう??」
「オレが思うに……」
「うん。何?」
「まあ優月が相手だから、ってのは前提としておいて」
「うんうん」
智也は面白そうに笑いながら。
オレの耳に、こそこそと口を寄せて。
「今までのあいつがひどすぎて、それに比べたら、って感じなのかも」
「――――……」
うわー、なんか智也言っちゃってるし。ってだから、内緒話か。
苦笑いが浮かぶけど。確かに、皆からすると、ちょっぴりそんな理由もあるのかな…と思わなくもないような……?
いやいや、でもこんなのは、玲央には内緒。と思って。人差し指を立てて、「しー」と言ってから。でも、ちょっと笑ってしまったその時。
反対側の玲央が立ち上がったのに気づいて、玲央の方に視線を向けると。
じっとオレを見てから、ドアの方を指さす。
「優月、外いこ」
「え?」
聞き返すと、玲央は、ふ、と笑んで。
「少しだけ」
と言った。分かった、とすぐ頷いて。
「行ってくるねー」
智也に言って、立ち上がる。
ひらひら手を振ってる智也の横に、勇紀がめちゃくちゃ笑顔で 座るのを見ながら。バイバイと手を振って。
オレは玲央の後について、部屋を出た。
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